眠れない・眠りたくない−睡眠障害−に打ち勝とう!
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うつ病あれこれ(2)
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| ■1. なぜストレスによって、心やからだの調子が乱れるのか? |
| ■2. 仮面うつ病とは? |
| ■3. うつ病と「心身症」 |
| ■4. からだの病気が引き金となって発症する「うつ病」 |
■1.
なぜストレスによって、心やからだの調子が乱れるのか?
精神疾患の主な原因のひとつが 「ストレス」 です。 ストレスは、うつ病をはじめとする精神疾患の引き金となるばかりでなく、心と密接なつながりを持つからだにも影響を与えます。 ここでは、ストレスの悪影響がからだの不調となって出現するケース、また、からだの不調に伴って現れる《うつ症状》などについて説明します。 もしあなたが、体調が悪いというだけでは説明できないつらさで悩んでいるなら、これから解説するストレスを基盤とした病気や症候群である可能性があります。 ●1-1.ストレスは何によって引き起こされるのか? 私たちはよく 「ストレス」 という言葉を口にします。 「ノルマがストレスになっちゃって……」 「あの人がいるだけでストレスよね」 等々。 しかし、改めてストレスとは何か? と問われると即座には答えられませんね。 私たちのからだは、体内環境を常に最適な状態に保つために、さまざまな変化を繰り返しています。 例えば、昼と夜、あるいは春夏秋冬の季節ごとに外気温は変動しますが、健康な人の体温はほぼ一定に保たれます。これは、私たちの体内調節中枢が外気温に合わせて体温を調整してくれているからですが、このように、体内環境を常時一定に保持しようとする力を「恒常性(ホメオスタシス)」と呼びます。この恒常性の機能が低下したとき、また恒常性では対応できないような刺激を受けたとき、私たちの心身は不調に陥るのです。 さて、この恒常性をゴムボールにたとえてみましょう。 ゴムボールを手でぎゅっと握ると、ボールはゆがみます。このボール(恒常性)がゆがんでしまった状況が、いわゆる「ストレス」を感じている状態です。 ちなみに、ボールにかかる力を「ストレス」といい、ボールをぎゅっと握った手(ストレスの原因)のことを「ストレッサー」といいます。 「ストレス」という言葉は、もともとは機械工学の用語で「物体のゆがんだ状態」を指すものでした。機械工学で用いられたストレスの概念を、医学の世界に持ち込んだのは、カナダ・モントリオール大学教授で、世界的に有名な生理学者ハンス・セリエです。 セリエは、何らかの有害な因子や刺激によってからだに生じた《ゆがみ》やからだの変調、およびそれらに対する防衛反応や適応反応を「ストレス」と呼びました。さらに、これらの反応を引き起こす、人体にとって有害な環境因子、刺激を「ストレッサー」と表現しました。日本では、「ストレス」という言葉は「ストレッサー」と同義で使われることが多いのですが、正確にいうと、原因=ストレッサーと、状態=ストレス、と分けて考えられるものと覚えておいて下さい。 ○●ストレスの種類 ストレスは、常に悪者というわけではありません。適度なストレスはやる気や活気をもたらします。たとえば、運動もストレスになりますが、適度な運動は爽快感をもたらし、よいストレスになるといえます。 逆にストレスがまったくない状態で過ごすと、汗をかいたり鳥肌が立ったりするなどの体温調節機能の低下を招いたり、暗示にかかりやすくなる、幻覚・妄想を見るようになるなどの変調にみまわれてしまう、という実験報告もあります。 ストレスの原因は、大きく3つに分けられます。 1.物理的・化学的ストレッサー …… 暑さや寒さ、騒音、薬物、栄養不足など 2.生理的ストレッサー ………………過労、病原菌の感染など 3.社会的・心理的ストレッサー …… 人間関係、不安、不満、失望、挫折など この中で、私たちが悩まされるストレスは、主に3.社会的・心理的ストレッサーによるものです。ストレスは多かれ少なかれどんな生物にもあるものですが、次のような理由で、人間はストレスに悩まされるようになったと考えられます。 ○●ストレスは危険に対処するための防衛・適応反応 自然の中で暮らしていた昔、人間は常に天変地異や、野生動物による攻撃などの危険にさらされていました。いつ襲われるか予想もつかない火災、地震、そして猛獣の牙……。人間は進化の過程のなかで、自分たちの生命を脅かすさまざまな危険に遭遇してきました。そして、それらとのかかわりのなかで、自らの中にそうした危険にすみやかに対応できる防衛・適応反応を育むようになったのです。 そして、その危険への防衛・適応反応、いいかえれば人間としての耐性を築く要因となったもの、すなわち「天災」や「猛獣」の牙こそがストレスの原型だといえるのです。 セリエは、自身が唱えた「ストレス学説」のなかで、生物がストレスに対処する反応に3つの段階があることを説明しています。 原則として、人間や動物が肉体的な危険に遭遇すると、まず、闘うか逃げるかのどちらかを選択します。どちらを選ぶにしろ、その準備をするために、からだの中ではまず心拍が速くなり、血圧が上がるという変化が起きます。さらに、筋肉など、その他のからだの部分も、危険にすぐに対処できるような状態をつくります。このような状態が(1)「警告反応期」です。 これらのからだの反応は、闘うにしろ逃げるにしろ、相応な運動をしてストレスがなくなれば元に戻ります。しかし、逆にいえば、危険から身を守りきったと自覚するまで、からだの反応は解消されません。 この「警告反応期」の状態が持続している時期を(2)「抵抗期」といいます。ストレスに対するからだの防衛反応や適応力が安定し、身を守るために最適な状態を保持しているといえます。大昔の人間は、このように危険に応じてストレスがかかると、闘うか逃げるかを即座に実行していたため、ストレスがうまく解消されていたと思われます。 しかし、現代人のストレスは社会的・心理的なものが多く、ストレスに対処しようとからだが準備しても、そのストレスに相応する《運動》で解消することができません。 たとえば、サラリーマンの人が上司からいわれなき叱責を受けても、逃げることも闘うこともできない場合のほうが多いのではないでしょうか? そうなると、からだの緊張がいつまでも解消されない状態が続くことになります。 常に危険に対して身がまえている状態(抵抗期)が続くと、体力やエネルギーを消耗し、精神的にも疲れてきて、心を病む可能性が高まります。これを、第3期の「疲弊期」といいます。あまりに長期間にわたってストレスにさらされ続けると、人間は精神的にも肉体的にも追い詰められ、死に至ることもあるのです。 |
●1-2.ストレスが乱す《からだのバランス》 それでは、ストレスにさらされた体内では、どのようなことが起こっているのでしょうか? 私たちのからだは、内臓などのはたらきを司る「自律神経系」、ホルモン分泌を司る「内分泌系」、外部から侵入する異物からからだを守る「免疫系」という、それぞれ独自のネットワークをもっています。そしてこれらの各ネットワークの働きがバランスよく保たれることで、健康を維持しているのです。 実は、この3つのネットワークのバランスを崩してしまうのが、ストレスなのです。では、ストレスはどういうプロセスでそれらのネットワークに悪影響を及ぼすのか、次にみていきましょう。 ○●無意識に働く自律神経 私たちのからだは、脳から出される指令が神経を通って各臓器・各部位に伝達されることによって、広義の意味での生命活動を維持しています。 こうした、脳からの指令を伝達する神経は、「脳脊髄神経(運動神経)」と「自律神経(植物神経)」の2系統に分類されます。この2つの神経の大きな違いは、自分の意思ではたらきかけることができるか、できないかという点です。 私たちは手を上げる、目を閉じるといった動作は、自分の意思で自由に行えます。このように自分の意思で自在にコントロールできる諸器官にかかわっているのが、脳脊髄神経です。 それに対して、心臓や肝臓などのように、自分の意思ではコントロールできない諸器官を、生命の維持という法則に沿ってはたらかせているのが、自律神経です。自律神経は、からだの内外からの刺激に反応して、内分泌系、循環器系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系、生殖器系などのはたらきを調節しています。 ○●「アクセル」と「ブレーキ」の神経系 自律神経系には、「交感神経系」と「副交感神経系」という2つの系統があります。この2つは車でいえば、「アクセル」と「ブレーキ」のような役割を果たします。 交感神経はアクセル役です。心臓の動きを活発にし、気管支を広げ、動脈の血管を収縮させて狭くすることで血圧を上昇させ、胃腸などの消化器系のはたらきを抑えて、からだを活動的な状態にします。 これに対して、副交感神経はブレーキの役割を果たします。心臓を穏やかに拍動させ、胃腸の動きを活発にして食物を摂取して消化する準備をし、体を休める状態にします。 また別の言い方をすれば、交感神経はエネルギーの消耗をもたらす神経であり、副交感神経はエネルギーの保存をもたらす神経ということになります。 私たちのからだは、相反するはたらきをするこの2つの自律神経が交互にシーソーのようにはたらくことによって、各機能をバランスよく調節されているのです。 ○●2つの自律神経の切り替えを行う「視床下部」 交感神経と副交感神経は、脳の「視床下部」という部分によってコントロールされています。視床下部ではそのほかにも、ホルモンの合成や食欲・性欲などの本能的な欲求を司っています。 視床下部は体外や体内環境の変化について情報をキャッチすると、自律神経やホルモンにはたらきかけて、からだの状態をそれらの変化に適応できるように整えます。たとえば、暑い時には汗が出て、寒い時には鳥肌が立ちますが、これは体温を一定に保つように視床下部が自律神経に命令を出し、その指令に従って2つの自律神経のスイッチが切り替えられるために生じる現象なのです。 ○●感情によっても切り替わる自律神経のスイッチ 自律神経の切り替えは、環境の変化にからだを適応させようとする場合だけでなく、不安や緊張、恐怖、怒り、喜び、悲しみ、愛情といった感情の変化によっても起こります。 緊張や恐怖を覚えた時には心臓がドキドキしたり、血圧が上昇したりします。これは危険を避けたり、状況に応じて素早く行動するために交感神経が優位に働くことで現れる生理現象です。逆に、緊張から解放されている時や休息の時には、副交感神経が優位に働き、からだを弛緩状態に導きます。 ○●視床下部は「体内バランス」の司令塔 以上のように、視床下部は自律神経を通じ、そのときどきの変化に応じた体内環境を整えてくれますが、視床下部は、からだの働きを調整するためにもうひとつ、ホルモンという《実行部隊》を指揮しています。 この「CRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)」というホルモンは、さまざまな刺激(ストレス)に対してからだを守る働きをします。 脳がストレスを感じると、視床下部からCRFが分泌されます。するとCRFは視床下部の下にある「脳下垂体」という部分に作用し、「ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)」というホルモンと、脳の神経細胞間の情報をやりとりするための神経伝達物質のひとつである「ベータ・エンドルフィン」を分泌させます。 さらに、ACTHは、腎臓のすぐ上にある副腎の「副腎皮質」という部分を刺激し、「コルチゾール」というホルモンの分泌を促します。コルチゾールは、食事から摂取した栄養素を分解したり、体内に必要な物質を合成したりする代謝活動や、病原菌など体外から入ってくる異物からからだを守る免疫系を活性化させることで、私たちのからだを守る働きをします。またベータ・エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれるもので、痛みや不安、緊張を和らげます。 このように、視床下部は、自律神経のスイッチを切り替えたり、ホルモン分泌を司る内分泌系や免疫系にも作用しながら、そのときどきで変化する環境やストレスに対してからだを適応させています。 しかし、長期間ストレスにさらされて交感神経ばかりが優位にはたらき、CRFが分泌され続けると、からだのなかでは、同じ生理的な反応が繰り返され続けることになります。つまり、緊張と弛緩、エネルギーの消費と保存など、あたかもシーソーのようにバランスを保つべき作用が一方通行になり、そのアンバランスがうつ病や心身症をはじめとするさまざまな病気を招く原因となってしまうのです。 なお、免疫系については、自律神経系や内分泌系の影響を受けて変調をきたす場合がありますが、逆に、外部のストレスが直接の原因となって免疫機能に影響を及ぼし、自律神経系や内分泌系の働きを狂わせることもあります。 |
///////////用語解説///////////// ■内分泌系: ホルモンを分泌する器官や組織をまとめたいい方。ホルモンの分泌を内分泌といい、ホルモンを分泌する組織は内分泌腺という。代表的なものには、視床下部、脳下垂体、副腎、甲状腺、副甲状腺、性腺(卵巣、精巣)、すい臓、胎盤などがある。 ■循環器系: 血液が体内をめぐることを循環といい、循環にかかわる心臓・動脈・毛細血管・静脈といった器官を循環器、心臓⇒動脈⇒毛細血管⇒静脈⇒心臓⇒肺……というような血液の経路を循環器系という。 ■呼吸器系: 酸素と、体内にできた不要な二酸化炭素のガス交換を行う、呼吸に関係する器官をまとめたいい方。鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺の一連の器官の総称である。 ■消化器系: 飲食物を細かく砕き、化学的に変化させて、からだの組織が吸収できるようにする器官。大きく分けて、口から胃、腸、肛門までの一連の管である消化管と、唾液腺、肝臓、すい臓など、消化管に消化液等の分泌物を出す消化腺がある。 ■泌尿器系: 腎臓、尿管、膀胱、尿道からなる、尿をつくって体外に出す排出する器官の総称。 ■生殖器系: 生物体が子孫をつくるために必要な器官と、それを補助する器官の総称。男性の生殖器はほとんどが外部にあり、女性の生殖器は内部にある。 ■ホルモン: 動物の血液のなかにわずかな量だけ分泌される、有機化学物質(内分泌物)。成長、生殖、代謝、排泄など、からだのいろいろな機能を調節する。人間のホルモンをつくる器官は、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、すい臓、生殖腺、胎盤、小腸、胃、視床下部などがある。 ■脳下垂体: 脳内にある内分泌系の器官で、ここから分泌されるホルモンによって他の内分泌腺の活動をコントロールする。また、成長させるホルモンや水分調整をするホルモンも分泌され、からだの作用を調節する。 //////////////////// |
●2-1.心より、からだの症状が目立つ「うつ病」 うつ病は精神疾患ですが、その症状は精神面だけではなく、からだにも現れる場合があります。気分が落ち込んだり、イライラするといった精神的な症状とともに、頭痛に悩まされたり、胃腸の調子が悪くなったりといったからだの不調は、うつ病になった多くの人が経験しています。 「仮面うつ病」は、以前は身体疾患とされ、精神疾患とは別の扱われ方をされていましたが、最近では、頭痛や胃痛といったからだの症状のほうが目立ち、気分の落ち込みなどの精神的な症状が目立たなくなっているうつ病のことをいうようになっています。精神的な症状が、からだの症状の仮面の下に隠れているため、本人にもまわりにも見過ごされている状態です。 ○●からだの病気と見分けがつきにくい 「仮面うつ病」の人は、精神的な症状の自覚が少ないため、まずは内科をはじめ、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、皮膚科、婦人科など、からだに変調を感じている部分の診療科を受診することが多いようです。ところが検査をしても特に異常が認められないため、他の科の受診を勧められたり、病院を転々とするケースも少なくありません。なかには、医師に「気のせいですよ」などと言われ、放置されてしまう場合もあるようです。 さまざまな診療科を受診しても、「からだの不調の原因がわからない」「薬も効かない」とい人が、精神科や心療内科などの専門医にかかって、初めて「仮面うつ病」と診断されることも多いようです。 からだの不調がずっと続いているのに、検査をしても原因がわからない場合や、症状が時により変化する場合などには、「仮面うつ病」 (心の病気)や「心身症」 (からだの病気)などを疑ってみる必要があります。 |
○●比較的多い全身症状−−−「睡眠障害」 「仮面うつ病」がもたらすからだの症状はさまざまで、人によってその現れ方が違いますが、基本的にはうつ病の身体症状であることに変わりはありません。これらの症状は、大きく《全身の症状》と《部分的な症状》とに分けることができます。 ************************* 《全身の症状》 ・睡眠障害……………不眠・過眠・夢中歩行(夢遊病)・早朝覚醒 など ・全身疲労・倦怠 ……常にだるい・疲労感 など ・食欲不振 ・性欲減退 《部分的な症状》 ・腹痛、吐き気(悪心=おしん)、下痢、便秘、味覚異常 など ・口の渇き、発汗、めまい、目のかすみ、耳鳴り、嚥下困難 など ・頭痛、腰痛、肩こり、背中の痛み、首筋のこり、手足のしびれ、節々の痛み など ・動悸、呼吸困難感、胸痛、胸部の不快感 など ・頻尿、睾丸の痛み、排尿痛 など ************************* 全身症状には、不眠などの「睡眠障害」、常にだるい、疲れているといった「全身疲労・倦怠感」があります。これらは比較的多くの人が感じる症状で、特に睡眠障害は、もっとも多くの人が訴える不調です。 睡眠障害には、眠れなくなってしまう「不眠」、眠りすぎてしまう「過眠」、眠っている間に歩き回ってしまう「夢中歩行(夢遊病)」などの種類がありますが、うつ病には、寝つきが悪くなるなどの不眠症状が頻繁にみられます。特にふだんより2時間以上前に目が覚めてしまい、その後二度寝ができず起床時間を迎えてしまう「早朝覚醒」が多いようです。 疲れやだるさは、睡眠や休息を十分とれば解消するのがふつうですが、うつ病から来る全身疲労・倦怠は、単なる過労ではないので、休養をとっても回復しません。 ○●食欲や性欲などの、生きるための欲求も低下する また、「食欲不振」や「性欲減退」も全身の症状として現れます。食欲がなくなると体重も減るため、「これは消化器系の病気かも……」と検査を受けても、うつ病が原因の場合、これといった異常は発見されません。性欲減退の場合、男性はインポテンツ(勃起不全)、女性は無月経などが症状として現れます。 食欲や性欲は人間が生きるためには必須の本能ですが、生きる意欲が低下すると、こうした根源的な欲求も低下し、さまざまな身体症状として現れてくるのです。 ○●部分的な症状は、局部にはっきりと現れる うつ病の全身症状は、からだの調子がいつもと違う、という「違和感」として現れます。それに対して部分的な症状は、局所的にはっきりと現れます。また部分的症状の多くは、「痛み」を伴って現れますが、当然、痛み止めなどの薬では症状はあまり改善しません。 胃腸はもっとも症状が現れやすい部分で、腹痛、吐き気(悪心=おしん)、下痢、便秘、味覚異常、嚥下困難(えんげこんなん=飲み下しにくいこと)、食道やのどが狭まった感じ、胸やけなどの症状として現れます。 これらの症状が長く続くと、「慢性胃炎」や「過敏性腸症候群」などの診断が下され、うつ病が隠れていることが見過ごされる場合があります。 頭痛を訴える人も多く、《頭が重く、締め付けられるような感覚》などと表現されます。腰痛、肩こり、背中の痛み、首筋のこり、手足のしびれや痛み、からだの節々の痛みなども訴えの多い症状です。 その他、心臓に現れる症状には、動悸、胸部の不快感があります。呼吸器に現れる症状には、胸痛、呼吸困難感がみられます。 また、泌尿器・生殖器の症状には、頻尿、睾丸の痛み、排尿痛があります。 さらに交感神経、副交感神経のバランスが失われることにより、自律神経系症状として、口の渇き、発汗、めまい、目のかすみ、耳鳴りなども現れることがあります。 うつ病であれば、これらのどの症状にも気力や意欲の減退といった精神症状が潜んでいます。からだの病気としての原因が見当たらないようであれば、精神的な症状があるかどうかを詳しく調べて、うつ病としての適切な治療を行うことが大切です。 ///////////用語解説///////////// ■過敏性腸症候群: ストレスなどが原因となって、自律神経系に乱れが生じ、腸の機能が過敏になり便通異常を起こす状態。 下痢、便秘、下痢と便秘を交互に繰り返すこと、腹痛などが症状として現れるほか、膨満感、食欲不振、げっぷなどの腹部の不定愁訴や、頭痛、めまい、動悸、肩こりなどの自律神経失調症状を伴うことも多い。薬物治療だけでなく、生活指導、精神療法などを併用して治療する。 //////////////////// |
●3-1.「心」の不調がもたらす「からだ」の病気 「仮面うつ病」は、からだに症状が出る「心の病気」です。それに対して、これから説明する「心身症」は、心理的なストレスも関与している身体疾患(からだの病気)の総称です。 「心身症」は、アメリカ精神医学会の『DSM-W 精神疾患の診断・統計マニュアル』の分類でいうと、「身体表現性障害」や「臨床的関与の対象となることのある他の状態」に相当します。 「心身症」に限ったことではありませんが、一般的なからだの疾患でも、その底辺には心理的な影響が必ず潜んでいるものです。「心身症」といわれる病気は特に、精神面の影響という観点からも病気を正しく認識する必要があります。 「心身症」がもたらす代表的なからだの病気を表にまとめると、次のようになります。 ■■■■「心身症」がもたらす代表的なからだの病気■■■■ 1.循環器系: 本態性高血圧、冠動脈疾患、レイノー病、不整脈 など 2.呼吸器系: 気管支ぜんそく、過換気症候群、神経性咳そう、しゃっくり など 3.消化器系: 消化性潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、慢性すい炎、慢性肝炎、神経性嘔吐、 食道けいれん など 4.内分泌系: 単純性肥満症、糖尿病、甲状腺機能亢進症、神経性食欲不振症、過食症 など 5.泌尿器系: 夜尿症、インポテンツ、神経性頻尿(過敏性膀胱) など 6.神経系: 片頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症 など 7.骨・筋肉系: 慢性関節リウマチ、全身性筋肉痛、書痙(しょけい)、むち打ち症、チック、 外傷神経症 など 8.皮膚科領域: 神経性皮膚炎、皮膚掻痒症、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多汗症、 慢性じんま疹、湿疹 など 9.耳鼻科領域: メニエール症候群、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、咽喉頭異常感症、 乗り物酔い、心因性さ声、失声、吃音 など 10.眼科領域: 緑内障(原発性)、眼精疲労、眼瞼けいれん など 11.産婦人科領域: 月経困難症、月経前緊張症、無月経、月経異常、機能性子宮出血、不妊症、 更年期障害、不感症 など 12.口腔領域: 顎関節症、口内炎、突発性舌痛症、歯ぎしり、唾液分泌異常、義歯神経症、 咬筋チック など |
///////////用語解説///////////// ■冠動脈疾患: 虚血性心疾患と同じ。心臓の筋肉(心筋)に血液を供給する血管を冠(状)動脈というが、この冠動脈が動脈硬化などによって狭くなり、心筋に必要量の血液を供給できず、現れる症状・疾患。冠動脈の血液不足=酸素不足で胸が痛む症状を【狭心症】、心筋が酸素不足で壊死する疾患を【心筋梗塞】という。 ■レイノー病: 手指の動脈・細動脈にけいれんが起こって血液が流れにくくなり、その結果、手足の指の色が青白く、冷たくなり、知覚異常や疼痛をきたす現象をレイノー現象という。膠原病など、原因がはっきりして起こるものをレイノー症候群といい、原因不明で起こるものをレイノー病という。寒冷刺激や感情的興奮などのきっかけによって、発作的に起こる。レイノー病は比較的若く、虚弱体質の女性に多くみられる。 ■過換気症候群: パニック発作とよく似た原因、症状がみられる。緊張、不安、興奮、恐怖などの心的要因により、発作的に速い呼吸をして、激しい呼吸困難に陥る。発汗、手足のしびれ、ときには失神することもあり、「死ぬのではないか」という強い不安感を伴う。呼吸を速く繰り返しすぎるため、血中の炭酸ガスが減り、上記の症状が現れるので、発作中には袋を口にあてがい、自分の吐いた息を再び吸うことを繰り返すことで対処することもある。 ■神経性咳(がい)そう: 原因不明の、痰(たん)の出ない咳(せき)が出る症状。 ■慢性すい炎: すい臓がつくり出したすい液の消化酵素によって、すい臓自体が消化されて炎症を起こす疾患をすい炎という。慢性すい炎は、長い間この炎症が繰り返し起こるため、すい臓の細胞が破壊されて繊維化し、すい臓が硬くなって機能が低下する。このため、すい液やインシュリンの分泌に異常を来たし、糖尿病や消化吸収障害を起こす原因となる。慢性すい炎の原因は不明だが、アルコールの摂取過多や、胆石症によることが多い。 ■慢性肝炎: 肝細胞の一部が破壊され、肝臓に炎症が起こる疾患を肝炎というが、急性肝炎と慢性肝炎に大別できる。 急性肝炎は、発熱、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛、食欲不振、吐き気などの風邪に似た症状が出て、肝臓がはれて大きくなり、数日後、皮膚等が黄色くなる黄疸が出る。慢性肝炎は、この症状が6ヵ月以上続くものを指す。 原因は主に肝炎ウイルス感染だが、薬剤やアルコールが原因になることもある。現在、慢性肝炎患者の約8割が、血液や唾液、精液、母子感染によるB型と、主に輸血の血液によって感染するC型肝炎ウイルスを持っている。慢性肝炎は急性肝炎に比べ症状が軽いため、気付かないまま進行してがんになる可能性があり、肝がんの9割が、ウイルス性肝炎が原因であることがわかっている。 ■神経性嘔吐: 原因不明の嘔吐を繰り返す症状。 ■食道けいれん: 食道内の筋肉の不規則な収縮により、食物がうまく胃に送られず、飲み下すときの痛みや困難、胸やけ、胸部の痛みや上腹部の痛みがある。原因は不明で、極端に熱いものや、冷たいものを飲み込むことがきっかけとなる。 ■単純性肥満症: 特別な病気がなく、食べすぎて太る肥満症のこと。 ■甲状腺機能亢進症: 代謝と成長をコントロールする甲状腺ホルモンが過剰に産生されて、ホルモンが働きすぎて起こる症状。代謝が活発になるので、食べても体重が減る、脈が速く動悸がする、手の震え、発汗、イライラする、下痢、生理不順、脱毛などの症状が出る。 バセドウ病(グレーブス病)は甲状腺機能亢進症を代表する疾患で、自己の甲状腺に対する抗体が甲状腺を刺激するために甲状腺が腫れて大きくなり、ホルモンの産生、分泌が過剰になるとされている。バセドウ病は上記の症状のほか、眼球が出るのが特徴である。心理社会的要因との関連が深い疾患といわれており、患者数は女性が男性の4倍くらい多く、遺伝的素因が大きく影響すると考えられている。治療は薬物療法、手術療法、放射線療法などの身体的治療でホルモン生産を抑制するが、自律訓練法などの精神療法を取り入れる場合もある。 ■神経性食欲不振症: 拒食症と同じ。摂食障害の説明を参照。 ■夜尿症: 夜、眠っているときに尿をもらすこと。おねしょ。小児夜尿症に同じだが、腎臓、膀胱、尿道などの病的な異常や炎症が原因の場合もある。治療には、薬物療法や精神療法が行われる。 ■神経性頻尿(過敏性膀胱): 水分を摂りすぎる、膀胱炎などの原因がなく、排尿の回数が1日に8〜10回以上と異常に多くなる症状をいう。緊張や恐怖、ストレスなどが引き金となっている。 ■筋緊張性頭痛: ストレスなどの心理的要因によって、顔、頭皮、首の筋肉が収縮するために起こる慢性頭痛。 ■書痙(しょけい): 不安障害の症状のひとつで、文字を書こうとすると、手が震えたり、硬直して書けなくなる状態。 ■チック: 主にまぶた、唇など、顔に生じるけいれん。 ■神経性皮膚炎: アトピー性皮膚炎と同じ意味で、原因が心理的なものであることを強調した名前。 ■皮膚掻痒症: 原発疹が現れていないにもかかわらず、皮膚がかゆい状態。原因は、皮膚の皮脂分泌の減少と水分の保持機能の低下による乾燥、全身性の疾患によるもの、さらに心因性のものなどが考えられている。加齢による乾燥が原因のものは、老人性皮膚掻痒症という。 ■アトピー性皮膚炎: 遺伝的なアレルギー体質の人が、ダニ、ちり(ハウスダスト)、花粉、食物などが刺激となって発症する湿疹。かゆみが強く、赤い湿疹が出る。年齢によって現れる症状が違い、乳児期には顔と頭に多く、湿っており、幼児期から成人はひじやひざの内側に多く現れ、乾燥している。思春期までに治ることが多いが、成人になっても症状が続く人が増えている。ストレスも症状悪化の要因となる。治療には、発疹の原因となるダニなどの物質(アレルゲン)を取り除くための生活指導と、薬物療法が行われる。 ■多汗症: 交感神経の反応が強いため、過度に汗が出る状態。からだ全体の発汗量が多い全身性と、手のひらや足の裏、わきの下に発汗量が多い局所性の2種類に大きく分けられる。手のひらの発汗でペンを持つことができないといった悩みによって、消極的になるなどの精神的なダメージを受けていることが多い。 ■慢性じんま疹: 皮膚が突然かゆくなり、局所的な紅色の発疹が現れ、数時間から数日続いた後に消える皮膚の浮腫(むくみ)をじんま疹という。発疹が数日以内におさまるものを急性じんま疹、1カ月以上出没を繰り返すものを慢性じんま疹という。原因は植物、薬物、花粉やダニなどのアレルゲン(原因物質)によるものと、摩擦や寒冷、日光などの物理的刺激によるものとがある。 ■メニエール症候群(メニエール病): 過労、寝不足、ストレス、アレルギー、自律神経失調などがきっかけとなり発病する。めまいと難聴が主な症状の耳の病気。原因は不明だが、内耳に余分にリンパ液がたまることによって、聴力や平衡感覚に異常をきたすことがわかっている。突然起こる、ぐるぐる回る(回転性)めまいや難聴のほか、耳鳴り、吐き気、嘔吐、冷や汗、脈が速くなるなどの症状を伴う。 ■アレルギー性鼻炎: ダニ、ちり(ハウスダスト)や花粉などのアレルゲン(アレルギーを起こす原因物質)によって起こる、鼻粘膜のアレルギー性疾患。アレルゲンを鼻から吸い込むと、からだが過剰に反応し、くしゃみを連発したり、水性の鼻水が出たり、鼻が詰まるなどの症状が現れる。 発症時期によって、通年性と季節性に分類される。通年性はほぼ1年を通して症状が見られ、ダニとちりがアレルゲンとなっている。季節性は、ある季節にのみ発症し、そのほとんどは花粉によるアレルギー=【花粉症】である。花粉症は通年性に比べ、くしゃみ・鼻汁の症状が強く、目のかゆみや充血、のどのかゆみを併発することが多い。 ■慢性副鼻腔炎(ふくびくうえん): 蓄膿症ともいう。鼻腔の周囲にある空洞を副鼻腔というが、それらのいくつかが慢性的な粘膜の炎症を起こしている状態。慢性的な炎症のため、副鼻腔の粘膜が厚くなり、鼻腔への出口をふさぎ、洞内で分泌される粘膜やうみなどがたまる。また、厚くなった粘膜の一部がブヨブヨとした塊りとなって鼻腔の中に入り鼻腔をふさぐ(鼻茸、ポリープという)こともある。そのため、症状は、鼻が詰まる、臭いがしない、粘り気のある黄色い鼻汁が出る、鼻汁がのどのほうに流れるなどのほかに、頭が重い、集中力がなくなる、といったことも出てくる。 ■咽喉頭異常感症: のどの違和感の症状がごく軽度で、病気などの器質的異常、のどの機能的異常がないにもかかわらず、違和感に意識が集中し、日常生活に支障を来たす状態。更年期障害と関連するものや、過度のストレスなどの心因から来るものがあり、心理的な治療が必要な場合もある。 ■乗り物酔い: 船や飛行機、自動車など の乗り物に乗った時の《揺れ》によって起こる、不快な症状。気分の悪さから、吐き気、冷や汗、めまい、嘔吐、足のふらつき、呼吸が激しくなる、などの症状が現れる。耳の三半規管が ふだんと違い、異常に刺激されたために起こる。 ■心因性さ声: 緊張などの精神的な要因で声がかれる状態。 ■失声(しっせい): 言語能力には何の問題もないのに、声が出なくなること。声帯の疾患や麻痺、咽頭がんの手術などによる機能的な理由によるものと、ストレスやショックなどによる心理的要因によるものとがある。 ■吃音(きつおん): 話すときに、自分の意思に関係なく言葉が詰まったり、同じ音を何度も繰り返したりして、円滑に話すことができない状態。原因ははっきりとわかっていないが 、不安や緊張が状態を温存させたり悪化させることにつながるので、話し方の訓練と同時に精神療法を行うことが多い。 ■緑内障(原発性): 目のなかの圧力(眼圧)が 高くなり、眼球が硬くなって視神経を傷つけ、視野異常や視力低下を起こす疾患。進行すると視野が徐々に狭まり、失明する。眼圧の上がる原因は、眼内でつくられる「房水」という液体が流れ出る「隅角」に何らかの異常が起こって、房水がたまるためと 考えられている。ただし、眼圧が正常な緑内障もある。 緑内障はこの隅角の異常の原因によって、 原発性(原因がはっきりしないもの)、続発性(他の病気に誘発されるもの)、先天性(隅角の先天異常)の3種類に大きく分けられる。 中高年以降から増え、もっとも患者数の多いのが原発性で、さらに開放隅角緑内障(慢性、隅角が詰まって房水が通りにくくなる)と、閉塞隅角緑内障(急性、隅角がふさがり房水が通らなくなる)の2つのタイプに分かれる。 ■眼瞼(がんけん)けいれん: 自分の意思とは関係なく、目を取り囲む筋肉がけいれんし、目のまわりがピクピクしたり、まばたきが多くなるなどの症状が起き、ひどくなると目を開けていられなくなる疾患。原因は不明で、自然に治ることはほとんどない。治療は薬物療法と手術療法があるが、後者は日本ではほとんど行われていない。薬物療法には、抗不安薬や筋弛緩薬などを内服する方法と、ボツリヌス菌を目のまわりに注射し、軽い麻痺を起こさせる方法がある。 ■月経困難症: 月経の直前あるいは開始とともに症状が現れ、月経の終了前あるいは終了と同時に症状が 消える。症状は、下腹部痛、腰痛などの疼痛のほかに、悪心、嘔吐、顔面紅潮などがある。月経困難症は2種類に大別され、骨盤内に病変などの器質的な原因がない「機能性月経困難症」(原発性月経困難症)と、 子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、頸管狭窄などといった、骨盤内に器質的な原因がある「器質的月経困難症」(続発性月経困難症)がある。 ■月経前緊張症: 月経前症候群ともいう。「月経前不快気分障害」(PMDD)の項参照。←Click Here ■機能性子宮出血: 子宮体部に炎症、腫瘍、外傷など の器質的疾患がなく、正常な月経以外に起こる子宮からの不正出血。初経前後や出産後、更年期など、卵巣ホルモンのバランスが不安定な場合に多くみられる。 ■顎(がく)関節症:Temporo Mandibular Disorder あごの関節のはたらきが悪くなるため、口を開けるときに痛みを生じたり、関節がカクカクいったり、口を開けにくくなる疾患。原因 は、かみ合わせの悪さや打撲のほかに、精神的なストレスが影響している場合もある。 ●参考対策商品:TMDセラピーパッド ←Click Here ■突発性舌痛症: 口の中には異常が無いにもかかわらず、突然舌がピリピリと痛む症状。 ■咬筋チック: 下あごの骨を引き上げて、上下の歯をかみ合わせるときに働く咬筋という筋肉が、自分の意思に関係なくピクピク動いてしまう状態。 //////////////////// |
日本心身医学会の診察指針によると、「心身症」とは 『身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する』 と定義されています。 「器質的障害」とは、たとえば、ポリープができてがん細胞に移行しているなど、臓器などの器官が病的に変化している状態のことをいいます。また「機能的障害」とは、小腸が栄養をうまく吸収していないなど、その器官が本来果たすべき機能を果たしていない状態をいいます。 つまり、「心身症」は臓器などの器官の病的変化や機能的な障害がみられるものの、その発症や経緯の原因として、社会的・心理的な問題が強く関与している病気なのです。 同じ下痢が続く症状でも、冷たいものを多く摂取したり、食中毒になったなどの明らかな原因がある人は、心身症とはみなされません。これといった原因がなく、ストレスの多い生活をしている人が患う下痢の続く症状を「過敏性腸症候群」といい、心身症とみなされます。しかしこれは極端な言い方で、身体症状には多かれ少なかれ精神的な問題が関与しています。 ///////////用語解説///////////// ■ポリープ: 体内の粘膜にできる、良性の腫瘍。過形成性ポリープと腺腫性ポリープの2種類がある。過形成性ポリープとは、破壊された粘膜の修復時に、必要以上に細胞分裂が起こりふくらんだものである。自然治癒することが多く、ポリープ自体にはほとんど害はない。腺腫性ポリープは、 粘膜細胞が突然変異してふくらんでしまったもので、がんの発生する確率が高い。 //////////////////// |
●3-2.身近にある心身症の具体例 身体疾患には、肉体的な原因に加えて、何らかのストレスが影響している場合が少なくありません。以下に解説する疾患にかかったり、発病しそうな心配のある人は、からだの治療やケアとともに、ストレスがたまっていないかどうかを点検し、心理的な負担を減らしていくことも大切になります。 ■虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞): 心臓の筋肉(心筋)に血液を供給する冠状動脈が狭くすぼまり(狭窄という)、酸素を送る能力が低下して起こる胸の痛みが「狭心症」です。痛みの強さは人によってさまざまですが、数分後にはおさまり、命の危険に至ることはあまりありません。 また、冠状動脈がふさがり、一部の血流がとだえ、その下流にある心筋が酸素不足になって壊死(えし)する疾患が「心筋梗塞」です。前胸部の締め付けられるような激しい痛みが、30分〜数時間持続したのちおさまりますが、重症者では数時間以内に心停止を起こして死亡することもあります。 どちらも40〜60代の男性に多くみられ、心理的にも身体的にも過度なストレスにさらされている人が起こしやすい疾患です。ストレス以外にも高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙、遺伝的要素などが発症の危険因子とされています。また、「タイプA」あるいは「A型行動パターン」と呼ばれる攻撃的な性格も、危険因子のうちに数えられています。 ///////////用語解説///////////// ■冠状動脈: 大動脈の基部から枝分かれして心臓壁を取り巻いている、心臓の筋肉に血液を供給する動脈。 ■壊死: 組織や細胞が局部的に死滅した状態。 ■高脂血症: 血液中のコレステロールや中性脂肪 、リン脂質などの脂質成分が異常に増加した状態。この状態が長く続くと動脈硬化になり、やがては狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などを起こす危険性が高く、さまざまな生活習慣病の元凶となる。 先天的な異常のために血中の脂質が増加する一時性高脂血症と、糖尿病や甲状腺機能低下症、アルコールの飲みすぎ、肥満などが原因で起こる二次性高脂血症とに大きく分かれるが、二次性の患者の方が圧倒的に多い。 ■肥満: 皮下や筋肉、内臓などの組織に脂肪が過剰にたまった状態。 日本肥満学会では、【身長(m)の2乗×22】の式で求めた理想体重の20%増以上を肥満と定義している。 (例)身長172cmの場合の理想体重 ⇒ 1.72×1.72×22=約 65.0 kg 65kg×1.2=78kg したがって、78kg 以上が肥満とされる。 //////////////////// ■眼精疲労(VDT症候群): 会社でも家庭でもパソコンを扱う機会が増え、近年急増しているのが「VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群」です。長時間、休まずにパソコンなど のディスプレイを見続け、同じ姿勢でいる仕事に就いている人に特に多く発症します。 もっとも多い症状は、涙の分泌が少なく眼球が乾くため、目が痛む「ドライアイ」ですが、こうした身体的ストレスが続くと、眼精疲労から来る腰痛、肩こり、頭痛や首の痛み、さらには「うつ状態」にまでなります。 ●参考対策商品: Moist Heat Pack ←Click Here ■気管支ぜんそく(喘息): 典型的な発作症状としては、夜間に起こり、突然息が苦しくなって、呼吸のたびに《ゼーゼー》という音を立て、切れの悪い乾いたせきやたんが出ます。重症になると、横になっていられなくなり、座らないと呼吸ができなくなるなどの呼吸困難を伴います。 気管支ぜんそくは、気管支が急に狭くなるために起こる、発作性の呼吸障害です。発作の原因は、小児のぜんそくの場合、アレルギーで、ホコリ、動物の毛や羽、カビ、ダニ、花粉、食物、薬などがアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)となります。 大人のアレルギー性ぜんそくは、アトピー型、外因型ともいわれ、アレルゲンを避けようとするからだの抗原・抗体反応(体内にアレルゲンなどの異物が侵入してくるのを防ぐ働き)から生じた作用物質が、気管支をせばめ、発作を起こします。 ■■■■「アレルゲン」が 気管支を刺激するしくみ■■■■ 1.ハウスダストやダニなどのアレルゲン が体内に侵入すると…… ↓ リンパ球の一種のヘルパーT細胞が「インターロイキン4」(さまざまな血液細胞に 生理活性を発現させる物質)をつくり、B細胞を刺激して、「抗体」をつくる号令をかける ↓ B細胞(リンパ球で抗体をつくる細胞)はIgE抗体(アレルゲンを排除するためにつくら れる抗体)を大量につくる ↓ 2.同じアレルゲン がもう一度体内に侵入すると…… ↓ IgE抗体は「肥満細胞」(全身臓器に広く分布し、アレルゲンに対して化学伝達物質を 放出する細胞)の表面に付着し、アレルゲンを待ち構える ↓ アレルゲンに刺激された肥満細胞がヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質を 放出する //////////////////// この場合、自律神経系の関与が大きく、ストレスなどの社会的・心理的作用も影響するようです。 それに対して、アレルギー性でないぜんそくは内因型といい、小児には少なく、呼吸器の感染やストレスによるものが多いのが特徴です。このタイプのぜんそくは、一度発作を起こすと気管支が敏感になり、アレルゲン以外でもさまざまな刺激によって自律神経の変調を来たし、発作が起こりやすくなります。 冷たい空気など、季節の変わり目や急激な気候の変化、無理な運動、職場や家庭でのいざこざ、「将来に悪いことが起こる」と予想してしまう「予期不安」などが、発作の引き金になるようです。 気管支ぜんそくにかかりやすい人は、内向的で、感情を抑え勝ちな傾向があるといわれています。対人関係では無理をしても期待に応えようと努力してしまうことによって、心身の過労を来たし、抵抗力の低下が感染を生じやすくします。アレルギーによるものと、内因型との混合型である患者さんも多くみられます。 ///////////用語解説///////////// ■気管支: 吸い込んだ空気を、気管から肺胞に送る管。気管から2つの気管支に枝分かれし、左右の肺に入ってからさらに細気管支に分かれ、肺胞に至る。気管支ぜんそくは、この気管支が激しく収縮する病気である。 ■アレルギー: 通常は人や動物に無害な外来の物質に対して、過剰な反応が引き起こされる状態。人や動物が、病原となる微生物やその毒素などに接触すると、抗体をつくってこれらの病原物質に再び接しても発病しないように防御する。この抗体をつくらせる病原微生物やその毒素のことを、抗原またはアレルゲンという。 ところが、人(動物)によって、有害な物質と無害な物質を識別する能力を欠くことがあり、1種類あるいは多くの無害な物質に反応して抗体がつくられたり、これらの物質を認識する白血球が反応してしまう。そして再び同じ物質が体内に入ってくると、部位ごとに違う諸症状が出てくる。たとえば、鼻で起これば、くしゃみや鼻水が出て鼻炎を起こしたりする。 ■アトピー型、外因型(ぜんそく): アレルギー性のぜんそくは、アトピー型または外因型といわれる。主な原因 はアレルギーで、ホコリ、動物の毛や羽、カビ、ダニ、花粉、食物、薬などがアレルゲンとなる。 ■内因型(ぜんそく): アレルギーによらないぜんそくは、内因型とよばれる。 //////////////////// |
■女性の男性型脱毛: 社会に進出し、バリバリと働く女性が増えた昨今ですが、依然としてビジネス社会は男性中心であるため、女性は男性以上に頑張り過ぎてしまい、大きなストレスにさらされてしまうことがあります。 男性型脱毛は、 勝気な性格で、連日続く徹夜も辞さないなどの激務をこなしている女性に多くみられます。また、脱毛だけでなく、女性ホルモンの減退によって声が太くなったり、からだが筋肉質になったりと、さまざまな男性的兆候が現れる場合もあります。 このような症状も、ホルモンを司る内分泌系のはたらきがうまく行かなくなることによって引き起こされるものです。 ■慢性疲労症候群: 日常生活ができないほどの激しい疲労が、半年以上続く状態をいいます。風邪の初期症状に似た微熱や疲労感が続くのが特徴です。 過度なストレスと疲労が蓄積して、からだの抵抗力が低下したときに、ある種のウイルスに感染して発病するのではないかとも考えられていますが、原因はわかっていません。 陥りやすい性格傾向としては、真面目で完全主義、仕事を抱え込み、すべてを自分でやらなければ気がすまないという人に多いようです。症状を訴える人は男性よりも女性に多く、20〜30代を中心に幅広くみられます。 ■本態性高血圧症: 高血圧症には、「本態性高血圧症」と「二次性高血圧症」があります。 「二次性高血圧症」とは、腎臓の疾患、妊娠、血管の病気、甲状腺・すい臓などホルモンに関する内分泌系器官の腫瘍……などの病気を素地として起こる高血圧症です。 それに対して「本態性高血圧症」は、原因となる病気がわからないものをいいます。日本では高血圧症のほとんどが本態性で、中高年に多くみられます。自覚症状がないことがほとんどですが、放っておくと、心不全や、腎臓病、脳卒中などにつながります。 血圧を上げるのは交感神経のはたらきですが、緊張しやすい人、周囲の刺激に反応しやすい人は、交感神経が敏感にはたらきます。たとえば、家で測る血圧はほぼ正常なのに、医師の前で測るときだけ血圧が高くなる人がいます。これは「白衣高血圧」といって、診察室の雰囲気や、白衣を着た医師と話をすることで知らず知らずに緊張するために、血圧も上昇してしまうというケースです。 このような人は本質的な意味での高血圧の患者さんではありませんが、ストレスによって血圧が上昇しやすい傾向があるといえます。こうしたタイプの人がストレスの多い環境に長く暮らしていると、高血圧発症の可能性が高くなってしまいます。 さらに、親族に高血圧の人が多いなどの遺伝的な体質や、塩分を多く摂ったり、酒、たばこ、カフェインなどの嗜好品を多くたしなむ食生活など、生活スタイルの要素によっては、高血圧の発症の可能性が高まります。外国の数十年にわたる調査では、試験前に緊張する人はそうでない人よりも高血圧の発症頻度が高い、という報告もあります。 高血圧になりやすい性格には、せっかち、イライラしやすい、忙しいスケジュールを好む、挑戦的、食べるのが早い、といった特徴があるといわれています。このような性格の人は、自分でストレスをつくりやすいといえます。 ///////////用語解説///////////// ■心不全: 心臓や血管の病変により、心臓がからだの必要とする血液を十分に送り出せない状態。 ■腎臓病: 高血圧になると、腎硬化症になりやすい。腎臓の動脈が硬化し、血管が狭くなって腎臓に入る血液が少なくなると、腎臓のはたらきが悪くなり、ろ過器のようなはたらきをする糸球体が縮んでしまう。症状の軽いものでは尿からたんぱくが出る程度だが、悪性腎硬化症になると血圧が上がり、むくみや意識障害が出る。 //////////////////// ■消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍): 潰瘍の部位により、胃潰瘍と十二指腸潰瘍とに分けられます。胃や十二指腸の内壁の粘膜が一部死滅し、ただれやへこみ(潰瘍)ができる病気をいいます。 *********************************************** 【内壁】 1 粘膜 2 粘膜筋板 3 粘膜下層 4 固有筋層 5 しょう膜 【胃潰瘍の重症度】: ・1期……1.粘膜面のみが欠ける。びらんと呼ばれ、まだ潰瘍とはいえない。 ・2期……3.粘膜下層に達した浅い潰瘍 ・3期……4.筋層にまで達した潰瘍 ・4期……4.筋層を貫いた潰瘍。しかし底の部分は繊維組織(しょう膜)に守られている。 ・穿孔性胃潰瘍……潰瘍が胃壁を貫き、腹腔とつながってしまう。急性腹膜炎を起こし ているので、24〜48時間以内に手術をしないと危険。 ・穿通性胃潰瘍……完全に胃壁を貫いた潰瘍底部がすい臓まで達する。 *********************************************** へこみがごく浅い場合は、びらんといいます。 原因はたんぱく分解酵素のペプシン、胃酸、ストレス、アルコール、刺激性の食物、薬剤などですが、最近では、酸性の環境で生息するヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)も原因の一つと考えられています。 このように、消化性潰瘍には多くの原因がありますが、ストレスなどの外的な要因も潰瘍発症の引き金になると考えられています。 それでは、潰瘍発症の原因となるストレスは、からだにどのように影響するのでしょうか。 精神的なストレスによって、脳の交感神経、副交感神経のはたらきがバランスを崩し、副腎皮質ホルモンの分泌が高まると、胃液が異常に分泌されるのです。このとき胃壁は、ストレスのために血液の循環が十分ではなく、弱った状態になっているので、自分の胃液で胃壁を消化してしまうという悪循環に陥り、この悪循環が潰瘍を発症させるのです。 胃や十二指腸は、大きな精神的ショックだけではなく、いつもイライラしていたり、感情の発散ができずにがまんし続けていることによっても発病します。胃潰瘍は40〜60代に、十二指腸潰瘍は20〜40代に多くみられます。 自覚症状の主要なものは、痛みと出血です。食後か空腹時に、みぞおちのあたりに痛みを感じることが多いようです。胃潰瘍では吐血と、便に血の混じる下血の両方がみられ、十二指腸潰瘍では下血がほとんどです。その他の自覚症状として、胃酸の刺激による胸やけ、げっぷがあります。 治療法は、ピロリ菌の除菌や薬物療法(H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬および粘膜保護薬など)が基本です。 それらに加え、ストレスなど潰瘍を悪化させる要因がある場合には、カウンセリングなど、精神的側面からの治療も行います。また、自律訓練法などで、心身のリラクゼーションを目的とする治療を行うこともあり、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬も用います。症状がひどい場合には、手術も行います。 ★★★これまでみてきたように、からだに原因があるとばかり思っていた病気も、心理的ストレスが影響していることも少なくありません。また、心身症と同じように精神的な要因でからだの異常が現れる場合でも、からだに病的な変化(器質的変化)が現れずに痛みや諸困難を感じる場合は「身体表現性障害」が疑われます。 ///////////用語解説///////////// ■たんぱく分解酵素: 飲食で体内に取り入れられたたんぱく質を、組織が吸収できるように分解するための化学反応の触媒となる消化酵素。巨大分子のたんぱく質でできている。消化酵素は、分解を担当する栄養素により、たんぱく質分解酵素、炭水化物分解酵素、脂肪分解酵素、核酸分解酵素に分けられる。 ■ペプシン: 消化にかかわる酵素のひとつ。胃液中に分泌されている。 ■胃酸: 胃液に含まれる酸。塩酸が主な成分である。 ■ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌): 人間の胃粘膜の表層で、強い酸性の胃酸中に存在する菌。胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍にかかっている患者は、この菌の感染率が高いことから、発症や再発に関与していると考えられている。 ■H2ブロッカー: H2受容体拮抗剤ともいう。胃腺をふさぎ、胃酸を出す刺激を胃壁に与えるヒスタミンという物質が胃腺を刺激できないようにし、胃酸の分泌を止める。胃酸過多によって胃の障害を患っている人、消化性潰瘍に向く薬。 ■プロトンポンプ阻害薬: 胃壁細胞を刺激し、胃酸分泌を促す化学伝達物質の経路には3つあるが、その3つのルートの最終過程のプロトンポンプ酵素のはたらきのみを抑える薬剤。H2ブロッカー以上の胃酸抑制効果がある。 ■粘膜保護薬: 胃粘膜に付着して、粘膜を保護する薬。 ■自律訓練法: うつ病の心理的療法のなかでも、比較的多く用いられる方法の一つ。これは患者さんが自分自身に暗示(自己催眠)をかけることで、からだをリラックスさせ、そのリラックス効果によって、心の緊張をときほぐすという治療法です。 //////////////////// ■■■■「ストレス」が関係する各年代別の身体疾患■■■■ 1.学童期・思春期に多い心身症: チック 心悸亢進 起立性調節障害 神経性食欲不振 過敏性腸症候群 消化性潰瘍 過換気症候群 愛情遮断性小人症 頭痛 円形脱毛症 頻脈 睡眠障害 発熱 2.成年期・中年期の代表的心身症: 本態性高血圧症 メニエール症候群 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 片頭痛 過敏性腸症候群 インポテンツ 糖尿病 慢性関節リウマチ 単純性肥満 狭心症 筋緊張性頭痛 3.老人病のうちの心身症的色彩の濃い病気: (神経系) 脳出血、 脳梗塞、 脳動脈硬化症、 パーキンソン病、 自律神経失調症 (循環器系) 高血圧症、 狭心症、 心筋梗塞、 心不全、 不整脈、 低血圧症 (消化器系) 消化性潰瘍、 過敏性腸症候群 (呼吸器系) 慢性肺気腫、 慢性気管支炎、 気管支ぜんそく (尿路系) 前立腺肥大、 過敏性膀胱 (代謝系) 糖尿病、 肥満、 栄養失調 (運動器系) 筋痛症、 慢性関節リウマチ (内分泌系) 甲状腺機能亢進症、 甲状腺機能低下症 (眼・皮膚科系)緑内障、 皮膚掻痒症 (その他) 性的障害 |
●4-1.からだの病気とうつ病は、相乗効果で悪化する ここまでは、ストレスが発症に関与する身体症状についてみてきました。しかし、逆にからだの病気、たとえば、がん、狭心症や糖尿病などがストレスになることもあります。 からだの病気にかかると、当然ながら病気の《苦痛や不安》を感じてうつ状態になってきます。 からだの病気にかかっている人がうつ病に陥ると、服薬やリハビリテーションといった一貫した治療がきちんとできなくなり、症状を悪化させることになったり、回復が遅れるなど、さまざまな弊害が出てきます。逆に、うつ病にかかっていたのが、さらにからだの病気を患うことにより、うつ病が悪化することもあります。 ■■■■「うつ病」の原因となる可能性の高い主な身体疾患■■■■ ・神経変性疾患 …… パーキンソン病、ハンチントン病 など ・脳血管疾患 …… 脳卒中 ・代謝疾患 …… ビタミンB12欠乏症 など ・内分泌疾患 …… 甲状腺機能亢進症または低下症、 副甲状腺機能亢進症または低下症、 副腎皮質個脳亢進症または低下症 など ・自己免疫疾患 …… 全身性エリテマトーデス など ・ウイルス性または他の感染症 …… 肝炎、単球増加症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV) など ・ある種のがん …… すい臓がん など ///////////用語解説///////////// ■リハビリテーション: 身体的、精神的、社会的な特定のハンディキャップを持った人々に対して行われる、計画化された運動、相談、指導を意味する。リハビリテーションの対象者は、回復期にある患者や、身体各部位に障害を持つ人のほか、麻痺患者、精神疾患のある人、アルコール依存症患者、犯罪者など である。 //////////////////// |
○●では、うつ病との併発という観点から、いっそう気をつけたいからだの病気のいくつかについて解説します。以下の病気の早期治癒には、からだの病気だけでなく、うつ病も積極的に治療することが重要になります。 ■「更年期障害」---再発しやすい《うつ》 更年期とは、女性が中年期から老年期へ移行する時期をいい、具体的には閉経期前後の40代半ば〜50代半ばくらいの時期をいいます。 更年期になると、卵巣の老化に伴い、卵巣ホルモン(エストロゲン)をはじめとする女性ホルモンの分泌が減少することによって自律神経系の働きが乱れ、さまざまな症状が出てきます。症状は、肩こりや関節痛、ほてり、動悸、皮膚のかゆみなど、十人十色ですね。この時期に多く見られるさまざまな不定愁訴を「更年期障害」といいます。 この時期は人生の転機を迎えることが多く、子どもの成長や近親者の死といった家庭環境の変化、夫婦間のトラブル、体力の減退、老後に対する不安などから来るストレスや悩みも多いものです。このような心理的背景が更年期障害の誘因となることも多く、うつ病を併発することも少なくありません。あるいは、更年期障害だと思っていた症状が、実は抑うつから来る《からだの信号》だった、ということもあります。 更年期障害の症状を訴える人で、特にうつ病が疑われるのは、次のような精神状態が見られる場合です。 ■■■■「更年期障害」でうつ病が疑われる心理状態■■■■ ・焦燥感がある ……………… 気持ちが落ち着かず、じっとしていられない ・感情の抑制がききにくい …… 気分の落ち込みを人に訴えたがる ・身体症状が目立つ ………… 頭痛・頭重、めまい、倦怠・疲労感、 食欲不振、動悸、頻尿、吐き気、不眠 など ・強い不安やイライラがある … イライラが爆発しやすくなることがある ・妄想がある ………………… 被害妄想、罪悪感、その他さまざまな妄想に 苦しめられる 過去にうつ病にかかったことがある人は、更年期にうつ病を再発する可能性が高まるので、注意する必要があります。 ■「心筋梗塞」-----《うつ》が引き金に 「心身症」の項で■虚血性心疾患としてストレスとの関係で説明した「心筋梗塞」ですが、最近の研究では、心筋梗塞の患者さんのうちの20%近くが、治療を必要とするうつ病にかかっていることが判明しています。 さらに最近の研究では、うつ状態が心臓血管系疾患、特に心筋梗塞の発症に深く関わっていることが分かってきました。うつ病にかかると、それが5年後、10年後に狭心症や心筋梗塞などの引き金になりやすいという研究結果も報告されています。 うつ状態になると、交感神経の緊張が高まり、心拍数や血圧が上昇し、不整脈や心筋梗塞が起こりやすくなります。この傾向は、特に男性にはっきりと見られます。 心筋梗塞を患っている人がうつ病になると、精神的な苦痛が増えるのは当然のことですが、心筋梗塞自体の治療にも大きな影響が出てきます。生死にかかわる病気ですので、この病気を治すために仕事や生活など、患者さんの生活全体を病気に立ち向かえるように変えていくことが必要とされますが、うつ病にかかっていると、それらに対して適切な判断が下せず、生活の立て直しが難しくなります。 気分の落ち込みが激しいと、医師から説明された治療法をしっかりと守っていくことができにくくなりますので、うつ病の治療をきちんと行うことが大切です。 ///////////用語解説///////////// ■心臓血管系疾患: 動脈硬化や狭心症、心筋梗塞など。 ■不整脈: 心臓の拍動が異常に速くなったり遅くなったりして、乱れること。 //////////////////// ■「糖尿病」-------うつ病になる割合は2倍 最近のアメリカの研究によると、成人の糖尿病患者さんのうち15〜20%の人がうつ病にかかっていると報告されています。これは一般の人がうつ病になる割合の2倍以上だといわれています。糖尿病の患者さんにうつ病が多いのは、闘病の苦しみからだけではなく、この病気に共通する生物学的な原因があるのではないかとも考えられています。 糖尿病とは、すい臓で分泌されるインシュリンというホルモンが不足したり、十分に作用しないために、食事によって体内に入った糖が血液や尿に大量に混ざり、細胞にうまく摂取されずに起こる病気です。 糖尿病の治療は、血液中に溶け込んだ糖(血糖)を体内でコントロールできるようにすることを 目的として行われますが、うつ病にかかると治療がうまくいかないことがあるため、心筋梗塞や腎不全、失明など、さまざまな合併症が起こりやすくなります。また日常生活にも支障が出て、生活習慣病である糖尿病自体の改善にも支障が起こります。 うつ病をもつ糖尿病の患者さんに「抗うつ薬」などのうつ病の治療を行うと、血糖のコントロールが改善し、合併症の発症も減少します。ですから、糖尿病にかかっている人は、うつ病にもかかっていないかどうかを調べることも重要です。 ■「がん」とうつ病----警告うつ病 がんの患者さんのなかにも、抑うつ状態に陥っているだけでなく、明らかにうつ病と診断される人がいます。 患者さんの20〜25%が慢性のうつ病に、また末期がんになると、23〜58%の人がうつ病を患っているという報告があります。 がんの患者さんで、経過が思わしくない人、再発を繰り返している人、転移が起きている人、痛みが激しい人などは、特に抑うつ的になる可能性が高くなります。がんが原因の高カルシウム血症などの代謝の障害も、うつ病の原因となります。 がんの患者さんに現れるうつ病の症状は、睡眠障害、興味の喪失、不安やイライラ、集中力の低下、自殺を考えることなどが多く、過去にうつ病にかかったことのある人は、よりうつ病の症状が重くなりがちなので、注意が必要です。これらは適切な治療によって、改善する可能性が高いことがわかっていますが、がんにかかっていることから来るストレスや気分の問題だと考えて、うつ病であることに気付かずに苦しい思いをしている人も多く見受けられます。 高齢者の場合、うつ病の治療中にがんが見つかることがあります。うつ病が、大きな病気の予兆だったということで、このようなうつ病を「警告うつ病」と呼ぶことがあります。特に高齢のうつ病患者さんは、うつ病治療のほかにもからだの検査が必要になってきます。 ///////////用語解説///////////// ■高カルシウム血症: 血液中のカルシウム濃度が高くなってしまう状態を高カルシウム血症という。進行すると食欲不振、嘔吐、意識障害などが起こる可能性がある。ホルモンを分泌する副甲状腺の異常や悪性腫瘍などが原因となることがある。 //////////////////// ■「脳血管障害」----半数近くが治療の必要な《うつ》に 脳内出血や脳梗塞 などの脳血管障害も、うつ病の原因となります。急速に発症・進行するこれら脳血管障害の患者さんの半数近くが、治療を必要とするうつ状態になっており、そのうちの27%が大うつ病性障害、20%が気分変調性障害だったという報告もあります。 脳血管障害には、麻痺などの後遺症が残る場合がありますが、後遺症のために生活に支障が出てくると、うつを助長させ、生きる気力をなくしてしまう可能性もあります。また、後遺症のある人にリハビリテーションを無理強いすると、うつ状態を悪化させてしまう危険性もあるので気をつけなくてはなりません。 後遺症以外では、過去にうつ病にかかったことがある人が、よりいっそううつ病を発症する可能性が高まります。そのような場合、家族や周囲の人は、リハビリと同様にうつ症状の推移にも気を付けて、うつ病の治療にも心配りをして下さい。 ///////////用語解説///////////// ■大うつ病性障害 と 気分変調性障害: うつ病は、医学的には、気分障害のひとつである「うつ病性障害」に該当しますが、その症状の度合いに応じて、大きく「大うつ病性障害」「気分変調性障害」「小うつ病性障害」の3つに分類されています。中でも「大うつ病性障害」がいわゆる《うつ病》の中核を成しています。★★★参照ください。(↓) 気分障害 の分類: --a. うつ病性障害(うつ症状だけが現れる) --b. 双極性障害 (そう症状の時期がある。いわゆる躁うつ病) a-1. ○大うつ病性障害 ……強いうつ症状 a-2. ○気分変調性障害……うつ症状は軽いが、2年以上続いている。 a-3. ○小うつ病性障害 ……軽いうつ症状 b-1. ○双極性T型障害……入院が必要なほどの強い躁(そう)状態 b-2. ○双極性U型障害……躁状態が軽度 b-3. ○気分循環性障害……躁もうつも軽度だが、2年以上続いている。 //////////////////// |
●4-2.うつ病のバリエーション うつ病の主な症状については、次の9つの症状があげられます。このうち、4つ以上の症状があてはまり、なおかつその状態が2週間以上にわたって続いている場合には、うつ病の中核である《大うつ病》と診断されることになります。 1.抑うつ気分 もっとも典型的な……憂うつ・悲しい・落ち込んでいる・希望が感じられない…などの抑うつ的な気分にほとんどの患者さんが苦しんでいます。また、逆に「落ち込んだ」心の状態を前面に出さず、むしろ外に対して攻撃的な態度を示す人もいて判断に苦しむケースもあります。特に、最近増えているのは、感情をうまく表現することができない子どもや青少年の場合です。ふさぎ込んだ気分の代わりに、苛立ちや気まぐれの気分が現れることがあります。 2.興味や喜びの喪失 うつ病にかかった人の多くは、これまでもっていた趣味や娯楽への興味や喜びの感情を失ってしまいます。無関心に陥ってしまうのです。陰うつな気分が災いして、何をやっても、面白く感じられなくなるのです。性的な関心も欲求レベルも著しく低下してしまいます。大人・子どもの区別無く、自分ひとりの世界に閉じこもり、それが高じて「社会的ひきこもり」が始まるケースまります。 3.急激な食欲の増減 うつ病では、通常、食欲も減退します。「何を食べても砂をかむような感じ」だと思いながら、「食べなければいけないから、無理して食べている」人もよく見受けられます。また、これとは逆に、甘いものや炭水化物など、特定の食べ物ばかり暴食する人もいます。このような極端な食欲の変化も影響して、短期間に急激に体重が増えたり減ったりすることがあります。目安としては、1カ月に4〜5kgも減少した場合には、注意が必要です。若い女性などで、急激にやせたことで「摂食障害」や「拒食症」ではないかと周囲が心配し、受診する人もいますが、意識的なダイエットによるものではなく、うつ病のために食欲が失われていたからだ、と判明することもあります。 4.不眠または睡眠過多 うつ病の患者さんでは、不眠などの「睡眠障害」に悩むケースが少なくありません。(1)夜中に目覚めてその後一晩中眠れない「中途覚醒」(中期不眠)や、(2)早朝に目が覚めてその後は眠れなくなる「早朝覚醒」(終期不眠)は、うつ病の典型的な症状ですが、(3)なかなか寝付けない「入眠困難」や、(4)睡眠時間が長くなりすぎる「過眠」のケースもあります。 5.精神運動の問題 うつ病の患者さんには、はた目でみていて分かるほど、著しい行動の変化が認められることがあります。異様にからだの動きが鈍くなったり、口数が減ったり、応答するまでの時間がかかったりするケースは、専門的には「精神運動抑制」といわれます。極端な場合には、ほとんど寝たきり状態のようになってしまうことすらあります。 それとは逆に、強い焦燥感のために、じっと座っていられなくなってイライラ足踏みをしたり、落ち着きなくからだを動かしたり、非常におしゃべりになったりするケースもみられます。しつこく、あれこれと訴え続けるような患者さんもいます。この場合は一般的なうつ状態とみなされる態度とはかけ離れているため、見逃されてしまうことがあり、注意が必要です。 6.疲れやすさや気力の減退 気力の低下や疲労感、倦怠感もうつ病の典型的な症状です。何をしようにも気力が生まれてこないとか、ほとんどからだを使っていないのに、ひどく疲れるなどと訴えることもあります。顔を洗ったり着替えたりといった日常的な行動を行うだけでも、多大なエネルギーが必要になる人もいます。そうなると、穴のあいたエンジンにガソリンを注ぎ込むようなもので、いくらがんばっても能率が上がらない状態になり、結果的に、自分自身に対する情けなさをつのらせるばかりになってしまう場合も少なくありません。 7.無価値感や罪責感 うつ病の患者さんは、日常的な取るに足りない失敗を自分の責任だと思い込んで苦しんだり、過去のささいな失敗を繰り返し思い悩んだり、不運な出来事についてすべて自分のせいだと、妄想的に思い込んだりすることがあります。仕事や家庭における責任を、十分に果たせなくなった自分を責める事例なども見られますが、そうした自責の念が妄想的なまでに強まった場合は、このケースに当てはまります。 8.思考力・集中力の減退や決断困難 考えたり、集中したりすることが難しくなり、他人からみれば大したことでなくても、あれこれ考えてしまって、さっぱり決断できなくなります。記憶力の減退や注意力の低下を訴える場合もあり、仕事の能率や学業の成績が落ちたりします。高齢の患者さんのなかには、自分の思考力の低下を「ボケたのではないか」と心配して受診する人もいます。 一般的に、老年期に近付くと、定年や親しい人との死別などで、社会的な役割や関係性を喪失することが増えるため、うつ病にかかりやすい環境になります。一方、高齢者にはアルツハイマーなどの《痴呆症》が現れる場合もあります。これらの病気に関連する症状はうつ病と重なる場合があるため、判断が難しく、判別には注意が必要です。 9.死についての反復思考や自殺念慮・自殺企図 うつ病が重くなると、「死んだほうがまし」だとか、「自分がいなくなれば周囲が助かる」などと信じて、自殺のことが脳裏をよぎったり、繰り返し考えたり、実際に自殺を図ったりすることがあります。うつ病の患者さんは、気持ちを抑制する力も弱くなっているため、普段なら考えられないような大胆な行動に出てしまうことがあります。 「死にたい」と口にする人ほど実際には自殺に走らないと言われるのは間違いで、むしろ死を口に出すほど当人が苦しんでいるのだと受け止める必要があります。 ★★★うつ病の判定に、2週間という数値が重要な意味を持ちます。なぜなら、日常生活で仮にいやなことがあっても、1日か2日、あるいはせいぜい1週間、長くても10日ほどあれば、普通は気持ちの落ち込みから回復できるからです。精神的に打撃を受けるような事態に遭遇したときに、悲観的になったり、憂うつになったり、不眠に苦しんだりすることは、多くの人が経験しますが、ほとんどの場合、原因が解消したり、解決方法が見つかったりすれば、つらさは薄らいでいきます。2週間以上にわたって同じ強さの苦痛が続くことはまれであり、ましてや辛さが次第に強くなってくるようであれば、注意が必要になります。 また、一部のうつ病の患者さんには、朝目覚めたときに症状が悪化し、夕方になると改善されるような「日内変動」や、冬季になると悪化するような「季節変動」もみられます。そうした症状の波も、うつ病かどうか見極めるための判断基準になります。 なお、抑うつ症状がそれほど強くなく、大うつ病の診断がつかない(上記の当てはまる症状が4つ未満の)場合には、「小うつ病性障害」という診断がつくことがあります。さらに、この小うつ病的な軽いうつ症状が2年以上にわたって続いていて、なおかつ生活に支障が出ている場合には「気分変調性障害」と診断されます。 ほかに、もともと気分変調性障害で、慢性的に軽いうつ状態が続いている患者さんが、大うつ病の診断に該当するほど落ち込んだ場合には、「二重うつ病」と呼ばれます。大うつ病性障害の20〜25%が、このケースに該当するといわれます。 ********************************************** うつ病の主な症状については上記の通りですが、それ以外の症状について、いくつかのうつ病のバリエーションを以下に紹介します。また、うつ病の一種とされる「適応障害」に分類される、さまざまな症候群についても解説します。 ///////////用語解説///////////// ■適応障害: うつ病に近い症状を示す、ストレス と関連した精神疾患のひとつ。受験や離婚など、あるストレス(ひとつまたは複数)を経験した後、3ヶ月以内に抑うつ感や不安感、勉学や仕事が続けられないといった行動障害などの反応が現れ、日常生活に大きく影響します。 うつ病の症状と似ていますが、うつ病に比べて症状が軽く、原因となるストレス要因が取り除かれて6ヶ月以内には、多くの場合症状がなくなることが特徴です。いわゆる「五月病」と呼ばれている状態も、適応障害とみなされます。しかし、ストレス要因が慢性的な場合には、症状はより長い期間続くことがあります。 適応障害の症状は、強い苦しみの感情や気分の落ち込みなどの精神的な不調が中心ですが、そのことが原因で、引きこもってしまったり、学校・会社をさぼるなど、学業、職業などが続けられない状態に陥る場合もあります。また、突然の暴力、暴飲など、社会のルールを無視するような「行動障害」となって現れることもあります。 適応障害の原因となるのは、就学、独立、転居、結婚、離婚、失業などで、誰もが経験しうる出来事ばかりです。しかし適応障害になった本人にとっては、容易に乗り越えられない、非常に重大な出来事に相当します。治療には環境調整をしてストレスを軽くしながら、薬物や精神療法、家族療法などを行います。 //////////////////// ■緊張病性のうつ病 一般的なうつ病の症状以外に、ろう人形のようにからだを固めてしまい、まわりから刺激を与えても動かなくなる「カタレプシー(蝋屈症=ろうくつしょう)」という状態を呈します。ほかには、他人が言ったことを奇妙な形でおうむ返しをする「反響言語」、他人の動作を真似て繰り返す「反響動作」、奇妙な行動を繰り返す「常同症」や「衒奇(げんき)症」などがみられます。また、意味無く行う極度の拒絶や、話しかけても返事のない状態が続く「無言症」なども症状として現れる ことがあります。この状態になると、自分を傷つけたり他人を傷つけたりする可能性が高くなるので、注意が必要です。 ///////////用語解説///////////// ■カタレプシー(蝋屈症=ろうくつしょう): 自分の意思が無くなり、他人の影響を受けやすくなって、他人からのはたらきかけをそのまま受け入れ、与えられた無理な姿勢をそのまま続ける状態。自分の意思で元に戻そうとせず、通常では耐えられないような窮屈な姿勢を長時間維持し続ける。 //////////////////// ■メランコリー型うつ病 朝に悪化し、午後から夜にかけて改善してくる、うつ病の症状を「日内変動」といいますが、メランコリー型にはその傾向が著しくみられます。メランコリー型は、脳内化学物質の変化による生物学的要因の関与が強く疑われるうつ状態で、抗うつ薬や電気けいれん療法などの治療が効果的といわれます。 電気けいれん療法とは、こめかみに電極を当てて10秒近く電流を流す治療法ですが、メランコリー症状や、前出の緊張病症状などの特定の病状については、効果が現れています。治療とはいえ、電流によってけいれんが起こることに抵抗のある人が多いため、最近では麻酔をかけて筋弛緩薬を用いて行うなど、けいれんを起こさずに症状を改善する方法もとられていることから、《無けいれん電通療法》と呼ばれるようになっています。 ///////////用語解説///////////// ■筋弛緩薬: 運動神経から筋肉への信号を伝わらなくさせる薬。それによって筋肉が弛緩(ゆるむ)し、外的刺激に反応しなくなる。 //////////////////// ■非定型うつ病 うつ病の 一般的な症状だけでなく、明らかな体重の増加や食欲の増加、過眠、手足が麻痺してなまりのように重くなるなどの症状があります。対人関係に過敏で問題が生じやすく、職場や学校などの人間関係がうまくいかないといった社会的障害を引き起こしていることがあります。 ■産後うつ病 産後うつ病は、大きく分けて「産後憂うつ症(マタニティブルー)」と「産後大うつ病」の2種類があります。「産後憂うつ症」とは、 初産を迎えた女性の50〜80%がかかるうつ状態です。分娩後3〜4日から始まり、5〜7日後に悪化し、しかし、12日後までには消えてしまう一過性のものであることが多いようです。症状は、涙もろくなる、不安・イライラ、睡眠障害などがありますが、症状が出たと思ったらすぐに気分がよくなったりと、現れ方にも揺れがあります。産後憂うつ症になった人の20%が産後大うつ病になることから、症状が2週間以上続く場合は、医師の診察を受けることが大切です。 「産後大うつ病」は、出産後すぐでも、数週間後でも発症する可能性があり、産後憂うつ症よりも症状が重くなります。これは、脳内化学物質の変化による生物学的な病気であり、精神的な弱さや人格に問題があるわけではありません。必ず専門家の治療が必要な病気です。症状は、一日のほとんどを占め、2週間以上にわたって続きます。好きだったことにも興味がなくなり、疲労感、落ち着きの無さ、罪悪感、何事にも価値がないような感じを抱きます。動作が緩慢になり、集中力も落ち、不眠や自殺願望に悩まされます。重症の場合には、幻覚や妄想を覚える人もあり、まれには自分の子どもに危害を加える危険性が生じる場合もあります。 母親になった女性の10〜15%が「産後大うつ病」を発症しますが、何もする気が起きないため、あるいは他人にどう思われるかを恐れて、医者にかかることをためらう人もいます。また、出産して幸せであるべき母親である自分が、うつ状態にあることへの罪の意識を感じる人もいます。また医者のほうでも、育児から来るストレス反応だと思い込んでしまうケースもあるようです。 赤ちゃんへの影響も著しく、小児期までも悪影響が及ぶこともあります。うつ病の母親は子どもとのかかわりが少なくなるので、親子の関係が親密でなくなることもあります。いくつかの研究から、そのような子どもは、うつ病にかかっていない母親の子どもよりも、発達が遅れる可能性があることがわかってきています。 かつてうつ病にかかったことのある女性は、出産時に「産後大うつ病」にかかる可能性が高くなります。そのような人は医師に相談し、うつ対策をとる必要があります。また、子どもへの影響が大きいので、「産後大うつ病」が疑われたら、なるべく早く医師の診断・治療を受けることが大切です。周囲も気をつけて見守りましょう。 ■急速交代型----7〜8割は女性 うつの症状だけでなく《そう(躁)》の症状が現れるものを「双極性障害(以前は躁うつ病と言っていました) 」といいますが、それがめまぐるしく交代する状態を、「急速交代型」の気分障害といいます。 専門的には、躁病やうつ病の症状が1年に4回以上現れる場合に、このように呼ばれます。双極性障害の場合は男女の割合がほぼ同じであるのに対して、「急速交代型」は女性が70〜80%を占めています。 「急速交代型」は、うつ病治療のための抗うつ薬によって生じることもあります。治療には、炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなどの気分安定薬を中心に投与します。この「急速交代型」の症状は長期にわたって続くことが多いので、辛抱強く治療を続けることが大事です。 ■月経前不快気分障害(PMDD) 多くの女性が、月経が始まる前に何らかのからだや気分の変化を経験します。乳房の張りや痛み、疼痛(ズキズキとうずくような痛み)などがあり、仕事をするのが辛くなる程度のものを、「月経前症候群(PMS)」といいます。さらにこれ以上に重症な症状を、「月経前不快気分障害(PMDD)」といいます。 「月経前不快気分障害(PMDD)」は、妊娠可能な女性のおよそ5%がかかっているといわれています。「月経前症候群(PMS)」と同じような身体的症状を伴うことがありますが、何といっても著しいのは、生活の質を下げるほどの《気分の悪化》です。例えば、月経前の数日間は、自分でコントロールできないほどの不機嫌や怒りを経験することがあります。こうした状況が、職場の仲間や友人、近親者との関係を悪くする場合もあります。 気分的な症状は、明らかなうつ気分または絶望感、顕著な不安または緊張、イライラ、突然涙もろくなる、怒り、焦燥感、葛藤、仕事や趣味などに対する興味の喪失、集中力の低下、すぐに疲れる、過食、過眠または入眠困難など、多岐にわたります。 また、身体的症状には、乳房の張りと痛み、頭痛、関節痛、筋肉痛、腹部の膨満感、体重増加などがあります。 この「月経前不快気分障害(PMDD)」という疾患も、脳内化学物質の変化が疑われていって、精神的弱さや性格的な問題によるものではありません。産婦人科はもちろん、精神科や心療内科の医師に診て貰うのが一番でしょう。 ■反復性短期抑うつ性障害 基本的な特徴は、大うつ病性障害と同じですが、2日以上2週間以内に現れる症状を繰り返します。典型的には、2〜4日という短期的に現れる症状が、月に一回程度、毎月のように起こります。ただし、女性の月経期間に合わせて起こるものとは違います。症状が現れる期間には苦痛を伴い、うつ状態のため学校や職場とあつれきを起こす場合もあります。中には社会的になんら問題を生じていない人もいますが、それは、本人がうつ症状と闘っているという意識をはっきりと認識し、かろうじて正常な生活を送っているという、大変な努力の賜物である場合が少なくありません。 ■混合性不安---抑うつ障害 不快な気分が1ヶ月以上続きます。集中力の低下、記憶力の低下、睡眠障害、疲労、気力の低下、イライラ、不安、涙もろくなる、過度の警戒心をもつ、将来に対する絶望や悲観、低い自尊心または無価値観などの症状が重複して現れます。そのため、学校や職場などで、社会的な不適応も起こしやすくなります。 ■仮性痴呆 「痴呆」といわれる、もの忘れの激しい症状は、うつ病によって引き起こされることもあります。これが「仮性痴呆」と呼ばれている症状です。「老人性痴呆」と間違えられることが多いのですが、うつ病と「老人性痴呆」を間違えると、治療法が異なるので、大変なことになってしまいます。 「老人性痴呆」とは、老化に伴う病的なもの忘れや、記憶の3つの能力(1.ものごとを覚える能力 2.覚えたものを忘れない能力 3.覚えたものを記憶から取り出す能力)のどれかあるいはすべての能力が低下する記憶障害など、脳に器質的、病理的な変化が起こっていると考えられる症状です。 お年寄りは行動範囲が狭くなり勝ちで、親しい人の死に直面することも多く、自分の人生の先行きを考えて、ふさぎこんでしまう人も多く見受けられます。そうした暗い気分が日々重なり、次第に日常生活に無関心となり、気力も衰えて、うつ病に移行してしまう人も多いのです。 さらにお年寄りは持病のある人が多く、その治療でくたびれてしまったり、長期間に服用する薬の副作用でうつ状態が出てくることもあります。 もの忘れの自覚があるかないか……これが、「仮性痴呆」と「老人性痴呆」の見分け方です。「仮性痴呆」の人は自分が「もの忘れが多くなったな」と思っているのに対して、「老人性痴呆」の人はそのことを認識していません。両者の違いを早期に見つけないと、ますます悪い症状に陥ってしまいます。いずれにしろ、心の専門医に相談し、適切な治療をすることが必要です。 |
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