睡眠相前進症候群ASPS


DSPSが若年者に多いのと対照的なのが、高齢者に多くみられる睡眠相前進症候群Advanced sleep phase syndrome;ASPSです。
 

1.症状と診断

 ASPSは、DSPSとは対照的に、睡眠時間帯が望ましい時間帯に対し極端に前進しているもので、耐え難い夕方の眠気早い時刻からの入眠、望ましい時間より早い覚醒(目覚め)という症状を呈します。

 ASPSの多くの例では、入眠時刻は午後6時から8時までの間であり、覚醒時刻は午前1時から3時までの間である。基本的には日中の学業や仕事には障害はないが、夜間の活動は短縮される。

 有病率、性による差などは不明であるが、DSPSに比較すればまれな疾患と考えられています。DSPSが若年者に多いのと対照的に、ASPSは高齢者に多くみられるといわれます。



 次に、睡眠障害国際分類(ICSD)によるASPSの診断基準を示しますが、ASPSの発生頻度はきわめて低いものと考えられています。ASPSの診断にも、睡眠日誌や睡眠ポリグラム検査あるいは体温リズムの測定は有用であるとされています。

1990年に発表された睡眠障害国際分類International classification of sleep disorders;ICSD)によるASPSの診断基準は次の通りです。
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         【睡眠相前進症候群ASPS)の診断基準】

A.望ましい時刻まで覚醒していることができないか、または眠り続けることができない。

.睡眠時間帯が望ましい時刻からみて前進している。

.症状が少なくとも3ヶ月は続く。

.望ましい時刻まで覚醒することを要求されないときには、患者は以下のようである。
 .入眠が望ましい時刻よりも早いときは,習慣的な睡眠の質と持続時間は正常である。
 .望ましい時刻よりも早く自発的に覚醒する。
 .睡眠時間帯は前進した状態で24時間周期を保っている。

.24-36時間の睡眠ポリグラフ記録により習慣的な睡眠時間の前進が認められること。

.睡眠持続困難や過剰な眠気を生じるような他の睡眠障害の診断基準に該当しないこと。

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                 最小限診断基準:A+C+E



2.病 理(病態生理)

 DSPSとは逆の体内時計機構の障害が考えられています。すなわち、DSPSで位相反応曲線の前進反応部分が狭いとの仮説が成立するとすれば、ASPSでは反対に位相反応曲線後退反応部分に異常があるため、睡眠リズムの位相を遅らせることができなくなっている可能性があるわけです。

 もうひとつの可能性として、ASPSは高齢者で起こりやすいことから、その発現に加齢による体内時計の変化が関与していることも考えられるとされます。このことは年齢とともに体内時計の内因性周期が短縮するとの報告や高齢者では深部体温リズムが若年者に比べ前進しているとの報告からも支持されているようです。



3.対 策

 ASPSの治療としては、入眠時間を一日に3時間ずつ早めていく時間療法夜間の高照度光療法抗うつ薬の投与などが、前進した睡眠相を動かし、望ましい睡眠時間帯に動かすのに有効であったとの報告があります。

      

 ASPSDSPSと共に、その治療法についてはまだ確立されてはいません。しかし、時間生物学的治療により改善する症例も少なくないことから、こうした概日リズム睡眠障害の根底に何らかの体内時計機構の障害があるということは、もはや間違いないと考えられています。今後さらに、時間生物学的な検討や分子生物学的な研究が専門家の手によって積み重ねられていくことにより、これらの疾患の病態解明と治療法の発展が大いに期待されます。


@睡眠相後退症候群               
【実例1】 ← Click Here
  
睡眠相が遅れた状態で慢性的に固定された状態。睡眠は十分に取れているが、定刻に出勤・登校できない。思春期から青年期に発症することが多く、夏休みなどの長い休暇中の昼夜逆転生活、受験勉強などが誘因となります。

A非24時間睡眠・覚醒症候群          
【実例2】 ← Click Here
  
睡眠相が約25時間の周期で毎日約1時間ずつ後退します。睡眠相が定まらないだけに、社会的な不適応が深刻な状態になってしまう場合もあります。

B睡眠相前進症候群               【実例3】 ← Click Here
  
睡眠相が極端に前進した状態です。高齢者に多くみられます。「年寄りは早寝・早起き」といわれる通り、概日リズムの周期が24時間よりも短くなったのが原因と考えられます。
  
<睡眠・覚醒のリズムを整えるために>〜家族の協力〜← Click Here
<冬期うつ病に光療法>〜起床直後の2時間、光を浴びる ← Click Here
<老年期痴呆に光療法> 夜間徘徊に希望の光    ← Click Here
Click Here 参考記事:“睡眠障害治療へ工夫”(京都新聞)
Click Here 参考記事:“睡眠外来の訪問者たち@”「睡眠時無呼吸症候群」(京都新聞)
Click Here 参考記事:“睡眠外来の訪問者たちC”「ナルコレプシー」(京都新聞)
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(5)睡眠相前進
   症候群
ASPS

 睡眠相前進症候群ASPSは、睡眠時間帯が通常より極端に早まって、自分の意志では修正することができません。夕方から強い眠気が出てくるため20時前には眠ってしまい、深夜に目覚めます。通常の時刻まで起きていようと努力しても、夕方からの眠気のために起きていられないのです。

 睡眠相後退症候群DSPSが若い人に多いのに対して、睡眠相前進症候群ASPS高齢者に多くみられます。年をとると次第に早寝早起きになるとよく言われていますが、睡眠相前進症候群ASPSはこの極端な例と言えるでしょう。睡眠相前進症候群ASPSは高齢者に多いことから、歳を取るにつれて概日リズムを司る機構に変化が見られ、これが大きな原因になっているのではないか、と考えられています。

 睡眠相前進症候群ASPSでは、起床時刻から12時間もすると、深部体温(直腸の体温)が下がり始め、眠くなってきます。早起きによって、早朝に長時間太陽光を浴びて体内時計がリセットされるとさらに、眠くなる時刻を早めることになります。

 この症状に対しては、日の出から8〜9時頃までは日光が目に入らないよう色の濃いサングラスを着用するとともに、夕方から入眠までの時間帯に高照度光療法を受けることで、より確実な効果があります。

 これは、夜に高照度光を浴びることで、体内時計は昼がまだ続いていると判断し、活動に適した状態を延長するため、休息への準備が遅れ、結果的に入眠時刻が適正化されるのです。


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