眠れない・眠りたくない−睡眠障害−に打ち勝とう 


うつ病(3)

 

■1.  「不安障害」とは?
■2. からだは健康なのに異常が続く「身体表現性障害」
■3.  自分と現実を切り離す「解離性障害」
■4. うつ病に近い症状を現す「適応障害」
■5. 人格の偏りが招く「パーソナリティー障害」
■6. 現実と非現実の区別がつかなくなる「統合失調症」
■7. 生活の破綻にもつながる「依存症」
■8. 記憶や思考が低下する「老人性痴呆」

 


  うつ病(2)では、ストレスやうつ病が原因となって現れる「からだの病気」について説明しました。

ここうつ病(3)では、「うつ病」をさらに正しく理解するために、「うつ病」と関係するさまざまな「精神疾患」について解説したいと思います。
 

  まず、精神疾患というのは、単純にひとつの病名に対して、ある決まった症状だけが現れるわけではありません。最初に「不安障害」だと診断されても、あとから「うつ病」の病状に移行することもありますし、症状に不安障害やうつ病に似ているものがみられても、実は「統合失調症」だったという場合もあり得ます。

  このように、一見とらえどころのない精神疾患の分類は、病気の症状ごとに名前をつけて行います。つまり、インフルエンザや肺炎にかかっている状態を指すのに、インフルエンザウイルスや肺炎球菌といった原因菌で病気を分類するのではなく、発熱やせきという症状によって「発熱」グループ、「せき」グループと分けているようなものなのです。

  うつ病は、さまざまな精神疾患と関わりがあります。うつの現れ方も、単独で出現する場合もあれば、他の精神疾患を伴って現れる場合もあります。そこで、こうしたさまざまな精神疾患とうつ病との違いや類似点、あるいは一緒に現れやすい症状などをポイントに解説していきます。これらを知ることによって、うつ病やほかの精神疾患をいたずらに恐れることがないように、正しく理解するためにお役立て下さい。
 



■1.  「不安障害」とは?


●1-1.「不安」が病気の引き金に


  心理学的には、不安や恐怖は、人間が 「ストレス」 を感じると現れる反応のひとつとされています。人間が外界からの精神的・身体的な圧力、すなわちストレスにさらされた時、不安や恐怖は、それらの圧力を回避する行動をとるための 引き金となるのです。すなわち、不安とは人間が身の危険を感じたとき、心の内側から発せられる注意信号のようなものといえるでしょう。


  外界に対する防御の性質を持つ不安は、動物にもみられる感情です。しかし、人間の場合には、外界の刺激とは無関係に、自分の内部から生じる漠然とした不安があります。例えば「営業成績が少しだけ自分の目標を下回っただけで、周囲の助言に耳を貸さないほどの不安に陥る」というような不安は、外的な危険とは直接関係無く生じるものとされます。


   不安や恐怖がもたらす体内のメカニズムは、まだ詳しくは明らかにされていませんが、これらの感情は、必ず自律神経系の活動にかかわってきます。心臓がドキドキしたり、息が苦しくなったり、手足が震えたりする反応は、不安や恐怖といった感情からも引き起こされます。

 

●1-2.不安障害の分類とその症状


  病的な不安がもたらす「不安障害」は、不安の要素が特に強い症状、恐怖の要素が強い症状、脅迫観念の強いもの、環境に大きく反応して現れた症状、というように、症状の特徴ごとに分類されています。それでは、その中の主なものを紹介します。


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○●「全般性不安障害」----さまざまな対象に不安を覚える

  不安を感じることのない人はいませんが、日々のちょっとした不安を敏感に受け止め、深刻に悩んでしまう人がいます。

  「同僚は私の悪口を言っているのだろうか?」
  「明日の試験に落ちてしまうかもしれない」
  「子どもの帰りが遅い。交通事故に遭ってしまったのかも?」
  「夫がリストラされたらどうしよう?」

  などなど、日常生活には多くの不安を招く要因がありますが、このように、日常のさまざまな出来事や活動について、あれこれと不安を感じたり心配をすることが6 ヶ月以上続き、その不安や心配を自分では払いのけられず、著しい苦痛を感じ、日常生活や社会活動に支障を来たしてしまう状態を
「全般性不安障害」といいます。


  
「全般性不安障害」には、以上のような症状のほかに、疲労感、集中力の低下、イライラ感、睡眠障害なども現れます。この疾患の特徴は、不安の対象が特定でなく、さまざまな対象に不安を抱いてしまうことです。もともと神経質で心配性な人が、全般性不安障害になりやすいといわれています。そうした性格に、なんらかの強いストレス環境が影響して発症するケースが多くみられます。


  治療法は、抗不安薬や睡眠薬、SSRIなどの薬によるもののほかに、専門家による「精神療法」などで、不安な気持ちをコントロールする方法があります。



○●「パニック発作」と「パニック障害」(過換気症候群)----コントロール不可

  「パニック発作」不安発作)は激しい動悸、めまい、息苦しさ、吐き気、手足のしびれ、冷や汗などのからだの症状が突然起こるもので、強い恐怖感または不安感を伴います。発作は始まってからおよそ10分以内に頂点に達し、その間に「危険が迫っている。今すぐ逃げたい」という感情が起こります。


   発作の症状そのものは、長くても30分〜1時間程度で収まることが多いのですが、
自分で自分のからだをコントロールできないため、このまま死んでしまうのではないか、気が狂ってしまうのではないか、という強い恐怖にかられます。この発作は、次項で説明する「広場恐怖」(外出恐怖)などの恐怖症にもよくみられます。


  パニック発作のために強い苦痛を覚え、「また発作が起きてしまうのではないか」といった「予期不安」を感じ、その不安が生活に支障を来たすほど膨らんでしまう症状を「
パニック障害」といいます。パニック障害の発作は、例えば睡眠中や、のんびりしているときなど、特定の原因がない状態のときでも突然出現することがあります。

  また、一度発作を起こすと、「またどこかで発作が起きてしまうのではないか……」と、発作の恐怖が頭から離れなくなり、こういった予期不安が、さらに発作を招く原因にもなります。パニック障害の場合は、からだの異常はなく、検査をしても何の問題もみられないことがほとんどです。

  「
過換気症候群」は、パニック障害の症状として起こることが少なくありません。「ハアハア」と速い呼吸を繰り返し、呼吸をしすぎてしまう過呼吸の状態になってしまい、正常な呼吸が出来なくなる状態を「過換気発作」といいます。この発作が原因で、パニック発作と同様、激しい動悸やめまいなどのからだの症状が現れる状態が、過換気症候群です。

  思春期の女性に多くみられ、強い不安や緊張、欲求不満などの症状を招きます。



○●「恐怖症」----強い《恐怖》が引き起こす悩み

  自分の外部にある、自分にとって特定のものごとに強い恐怖心を抱くために、日常の生活や社会活動に支障を来たしている状態を「恐怖症」といいます。


   恐怖症の患者さんは、一般の人がそれほど怖がらないような対象や状況に対して、自分でも「何で怖いんだろう?」と思いながらも、強い恐怖を感じて悩みます。恐怖症は、恐怖の対象によって、
1.広場恐怖」(外出恐怖)、2.特定恐怖」、3.社会不安障害」などがよく知られています。では、その3つの恐怖症についてみていきましょう。


■1. 場所や状況が怖くて、引きこもりがちになる「広場恐怖」(外出恐怖)

  「
広場恐怖」(外出恐怖) は、何か困ったことが起きても誰にも助けてもらえない、あるいは恥ずかしい思いをしたことがあるという《場所や状況》に対する恐怖によって、外出ができない、一人になれないなどの症状が出てしまい、生活や社会活動に支障を来たす状態をいいます。恐怖の対象となる場所や状況の典型的な例としては、一人での外出、家に一人でいること、人混み、渋滞する道路、橋、電車や飛行機、エレベーターなどの乗り物などがあります。


  広場恐怖は、英語の《アゴラフォビア》を訳した言葉ですが、アゴラとは古代ギリシャの《人々が集まり交流する広場》を意味しています。つまり、広い場所そのものが恐怖の対象となるというよりは、人が大勢いるところで《恥をかきそう》と怖がってしまったり、「知らない人ばかりで助けを求められない」と思い込んでしまう個別的な場所に対する恐怖のことを指しています。


  
広場恐怖には、恐怖の対象である場所や状況に立たされると、「パニック発作が起こるのではないか?」という恐怖から恐怖症になる場合と、かつて渋滞に 巻き込まれて用便を我慢した辛い経験から、再び渋滞に巻き込まれるともらしてしまうのではないかと不安に駆られるというような、《過去の恐ろしい経験》から陥る場合の2通りがあります。


  特に、パニック発作を伴う広場恐怖の患者さんは多数いて、パニック障害と診断された人の約3分の一から半数が広場恐怖を伴います。広場恐怖の患者さんの中には、生活空間が著しく狭くなった場合など、気分が落ち込む抑うつ状態になりがちな人もいます。家族にうつ病経験者がいる場合も多く、うつ病の誘因ともなる、親しい人との離別・死別体験をもっている人も多いと指摘されています。


  
治療には、抗不安薬や抗うつ薬、SSRIなどを用いる薬物療法、恐怖の対象となる場所や状況に徐々に慣れさせていく行動療法、患者さんと恐怖を結び付けている持続的・否定的な考え方を修正して現実的なものに変えていく認知療法を並行して行っていきます。



■2. 恐怖の対象がさまざまな「特定の恐怖症

  苦手なものは誰にでもありますが、犬や地震、血液や高所など、ある特定の対象に対して恐怖を覚え、日常生活に支障を来たすほどの症状を現すものを「
特定恐怖」といいます。「特定恐怖」のタイプは主に、(a) 動物型、(b) 自然環境型、(c) 血液・注射・外傷型、(d) 状況型、(e) その他の型に分けられます。


  (a)
動物型は、動物や虫がきっかけで恐怖が生じる場合で、小児期に多く発症します。

  
(b) 自然環境型は、嵐、高所、水などの自然環境が恐怖の対象で、これも多くは小児期に発症します。

  
(c) 血液・注射・外傷型は、血液や傷を見たり、注射や切開などの医学的な処置を受けたことがきっかけとなって発症します。

  
(d) 状況型は、 列車や飛行機、トンネル、橋、エレベーター、自動車の運転、閉所などの特定の状況がきっかけとなります。前項の「広場恐怖」と似ていますが、広場恐怖の場合はパニック発作や、過去の苦い経験が前提であるのに対して、状況型の恐怖症は、それらの前提なしに、その状況そのものに恐怖を抱くという違いがあります。状況型の発症しやすい年齢は、小児期と20代半ばです。


  恐怖の対象となるものや状況に直面すると、すぐに、動悸、震え、冷や汗、胃腸の不快感、下痢、緊張、赤面、混乱といった不安症状が現れます。恐怖の対象を回避できないときには、パニック発作を起こす場合もあります。


  生活に大きく障害が見られて初めて、恐怖症と診断されますが、「○○を怖がるぐらいの弱点があってもいいか」と放置しているうちに症状が軽くなることもあり、恐怖の対象を避ける工夫をすれば普通に暮らしていける場合もあります。



■3. 学校や会社関係の人と会うのが苦痛な「社会不安障害

  自分が恥ずかしい思いをする可能性がある状況に対して、 絶えず不安を感じていて、職場や学校などの社会的な状況に置かれると、不安反応が誘発されて、日常生活に支障を来たしてしまう場合は「社会不安障害」といいます。症状としては、動悸、手の震え、発汗、胃腸の不快感、下痢、緊張、ひどく赤面する、混乱などが現れます。


  社会の中で、周囲の人とうまく付き合うためには、それにふさわしい言動をとった方がよいと、誰もが思います。ところが
社会不安障害を患っている人は、相手の人にどう思われるかをひどく気にして、自然に行動できなくなってしまうのです。


  
社会不安障害になっている本人は、他人の目や評価を恐れすぎていること、自分の対人反応が過剰であることを認識していますが、自分ではどうすることもできません。10代半ばまでに発症することが多く、18歳未満では症状が6月以上続くことが診断の基準となります。


  社会的に成長するにつれて症状が軽くなる場合も多いのですが、放置すると、うつ病やアルコール依存症にもなりやすいので、医師の診療を受けることが必要です。



○●「強迫性障害」(強迫神経症)----強迫観念で自分を苦しめる

  「あることをすると ⇒ 恐ろしいことになる」 「あることをしなければ ⇒ 危険な目に遭う」という考え(強迫観念)にとりつかれたり、そうした考えを解消するための行動(強迫行為)を繰り返し、日常生活に支障を来たしている状態を「強迫状態」といいます。


  ★
強迫観念…現実には起こりそうも無い危険を恐れる気持ち。
       例: まだばい菌がついているかも……病気になったらどうしよう (゚Д゚;)
          などと、考え、心配でたまらない気持ちに。。。。。
     

  ★
強迫行為…危険に対する不安を打ち消すための動作や行動。
       例: 心配だから、もう一度洗おう!! と考えて最初からまた洗い直す。
          などの行動を繰り返す。


  
「強迫性障害」は、この強迫状態が自分の意思に反して繰り返し起こり、悩んだり苦痛を味わっている場合を指します。強迫観念の内容は、患者さん個々人で異なりますが、もっとも多く見られるのは、「不潔恐怖」。

  
この場合、不潔だと考えてしまう対象は、汚れたものから細菌までさまざまあり、その範囲も手足やからだ、食器や炊事用具、衣服や家などの環境全体に及ぶこともあります。

  また、不潔恐怖に対応して現れる
強迫行為も、汚れが気になって何回も手を洗ってしまう程度から、何時間も手の皮がすりむけるまで洗い続けてしまう状態まで、さまざまです。 

  しかし、例えば食器洗いには熱中しても、部屋の中はホコリだらけのまま放置するといったような、他の人から見れば一見矛盾するようなケースも多々みうけられます。

  また例えば、青少年などでは、いくら振り払おうとしても、自分にとって不潔で耐え難い性的シーンが頭に浮かんでしまう、といった
強迫観念を、何度も手を洗うといった強迫行為で打ち消そうとするようなケースもみられます。

  さらに、
強迫観念の内容が空想めいていたり、強迫行為まじない的である場合、まわりからの理解はいっそう困難になります。例えば、まだ結婚する予定のない若い女性が、「将来生まれてくる子どもが不幸になってしまうから、必ず右足から歩き出さなければならない」などと決め込んでしまうような、何の根拠もない強迫に苦しむ人もあります。


  
《規制や儀式で安心を得る》

  強迫観念をもたらす恐怖は、ある決まった恐怖が持続する場合だけでなく、他の恐怖と入れ替わったり、多数の恐怖が同時に出現することもあります。患者さん本人も平静なときは、そのような観念や行為がばかばかしく無意味であると感じていますが、やめようとしてもやめられません。

  自分の恐怖の対象が実際には目で見て確認できないことから、患者さんは「必ず○回洗う」 「必ず○○から始める」 といった規則や儀式によって、安心を得ようとしますが、それをやめると著しい不安が生じるため、どうしてもその観念や行為にとらわれてしまいます。また、とらわれているということ自体にも苦しむという悪循環に陥ります。さらに、誰かにその行為を阻止されると、大きな不安に襲われます。



   ■■■■
強迫性障害」 の診断の目安■■■■

   (以下のような
強迫観念または、強迫観念に基ずく強迫行為がある)

 
1: 反復的(もしくは持続的)な「思考、衝動または心象」があって、強い不安や苦痛を
    引き起こすことがある。 


 
2: それが現実生活の問題を過剰に心配しているというのではない。

 
3: そうした 「思考、衝動または心象」を抑制(または無視)しようと試みたり、他の思考
    (もしくは行為)によって中和しようと試みている。


 
4: その強迫的な「思考、衝動または心象」は、患者自身の心の産物であるとの認識
    がある。


  5: 強迫観念に対する方法として、反復的行為(例:手を洗う、順番に並べる、確認
    する)や、心の中の行為(例:祈る、数を数える、声に出さずに言葉を繰り返す)を、
    自身でつくった規制に従って厳格に行うよう駆り立てられている(例:何回洗う)。


  6: しかし苦痛を緩和しようとしたものごととは現実的関連をもっていない(あるいは、
    明らかに過剰である)。


  7: 障害の経過で、患者自身が強迫観念・行為が過剰であることを認識している
    (これは子どもには適用されない)。

 
8: 強迫観念または、強迫行為のために、一日1時間以上の時間を浪費し、正常な
    生活習慣などを阻害している。

 
9: 強迫観念・行為が薬や身体疾患によるものではなく、他の精神疾患によるもの
    でもない。

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  このような状態は、思春期から青年期にかけて発症しやすく、男性は6〜15歳、女性では20〜29歳の間で初発することが多いようです。

  発症の原因は、近親者の死別や離別体験、男女関係の問題、家庭内の問題、学業成績の低下や受験の失敗、経済状態の悪化など、なんらかの不運や問題の発生が関係しています。また疲労、からだの病気、妊娠、分娩などのからだの変化も要因となります。


  
強迫性障害は、うつ病の発症のメカニズムと同様に、脳内の神経伝達物質(この場合はセロトニン)がうまく行き来しないことが原因で現れる症状と考えられています。そこで治療には、セロトニンの伝達を正常にする抗うつ薬を使用します。不安や焦りが特に強い場合は、抗不安薬や抗精神病薬の併用を考えます。さらに暴露反応妨害法などの精神療法も併せて行います。

  まわりの人は、強迫症状の特徴を理解して、「気のせい」 「気にしすぎ」 などと突き放した言動をとらないように注意する必要があります。


   ///////////用語解説/////////////


■暴露反応妨害法:
  
「強迫性障害」で現在もっとも 効果的といわれているのが、暴露法と反応妨害法を組み合わせた暴露反応妨害法である。暴露法とは、苦手と感じてこれまで恐れたり避けたりして来たことに徐々に立ち向かわせ、不安が下がるまで続けさせる治療法である。反応妨害法とは、これまで不安を下げるために行ってきた強迫行為や回避行動をあえてさせずに、徐々に我慢させる治療法である。

////////////////////

 


○●「外傷後ストレス障害」(PTSD)----耐え難い出来事が残す心の傷

  自分や他人が死にそうになるなど、【耐え難い外傷体験】をして、強い恐怖を感じたあと、その出来事を思い出して恐怖にさいなまれたり、その出来事と似通った状況を避けたり、不眠などさまざまな病状に悩まされる状態を、「 外傷後ストレス障害」(PTSD)といいます。

  事故や暴行、脅迫などの事件や災害、戦争などを体験してから数週間後、多くは3ヶ月以内に発症して、【
再体験】【回避】【覚醒亢進】の3つの症状がみられます。


  【
再体験】はそのとき感じた恐怖の感覚を伴いながら、外傷的体験を何度も体験することです。 また、何の脈絡も無く、あるいは外傷体験を連想させるものごとに遭遇したことをきっかけにして、映画の一場面のように恐怖の瞬間がありありと思い出される「フラッシュ・バック」を体験するケースもあります。患者さんはそのたびに、強い苦痛を味わい、感情の麻痺や気分の落ち込み、イライラを感じたり、怒りっぽくなる場合もあります。


  【
回避】というのは、その引き金になるようなものごとを 避けて、外傷体験を連想させる会話や、活動、場所、人物を退けて、引きこもりがちになる状態です。苦痛から逃れるためにアルコールや薬物の乱用に走る人もいます。


  【
覚醒亢進】は、不眠やイライラ、集中力困難など、過敏な反応を示すようになっている状態です。


  
PTSDの人は、頭痛、食欲減退、全身のだるさなどの身体症状を長期にわたって示す場合もあります。また、愛情を感じなくなったり、他人と自分が分離されているような感覚や、平穏な一生が虚しく感じられたりというような、自己破壊的な衝動を覚える場合もあります。

  
PTSDは、これらの症状が発症後1ヶ月以上続きます。4週間以内でおさまるものは「急性ストレス障害」といいます。


  
PTSDの症状は、その多くは外傷体験から3ヶ月以内に発症しますが、まれに数ヶ月または数年も遅れて現れることもあります。

  研究によると、患者さんの約半数が発症後3ヶ月以内に回復していますが、それ以外の多くの患者さんは、1年経っても症状が持続しています。この障害は、ベトナム戦争から帰ってきた多くの米国兵士が、正常な市民生活になかなか戻れなかったことから広く知られるようになりました。

  わが国では、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件の後の被災者に多くみられるようになり、
PTSDは今では社会問題として認知されるようになりました。2004年10月に起きた新潟中越地震、2005年4月尼崎のJR西日本(福知山線)脱線事故など悲惨な災害や大事故がたて続けに起きて、後を絶ちません 。今、ますますPTSD患者さんが増えています。 被災者の、ご遺族の、そして目撃者の、心のケアに一日もはやく取り組まれるよう関係者の皆さんのご協力が今ほど必要なときはありません。



■「急性ストレス障害」----恐ろしい体験がよみがえる

  
PTSDに先立って起きるのが「急性ストレス障害」です。PTSDとの違いは、症状が発症する時間と持続期間で、急性ストレス障害は、事件などの外傷を体験したのち、4週間以内に起こり、少なくとも2日は続き、症状が現れてから4週間以内に消失します。

  外傷体験のあと、現実感の喪失や自分と他人が分離されているような感覚などの症状が起こることが多く、
PTSDと同じように、再体験】【回避】【覚醒亢進の3つの症状がみられます。


   ■■■■
「外傷後ストレス障害」(PTSD)の診断の目安■■■■

 
1: 自分(もしくは他人)が実際に(または危うく)死ぬ(または重症を負う)ような
    外傷的な出来事を一度(または数度)、体験し、目撃し、または直面した。


 
2: 外傷的な出来事が以下のいずれか一つまたはそれ以上で再体験され続けている。

    a. 出来事の反復的で侵入的で苦痛な想起で、それは心象、思考、または知覚を含む。
      (小さい子どもの場合、外傷の主題または側面を表現する遊びを繰り返すことが
       ある)

    b. 出来事についての反復的で苦痛な夢
      (子どもの場合は、はっきりとした内容のない恐ろしい夢であることがある)

    c. 外傷的な出来事が再び起こっているかのように行動したり、感じたりする。
      (小さい子どもの場合、外傷特異的な再演が行われることがある)

    d. 外傷的出来事のひとつの側面を象徴し、または類似している内的または外的
     きっかけに曝露された場合に生じる強い心理的苦痛。

    e. 外傷的出来事のひとつの側面を象徴し、または類似している内的または外的
     きっかけに曝露された場合の生理学的反応。


 
3: 以下の3つまたはそれ以上によって示される (外傷前には存在していなかった)
    外傷と関連した刺激の持続的
回避と、全般的反応性の麻痺。

    a. 外傷と関連した思考、感情、または会話を避けるよう努める。

    b. 外傷を想起させる活動、場所、または人物を避けようと努める。

    c. 外傷の重要な側面の想起不能

    d. 重要な活動(仕事、学業など)への関心または参加の著しい減退

    e. 他の人から孤立している、または疎遠になっているという感覚

    f. 感情の範囲の縮小(例:愛の感情をもつことができない)

    g. 未来が短縮した感覚(例:仕事、結婚、子ども、または正常な一生を期待しない)


 
4: 以下の2つまたはそれ以上の持続的な覚醒亢進症状 (外傷前には存在していな
    かったもの)がみられる。

    a.
入眠または睡眠維持の困難

    b. 易刺激性 (ちょっとしたことですぐ怒る) または 怒りの爆発

    c. 集中困難    d. 過度の警戒心    e. 過剰な驚愕反応


  5: 外傷後に生じた障害が1ヶ月以上継続している。


  6: 障害は臨床上著しい苦痛または、社会的、職業的または他の重要な領域における
    機能の障害を引き起こしている。



////////////////////
 

○●「ストレス・シンドローム」(ストレス症候群)

  精神的なストレスによって心身の健康が損なわれている状態を、
「ストレス・シンドローム」(ストレス症候群)といいます。正式な医学用語ではなく、定義もあいまいな部分がありますが、一般に使われることもあるので、ここでは不安や恐怖などで日常生活に支障を来たしてしまう、いくつかの症候群を紹介します。



■触れ合い恐怖症候群

  
過保護に育てられ、集団生活における自己主張と忍耐、挫折を味わうことなく成長したために、成人になっても対人関係が苦手な人が、社会生活に適応できなくなる状態をいうようです。

  表面的なつきあいはできますが、踏み込んだ人付き合いには ストレスを感じやすく、職場などの上下関係をわきまえたコミュニケーションはとりわけ大きなストレスとなります。やがて社内での付き合いを避け、周囲から孤立した存在となり、本人もやる気や自信を失っていきます。結果としてミスも増え、周囲が自分の悪口を言っているのではないかなどと疑心暗鬼になり、出社できなくなっていくこともあります。発想の転換をはかり、積極的に人の輪に入っていく努力が必要になります。



■超高層ビル症候群

  
超高層ビルの20階以上にオフィスがある人が、出社するのが億劫になり、めまいや耳鳴り、頭痛、吐き気、生理不順などの症状を示すケースをいう表現です。

  超高層ビルは窓が開かず、完全な密閉状態ですが、地上より低い気圧は、自律神経系や内分泌系に影響を及ぼします。また、超高層ビルは常にほんの少しずつ揺れていますが、からだが常に揺れていると、平衡感覚を司る三半規管などに作用して、これも自律神経系に影響し、めまいや頭痛などの不調を招く原因となります。男性より女性のほうが影響を受けやすく、悪化してくると、エレベーターにも乗れず、「出社拒否症」にもつながります。

  オフィスに植物を置くなど、神経を癒す工夫をしたり、体調不良に気付いた時点で、1階に近い職場へ配置転換させてもらうなどの対応が大切です。




■セルフナーバス症候群

  
仕事が生きがいの会社人間が出世を目指して突き進み、順調に出世をするものの、自意識過剰が高じて自分に対する周囲の評価が気になり、自分のうわさを自分で集めたり、興信所に頼んで自分の社内での評価などを調査してもらうなどの状態に陥ったものをいいます。30代後半から40代の中間管理職に多くみられ、仕事や出世以外に趣味や仲の良い友人もいないような人が、かかりやすいといわれたりします。

  周囲の評価が気になるので、正当な自己主張もできず、いつも不満を抱えているため、たとえ同僚より早く出世したとしても、根本的に自分に対する自信がもてません。同僚より出世が遅れれば疑心暗鬼がつのり、不信感が強くなってうつ状態になったり、イライラしたりします。

  他人の目を必要以上に気にしないようにするため、視野を広げて、生活全般を楽しむことができるようにすることが大切です。


 
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■帰宅拒否症

  
会社第一主義の人が仕事に夢中になり、家庭を犠牲にした反発などから、配偶者や家族が仕事に理解を示さなくなったり、自分に無関心になってしまったため、精神的に追い詰められてうつ状態に陥ります。家庭が安らぎの場ではなくなっており、家に帰りたくないというだけにとどまらず、蒸発や自殺を引き起こす可能性もあるといわれます。

  家族とのコミュニケーションがとれず、仕事一筋なのに、出世や給料の面で思うような成果が上げられないビジネスマンがかかりやすいといわれています。さらに、妻が出世や給料の不満を口うるさくいうことなどが原因で、家庭に居場所がなくなるケースが多いようです。


  治療には、患者さん本人の意識改革だけでなく、家族を含めた相談なども行い、家庭のあり方を全員で見つめ直す必要があります。



■テクノ不安症(OA不安症)

  
社会全体でOA化が進むなか、コンピュータなどのハイテク機器についていけず、それまで培ってきた仕事への自信をなくし、やがてパソコンのそばを通るのにも恐怖を感じるようになり、会社にも出られなくなってしまう状態を指します。

  これは、OA機器に対する嫌悪感、恐怖、なじめない、操作ができないなどの不適応感から、心身が拒否反応を起こした状態です。次々と進化していくOA機器についていけない不安が引き金となって、精神的には不安、イライラ、
不眠といったうつ状態に、からだの不調としては頭痛、腹痛、下痢などが起こります。

  機械オンチを自認する30〜50代の、第一線で働く、特に管理職の人がかかりやすいといえます。真面目にパソコンをマスターしなければならないという気持ちも強く、努力もしますが、責任感の強さ、完璧主義が災いして、ストレスをため込んでいきます。

  しかし、もともと苦手なことをマスターするのは簡単なことではありません。いやいややっている気持ちを抑えて練習しても成果が現れず、焦燥感にかられ、ますます辛くなっていきます。それがやがて、パソコン自体への恐怖心や不安感に転換し、接近することも触ることも避けるようになってしまうのです。



■主婦症候群

  
ストレスを原因として、主婦が落ち込む心身の不適応状態の総称です。結婚や妊娠をきっかけに、仕事など自分がやりたかったことをあきらめたことがストレスとなって生じるケースが多いようです。

  ストレスの原因を自覚している場合もそうでない場合も、夫や子どものために、主婦として一生懸命やってきたものの、自分はなんのために生きているのかと、自分自身の価値を見失ってうつ状態に陥ります。

  家事を完璧にこなそうという気持ちが、本人が考える以上に大きなストレスとなって現れる「台所恐怖症」や、潜在的に夫を憎んでいるため、包丁を手にすると夫を刺してしまうのではないかという恐怖を覚える「包丁恐怖症」という言葉が使われたりもします。

  また、アルコール依存症の前兆ともいえる「台所飲酒(キッチン・ドリンク)」も、飲酒によって不安やイライラをまぎらわせている主婦症候群といえます。




■2. からだは健康なのに異常が続く「身体表現性障害」
 


●2-1.原因がはっきりしない、からだの症状が持続する


  原因がはっきりしないからだの症状が持続している状態を、「
身体表現性障害」といいます。「心身症」との違いは、心身症は器官に病的な変化がみられるのに対して、「身体表現性障害」は器質的な変化がみられない点です。


  「
身体表現性障害」 という名称は、 アメリカ精神医学会によって1980年に発表された『精神疾患の診断・統計マニュアル DSM』の第3版に初めて取り上げられた傷病名です。詳しいメカニズムは解明されていませんが、ストレスや不安、葛藤などの心理的要因が関与している可能性も考えられています。

  次に、「
身体表現性障害」の分類とその症状を説明していきます。


           *************************** 


○●「身体化障害」-----女性に多くみられる

   病院でいくら検査をしても異常がないのに、頭部や腹部、胸部などのからだのいくつもの部分に、さまざまな痛みや吐き気などを感じ、月経不順や排泄困難などの症状が続く状態を
「身体化障害」といいます。


  これらの疼痛(うずくような痛み)が、数年にわたって続き、痛みの部位もあれこれ変わるのが
身体化障害の特徴です。以前は「ヒステリー」や「ブリケ症候群」とも呼ばれたこれらの症状は、30歳以前に始まり、女性に多くみられます。何年も症状が続くため、社会生活や職場などでの活動に支障を来たしてしまうことがあります。


  
「身体化障害」の主な特徴》

  
身体化障害には、次の3つの特徴がみられます。

  
1. 頭部、腹部、背中、関節、手足、胸部、直腸、月経時、性交時または排尿時
    のなかで、4つ以上の異なった部位あるいは機能に関連した疼痛がある。

  
2. 吐き気、下痢などの胃腸障害がある。

  
3. 性的無関心や勃起または射精の障害、月経不順などの性的症状があり、
    さらには麻痺、嚥下困難(飲み下しにくくなること)、声が出なくなる、幻覚、
    けいれん、意識消失などの神経障害的な症状がある。
 


  身体化障害の患者さんは、病気の原因が精神的なもの(心因性)であるとは思っていないので、最初は精神科を訪ねません。また、一般 科の医師では、診断がつかないことも多く、そのため何人もの医師を受診して、不必要な診断や治療を受けることも少なくありません。医師との関係が良好でない場合などは、症状も悪化する傾向にあります。また、何年も疼痛が続くため、鎮痛薬などの薬に依存してしまうこともあります。


  
身体化障害は、うつ病、全般性不安障害パーソナリティー障害恐怖症、薬物依存症など、他の精神疾患を伴いがちです。治療は薬物療法と精神療法が中心となり、患者さんが自分の感情や衝動を適切な方法で表すための手助けをしていきます。すぐに完治するということはないので、じっくりと腰をすえて病気と向き合っていくことが大切です。


○●「転換性障害」-----感覚に障害が現れる

  器質的な原因がないのに立てない、歩けない、声が出ない、手足がしびれる、けいれんを起こすなどの「運動の障害」や、見えない、聞こえないなどの「感覚の障害」による症状が、ストレスなどの心理的な原因で現れるものを「転換性障害」といいます。


  転換性障害は、精神的な問題がからだの症状に「転換」されて出現するとされてきましたが、はっきりしたことはわかっていません。後に神経疾患などからだの病気がみつかることも少なくありません。症状として、けいれんが起きることもありますが、「てんかん(癲癇)」という病気とは別のものです。解決困難な状況などのストレスにさらされたとき、自分の意思とは無関係にからだの各部位の運動や感覚、知覚が麻痺することがあります。


  
転換性障害は、女性にやや多くみられ、青年期及び成人期前半で発病する傾向がありますが、どの年代にもみられます。初めは身体疾患との区別ができないため、精神科以外の診療科を受診する場合も多いようです。


  転換性障害は、うつ病、さらに、自分が自分であると認識できなくなる「
解離性障害」とも緊密な関係があるため、それらと併存しやすいという特徴があります。ですから、併存しやすい疾患にも気をつけながら、発症に関わるストレスや葛藤が生じた生活状況を見つめ直し、信頼できる医師とともに一歩一歩回復へ向かって努力することが大切です。



○●「疼痛性障害」-----強い《痛み》が長期間続く

  頭痛、眼痛など、からだの特定の場所にかなり強い痛みが長期間持続しますが、からだには特に病的な異常はなく、ストレスなどの心理的な要素が痛みに関係していると思われる疾患を
「疼痛性障害」といいます。


  特定の部分の「疼痛」が症状の訴えの主なもので、その痛みはからだのあらゆる部分に生じ、そのため日常生活に支障を来たします。背部、頭部、腹部および胸部などがもっとも多く痛みを訴える部分です。


  
疼痛を解消しようと、医療機関を頻繁に訪れますが、痛む部分にからだの病変のような器質的変化が認められないため、医師から相手にされないこともあり、患者さんの苦痛はいっそう大きくなる場合があります。多量の薬を常用している人も多いのですが、心因性なので鎮痛薬などは効きません。


  急性のもの(6ヶ月未満に解消)と慢性のもの(6ヶ月以上持続)がありますが、長引くと、疼痛のためにあらゆる活動が縮小され、社会的に孤立した結果、うつ状態などの精神状態の変調や
不眠などに陥り、体力が低下して、よりいっそう痛みが増す場合があります。また、うつ病や不安障害などと併存することもあります。



○●「心気症」-----自分で自分に病名をつける

  「疾病恐怖」とも呼ばれる
「心気症」は、からだには異常がないにもかかわらず、「自分はがんではないか?」 「エイズではないか?」 などと、6ヶ月以上の長期間にわたって不安が継続し、日常生活に支障を来たす状態をいいます。「心気症」の患者さんは、自分で自分に病名をつけ、強迫的にこだわります。


  誰でも胃腸の調子が悪くなったり頭痛がしたりすることはありますが、
「心気症」の患者さんは、胃腸の調子が悪いだけで「がんではないか?」、頭痛がするだけで「脳梗塞ではないか?」と強く思いめぐらせます。検査を受けて異常が認められなくても、「医師の見落としではないのか?」と思い込み、病院を次々と変えて検査を受け続けることも少なくありません。


  実は患者さん自身も、自分が完全に病気だと信じきっているわけではないのですが、そのような考えをどうしても払いのけることができません。 うつ病と
「心気症」の症状が重なると、うつ病の回復の予後が悪くなり勝ちですので、注意が必要です。



○●「身体醜形性障害」-----自分の外見に想像上の欠陥を見出す

   自分の外見について、実際にはない想像上の欠陥にとらわれたり、あるいは小さな身体的異常を過剰に心配します。その「とらわれ」によって、著しい苦痛を感じたり、社会的な場面や職場、その他の場面で孤立するなど、生活に支障を来たしている状態を「
身体醜形性障害」といいます。


  この障害は通常青年期に始まり、男女ともに起こります。醜い、大きすぎる、小さすぎるなどのとらわれは、原則的にからだのあらゆる部分に及びますが、もっともとらわれが多いのは顔に関する部分です。また、何ヵ所もの部位にわたったり、目尻が下がっているのが気に入らなかったのが、鼻の形が気になりだすなど、ある部位から別の部位へと移ることもあります。


  そのほか、髪が薄いこと、ニキビ、しわ、乳房、ペニスといったからだの一部分の形や大きさが気になることもあります。

  患者さんは、からだの部位を気にするあまり、公共の場に出ることを避けたり、夜間しか外出しなくなったり、まったく外出しなくなってしまうような場合があります。これらが孤立やひきこもりなどに発展し、入退院を繰り返したりすることもあります。
 




■3. 自分と現実を切り離す「解離性障害」
 


●3-1.「解離」はストレスから身を守るための防衛手段


  ストレスにさらされたときなどに、現実に起こっていることと、自分の意思・記憶を切り離してしまった状態を「解離」といい、これが強くなった場合を
「解離性障害」といいます。


  医学的には、
解離とは、感情、記憶、アイデンティティ(人格の同一性)、さらに、通常は知覚などと連動して機能している《自我意識》が統合を逸している状態のことを指します。


  解離は、多感な思春期には体験する人が多いといわれています。また、小児期には空想の友達をつくる子どもがいますが、これも解離のしくみが関わっているといわれています。


  
解離が日常で起こる軽いレベルを超えてくると、自分の感情がなくなったような気がしたり、生きている現実感が欠落したような感じを覚えます。さらに症状が進むと、自分が体験したことをきちんと覚えていられなくなったり、自分が自分のからだをコントロールしているという感覚がもてなくなって、自分が確かに体験した出来事やそのとき芽生えた感情が、自分のものではないような感覚に陥ります。


  知覚の統合が失われると、絶対忘れないような出来事や体験の記憶が、まったく抜け落ちてしまうということもあります。

 

●3-2.症状によって3つに分類される「解離性障害」


  自分や他人が死にそうになった体験や、心に傷を残すような人生の出来事、事故、災害など、誰もが「耐え難い」と感じるような経験が、
「解離性障害」を発症する誘因になることがあります。


  
「解離性障害」になると、憂うつな気分でふさぎこむ抑うつ症状が現れ、不安感、恥辱感や罪責感を感じて悩むことがあります。また、ED(勃起不全)や性交時に痛みなどを感じる「性機能不全」の症状も現れます。


  さらに重症になると、自分のからだを傷つけることによって心理的な苦しみから逃げようとする《自傷行為》や、苦しみから永遠に逃げたいがために《自殺願望》を抱いてしまったり、実際に自殺の計画を企ててしまうこともあります。


  
「解離性障害」は、その症状により、次の3つに分類されます。

              ************************


  
■1:「解離性健忘」(心因性健忘)---生活史の一部が抜け落ちる

    その人にとって重要な意味を持つ情報、多くは心的外傷体験の記憶にまつわる
   ものが、思い出せなくなります。

    通常の記憶や知識は保たれていますが、人の名前が思い出せないというような
   狭い範囲の健忘ではなく、生活史の一部がそっくり思い出せないという、広範囲に
   わたる健忘のため、一般的な物忘れということでは説明できないものです。

    幼児期の虐待や、戦争、大災害、大事故、レイプなどの外傷体験がきっかけに
   なることもあります。

    
「解離性健忘」の患者さんは、外傷体験そのものは思い出せなくても、憂うつな
   気分が抜けない抑うつ症状や、何を見聞きしても感情がわかない感情喪失感などを
   覚えます。また、外傷体験のあった場所や環境はもちろんのこと、それらを思い出
   させるような音や光、においやイメージによっても、強い不快感や恐怖感を想起する
   場合があります。




  
■2:「解離性同一性障害」(多重人格)---人格が交代で現れる

 
   以前は、《多重人格》と呼ばれていた障害です。

    2つまたはそれ以上の、ほかとはっきり区別できる《人格状態》が一人の人間の中
   に存在しており、それらが交代で表に現れて、繰り返しその人の行動を制御します。

    この障害に陥ると、通常のもの忘れでは説明できないような、重要な個人情報が
   思い出せなくなってしまうといわれていますが、この障害自体がごくまれなものです。

    
「解離性同一性障害」の患者さんは、耐え難い現実から自分を防衛するために、
   過去の記憶を分断して、それらをそれぞれの人格状態(交代人格)に担わせるという
   説もあります。

    障害の原因となる外傷体験は、小児期に受けた非常に恐ろしい暴力行為や性的
   虐待などが多いとされています。




  
■3:「離人症性障害」(離人神経症)---《遊離》の感覚に支配される

    自己から遊離している、または遠ざかっているという感覚を持つ障害で、精神疾患
   の中でも比較的多いものです。自分が映画の中の世界で生きているように感じたり、
   まるで《幽体離脱》でもしたかのように、自分自身や自分の体験を、少し離れたところ
   から見ているような感覚にとらわれることもあります。

    たとえば、頭では悲しむべき出来事に遭遇していることがわかっていても、悲しいと
   いう感情がわいてこなかったり、空腹感や尿意などの身体感覚を失ってしまうなど、
   さまざまな感覚が麻痺したり、自分が存在する実感がなくなったりもします。

    この障害の特徴は、こうした遊離の感覚を持っていながら、同時に現実を正しく認識
   できる正常な感覚も持ち合わせていることです。事故や暴行、重病といった、生命を脅
   かすような危険な目に遭うと、この障害を生じる頻度が高くなりますが、しばしば一過性
   で自然に消失することもあります。





■4. うつ病に近い症状を現す「適応障害」
 


●4-1.ストレスがなくなれば、症状も消える


  「適応障害」
は、ストレス と関連した障害です。受験や離婚など、あるストレス(ひとつまたは複数)を経験した後、3ヶ月以内に抑うつ感や不安感、勉学や仕事が続けられないといった行動障害などの反応が現れ、日常生活に大きく影響します。

  うつ病の症状と似ていますが、うつ病に比べて症状が軽く、原因となるストレス要因が取り除かれて6ヶ月以内には、多くの場合症状がなくなることが特徴です。いわゆる「五月病」と呼ばれている状態も、適応障害とみなされます。

  しかし、ストレス要因が慢性的な場合には、症状はより長い期間続くことがあります。


 
 《原因は誰もが経験しうるもの》

  適応障害の症状は、強い苦しみの感情や気分の落ち込みなどの精神的な不調が中心ですが、そのことが原因で、引きこもってしまったり、学校・会社をさぼるなど、学業、職業などが続けられない状態に陥る場合もあります。また、突然の暴力、暴飲など、社会のルールを無視するような「行動障害」となって現れることもあります。

  
「適応障害」の原因となるのは、就学、独立、転居、結婚、離婚、失業などで、誰もが経験しうる出来事ばかりです。しかし適応障害になった本人にとっては、容易に乗り越えられない、非常に重大な出来事に相当します。

  治療には環境調整をしてストレスを軽くしながら、薬物や精神療法、家族療法などを行います。


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■5.  人格の偏りが招く「パーソナリティー障害」

 


●5-1.「パーソナリティー障害」という場合の《人格》


  《
人格》(パーソナリティー)とは、その人特有のものの受け取り方や考え方、感情の動き、対人関係の持ち方や行動パターンなど、個人としての一貫した行動傾向・心理的特性のことをいいます。《性格》と似た意味ではありますが、より深い意味を持ちます。


  この人格が非常にかたよっていたり、順応性に欠けるため、人間関係をうまく築けずに苦痛を感じたり、社会的な場面などで支障をきたしている状態を
「パーソナリティー障害」といいます。


  
「パーソナリティー障害」は、 青年期や成人期早期に始まることが多く、長期にわたります。また、この障害による生活上の困難が、ある時点で急に始まっている場合には、うつ病などの「気分障害」や「統合失調症」などの「精神病性障害」が疑われる場合がありますので、専門家に診断を仰ぐようにしてください。


 

●5-2.症状によって10に分類される「パーソナリティー障害


  
「パーソナリティー障害」の特徴である「パーソナリティーのかたより」は、生まれつきの素質が影響していたり、成長していく過程において、かたよりのパターンが 固まってしまったものだと考えられます。しかし、そのメカニズムはまだ明らかになっていません。そのため、現在の「パーソナリティー障害」の診断は、症状ごとに分類されています。


  一方で、各人の「
パーソナリティーのかたより」とは、本人にとってはごく当たり前なものですから、患者さん自身がこの「パーソナリティーの問題」を認識するのは非常に困難です。そのため、医師や研究者が行った人格障害の診断には、かなりのばらつきがあることが知られています。

  
「パーソナリティー障害」は特徴別に、計10種類に分けられていますが、大まかに3つのグループ、A群、B群、C群に分類して、その特徴を解説します。


              ************************


  
A群:-----奇妙な行動や考え方をする

    次項で紹介する統合失調症に よく似た傾向を持っています。統合失調症ほど
   はっきりとした症状はありませんが、自閉的で、妄想を抱きやすく、奇妙で風変わりな
   傾向があります。 A群には、次の3つの
「パーソナリティー障害」が含まれます。


   (1)
妄想性パーソナリティー障害

      
他人の言動などを《悪意のあるもの》と解釈するといった、不信と疑い深さを
     持つことが特徴です。



   (2)【
統合失調症質パーソナリティー障害

      
内向的で、引きこもり・孤独を好み、感情を表に出したりするようなことはなく、
     よそよそしい振る舞いをします。 「人間」に興味がなく、そのため社会から孤立
     します。



   (3)【統合失調症型パーソナリティー障害

      
魔術的思考や千里眼を信じるなど、迷信的な思い込みを持ち、奇妙な考え方
     や行動をします。




  
B群:-----感情が不安定で激しい

    感情的な混乱の激しい「パーソナリティー障害」です。芝居がかった言動が多く、
   情緒的で、移り気にみえる場合が少なくありません。また、ストレスにかなり弱い傾向
   があります。
 B群には、次の4つの「パーソナリティー障害」が含まれます。


   (4)反社会性パーソナリティー障害

      
反社会的な言動や、行き過ぎた場合は犯罪行動をとるケースもあります。
     物質的な利益や個人的満足のために他人を利用し、人の心理を読んで操作
     するのがうまく、良心に乏しいので、ほとんど罪悪感を感じることがありません。



   (5)
境界性パーソナリティー障害

      
非常に衝動的で、感情の起伏が激しく、そのため対人関係がいつも不安定
     です。その結果として、衝動的な暴力や迷惑行為、性的誘惑などを繰り返したり、
     自殺を企てたり、自分を傷つけたりする行動を続けます。



   (6)演技性パーソナリティー障害

      
常に周囲の人の関心を集め、自分が中心でいないと気がすみません。
     外見を気にし、芝居がかった態度を取ります。



   
(7)自己愛性パーソナリティー障害

      
自分は特別なものだと感じ、大きな優越感を持っています。そのため、さまざま
     な対人関係の障害が出てきます。自分のことを非難されることにはとても耐える
     ことができず、そのため、心がふさいで不快な気分になる抑うつ状態に陥ること
     もあります。



  
C群:-----不安や恐怖感が強い

    不安やおびえ、引きこもりなどを特徴とする
「パーソナリティー障害」です。
   周りの人の自分に対する評価や視線などが非常にストレスになる傾向があります。
 
   C群には、次の3つの
「パーソナリティー障害」が含まれます。


   (8)回避性パーソナリティー障害

      
他人からの拒絶に対して極端に敏感で、失敗したり失望させられるのを恐れて
     対人関係を築くとか、何か新しいことを始めることなどをためらいます。



   (9)依存性パーソナリティー障害

      
自分の生活全般において世話をされたいという過剰な欲求があり、そのため
     に並外れて従順で、とても受身的です。常に誰かがそばにいることを望み、一人
     になると、とたんに不安に駆られ、心がふさいで抑うつ状態に陥ります。


   
(10)強迫性パーソナリティー障害

      
完全主義で、秩序やルールにとらわれ過ぎるため、柔軟性に欠け、適応性が
     ないのが特徴です。




最近増えた「ちょっとおかしな人」との付き合い方
           パーソナリティー障害

   
(1)妄想性パーソナリティー障害   の診断基準 と 障害の様子
   (4)
反社会性パーソナリティー障害 の診断基準 と 障害の様子
   (5)
境界性パーソナリティー障害   の診断基準 と 障害の様子
    (6)
演技性パーソナリティー障害    の診断基準 と 障害の様子
   (7)
自己愛性パーソナリティー障害 の診断基準 と 障害の様子
    (8)
回避性パーソナリティー障害    の診断基準 と 障害の様子
   (9)
依存性パーソナリティー障害    の診断基準 と 障害の様子
   (10)
強迫性パーソナリティー障害    の診断基準 と 障害の様子
 
 

●5-3.
「パーソナリティー障害」はどう治療するのか?


   「パーソナリティー」は、 非常に個別的なものです。そこで治療は、まず、(1)患者さんが医師に、どんな場合に苦痛を感じるのか、どんなことで困っているのかなどを説明し、(2)医師は患者さんの訴えから出てきた問題を、生物学的、心理的、社会的な視点を持ちながら理解し、解決策を見つけていくことが中心となります。その意味で、患者さんと医師との相性も重要になります。


  「
パーソナリティー」の形成には、遺伝的、生物学的な要因がかなり関与しています。ですから、それを無理に変えようとするよりも、その「パーソナリティー」のバランスが生活をしていく上で障害にならないように、さらに、その特徴をうまく生かせるように導くことが、治療の基本的な方針となります。加えて、症状に合わせた薬物療法も必要になります。

 




■6. 現実と非現実の区別がつかなくなる「統合失調症」
 


●6-1. 改名された「精神分裂病」



  
これまで「精神分裂病」と呼ばれていた精神疾患は、2002年に改名されて、「統合失調症」という病名になりました。脳のはたらきの一部が阻害されて、現実と非現実の区別がつかなくなってしまい、そのため感情のコントロールや正しい意思決定ができなくなったり、良好な対人関係を保つことが困難になるのが「統合失調症」です。


   全人口の0.5〜1.5%前後、100人に1人程度が一生のうちどこかで発病し、15〜30歳の間に発病することが多いとされています。発症のピークは、男性が青年期で18〜25歳、女性が青年期から成人期の26〜45歳くらいだといわれていますが、若年での発症や、晩年になってからの発症もみられます。


  
「統合失調症」の原因はまだ十分には解明されていませんが、脳内の神経伝達のシステムに障害が生じることにより精神症状が起こるのではないかという説が、今のところもっとも有力です。


  また、
「統合失調症」は、神経伝達物質の障害だけで発症するのではなく、もっと複雑な要因が絡み合って発症するのだと考えるグループもいます。たとえば、 体質的に精神的・身体的なストレスに弱い人がストレスの多い状況下におかれると、発症するリスクは高まります。


  さらに遺伝的な要因についても解明が進められていますが、
「統合失調症」自体が遺伝するのではなく、生物学的な体質の弱さ、つまり《かかりやすさ》が遺伝するのではないかと考えられています。



●6-2. どんな症状と経過をたどるのか?



  
「統合失調症」の症状にはさまざまなものがあり、しかも、一人の患者さんにすべての症状が現れるとは限りません。症状は、幻覚や妄想が起こる【陽性症状】と、反対に意欲の低下や感情が乏しく、非行動的になる【陰性症状】および、言動にまとまりがなくなる【解体症状】に分けられています。


  【陽性症状】には、現実にはない声に話しかけられたり、命令されたりする《幻聴》、誰かから被害を受けていると思いがちになり、誰かに監視されている、自分をあやつるものがいる、周りから嫌がらせをされる、仲間はずれにされる、などと思い込んでしまう《妄想》などがあります。


  【解体症状】には、混乱や興奮のため、まとまりのない会話になる、目的に合った動作が出来無くなる、同じ行動や姿勢を取り続ける、周りの音や感じたことをゆがんだ形で認識しておびえる、過敏になって些細なことで怒ったり取り乱したりする、といったことがあげられます。


  【陽性症状】は、
《前駆期》と呼ばれる症状が活発に現れる時期を経た《急性期》に主にみられます。


  【陰性症状】とは、感情の動きが乏しくなったり、周囲に対して無関心になり、やる気が出ない、言葉数が少なくなるなど、意欲や行動力が低下する状態を指します。集中力が無くなり疲れやすくなると、家に閉じこもりがちになります。




   ■■■■統合失調症」 の一般的な経過■■■■


 
1: 《前駆期》
      発病した後の最初の症状は、不安、緊張や抑うつ症状。頭痛、吐き気などの
     さまざまな身体的不調が加わる場合もある。 

      

 
2: 《急性期》:
      不安がさらに加速され、「自分が知らない場所で何かが仕組まれている」など
     といった《妄想気分》や幻覚などが現れる。

      

 
3: 《回復期》:
      回復のための活力が次第にみなぎってくる時期。前期は活力の低下や過剰な
     睡眠が目立つ。社会復帰への焦りが目立つことも特徴。




●6-3.
「統合失調症」の分類-----3つのタイプに分けられる


  
「統合失調症」は、主に「妄想型」「解体型」「緊張型」の3つのタイプに分けられます。


  
「妄想型」は、多くは20代後半〜30代と、比較的高齢で発病します。意欲面や感情面には障害が少ないのですが、妄想や幻聴が顕著で、周囲の出来事を特別な意味に解釈します。例えば、「誰かが自分をあやつっている」など、ものごとの誤った意味付けをしたり、独断的な考えをすることが見受けられます。


  
「解体型」は、以前は「破瓜(はか)型」と呼ばれていたもので、思春期など早期に発病することが特徴です。生活への意欲や関心が低下するため、身辺はだらしなくなり、他人を避けて引きこもるようになります。


  
「緊張型」は、ろう人形のように動かない「カタレプシー(蝋屈症)」、または外界の刺激に対する反応を示さない昏迷を主症状とします。そのほか、無目的な過度の運動、動機の無い拒絶、同じ動作を反復し続ける《常同運動》などがみられます。



●6-4.
服薬をやめると、再発率が上昇


  治療の基準は、薬物療法です。症状が激しい《急性期》の治療には、抗精神病薬がとくに効果を発揮します。《回復期》でも、再発を防ぎ、治療をスムーズに進めていくために、長期にわたる薬物療法をきちんと受けることが必要です。


  
「統合失調症」を初めて発症し、《急性期》を過ぎて【陽性症状】が現れなくなってきたあとでも、予防的に抗精神病薬を服薬しないと、1年以内に70〜80%の高率で再発するといわれています。


  薬物療法に加えて、ストレスに対処して心の安定をはかるための心理的療法や、社会生活の障害に対する生活技能訓練(SST)、家族関係の調整のための家族療法などを、医師の指示のもとに行います。



  最近では、精神科の診療所(クリニック)が増え、外来での治療が容易になってきました。しかし、症状が激しかったり、妄想や幻覚により言動が大きく影響されてしまう場合や、自殺を企てる可能性がある場合などは、外来通院だけでは対応できないので、入院が必要になることもあります。


 




■7.  生活の破綻にもつながる「依存症」
 


●7-1.「依存症」が進むと精神疾患にも……


  アルコールや薬物など、常日頃習慣になっていることを止《や》めたいとは思っているのだが、他方、それがないとやはりひどく不安になり、どうしていいかわからなくなるので、なかなか止められない------こうした状態を
依存症といいます。症状が進んでいくと心身を破壊し、生活の破綻を招きます。


  
依存症の対象となるものごとを始めるきっかけは、多くがストレス発散のためか、好奇心・興味によるものです。始めた直後から、あるいはそれが習慣となって繰り返すうちに快感を感じ、さらにその快感を得ようとして、ついには止められなくなってしまうのです。たばこを例にあげると、起き抜けに1本、朝食後に1本、昼食後に1本、就寝前に……と、だんだん習慣的に吸うことになり、いつか止められなくなってしまうのです。


  さらに、
依存症が重くなってくると、依存の対象となるものごとをしていないときでも、すぐにそれが実行できる、手に入れられる環境に身を置こうとします。手持ちのたばこがなくなった場合、すぐに買える自動販売機の近くにいたがるなど、すみやかに喫煙できる準備ができていないと、不安になります。そして、ついには、たばこを1本吸い終えると、すぐに次の1本に手を伸ばすという状態になってしまうのです。


  こうなると、冷静な判断力が失われ、自分自身のコントロールができない危険な状態になります。ここで例に挙げた【
ニコチン依存症】は、こうした心理的な依存とともに、ニコチンという薬物による身体的依存が加わったものであるとされます。


  自分をコントロールできない状態が高じると、いわゆる
禁断症状が起こりますが、依存しているものごとを行うと、禁断症状が解消するので、ますます止められなくなるという悪循環に陥るのです。

 

●7-2.「依存症」のメカニズム


  
依存症には、ほかの多くの精神疾患と同じように、脳内の神経伝達物質のはたらきが関係していることがわかっています。


  人間の快感には、脳内のドーパミン神経系が関係しているといわれています。ドーパミンは、脳神経細胞のネットワーク内に《快感》を発生させることで、やる気を起こさせるための神経伝達物質です。
依存症の人は、このドーパミンによる快感を求めて、快感を得られた行動パターンを繰り返します


  強い快感が続くと、神経伝達物質などが興奮を抑える方向で作用しはじめます。すると、今までと同じ量のドーパミンでは快感が弱くなります。この状態を、《快感に対して耐性ができた状態》といいますが、耐性ができると、当然従来と同様の行為では物足りなくなります。


  このようにして、
依存症の人は、最初に感じた快感と同じ快感を常に感じていられるように、行為をさらにエスカレートさせていくのです。


●7-3.
「依存症」にはどんな種類があるのか?


  依存症の対象となるものごとは、人によってさまざまです。対象別に依存症を分類すると、おおよそ次のようになります。


   ■■■■
「依存症」は対象別に3つに分けられる■■■■

  
1. 物に対する依存

     ・
アルコール依存症 …… 酒
     ・
薬物依存症 ……………麻薬や市販薬
     ・
ニコチン依存症 ……… たばこ
     ・
OA依存症 …………… パソコン、携帯電話
     ・
甘味依存症 …………… 甘い食べ物(ケーキ、お菓子、デザートなど)


  
2. 行為に対する依存

     ・
ギャンブル・パチンコ依存症…… パチンコなどの賭け事
     ・
買い物依存症  ………………… 浪費
     ・
セックス依存症  …………………性行為


  
3. 人間関係に対する依存

     ・
親依存 ……………… 親離れできない
     ・
子ども依存…………… 子離れできない
     ・
共依存 ……………… 親子密着・夫婦密着
     ・
夫依存 ……………… 夫離れできない
     ・
妻依存 ……………… 妻離れできない

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   ///////////用語解説/////////////


■共依存:
  
 夫婦や親子、友人などの近しい人間関係において、相手をコントロールしようとしたり、相手から頼られることで満足感を得たりする。他人(相手)が自己の存在証明としてあるような人間関係をいう。例えば、酒を飲んで暴力をふるう夫と、それを許して暴力に耐え続ける妻といった関係などである。

////////////////////


  これらのなかで、医学的に精神疾患とみなされているのは、アルコール依存症薬物依存症」「ニコチン依存症」などの物質使用に関するものです。 しかし、その他の依存症も、社会生活を送る上で、さまざまな不都合を感じたりトラブルを起こしたりします。この中で、うつ病との関連も多いとされるアルコール依存症を依存症の代表として、掘り下げて説明してみます。



 
■お酒なしでは生きていけない---- 「アルコール依存症

  飲酒を繰り返すうちに、お酒に対して止むにやまれぬ欲求が生じ、常にお酒を摂取しないと生活できなくなるのが、アルコール依存症です。


  アルコールがもたらすそのほかの弊害としては、
アルコール 中毒がありますが、これはアルコール物質を体内に取り込むことによって起こる生理的な症状です。例えば急性アルコール中毒は、アルコールを過度に摂取したことによって、昏睡状態になり、摂取量によっては呼吸麻痺から死に至ることもあります。


   ■■■■
アルコールの血中濃度とその症状■■■■

        (1期 → 5期 と症状がだんだん 重くなります。)

         
血中濃度(%)        症   状

  1期 … 0.05〜0.10  ほろ酔い、自分に対しての制御を解く、不安・緊張の
                    減少、陽気、顔面紅潮、反応時間遅延 

  2期 … 0.10〜0.15  多弁、感覚の軽度鈍化、手指の震え、
                    大胆になる、感情不安定 

  3期 … 0.15〜0.25  衝動性、眠気、平衡感覚麻痺(ちどり足など)、感覚鈍化、
                    ものが二重に見える、言語不明瞭、理解・判断力障害

  4期 … 0.25〜0.35  運動機能麻痺(歩行不能など)、顔面蒼白、悪心、嘔吐、
                    昏睡 

  5期 … 0.35〜0.50  昏睡、感覚麻痺、呼吸困難、死亡 

/////////////////////



  
アルコール依存症の場合、アルコール がなくては生活できないという依存状態そのものが問題で、患者さんは失職や家庭不和など、そこから派生するさまざまな障害を抱えている場合が多くみられます。


  また、精神的にとりこになっているだけでなく、からだもアルコールなしでは平静を保てない「
身体依存」が生じることも問題です。身体依存に陥ると、アルコールが体内から抜けた場合、震えけいれん発作せん妄(幻覚を伴う意識障害)などの解離症状が現れることもあります。


 
■「アルコール依存症」の5つのタイプ

  アルコール依存症には、以下のような典型的な5つのタイプがあります。


  1.問題飲酒型 (酒乱型)
     飲酒時に人格が豹変し、著しい興奮状態に達したり、そのときのことをまったく
    覚えていない状態に日常的に陥るタイプを「
問題飲酒型」といいます。
     
酩酊時には、犯罪行為や自殺願望が出やすく、注意が必要です。


  2.身体障害型
     肝機能障害など、アルコールによって引き起こされる病気を患っているにもかか
    わらず、飲酒を止められないタイプです。

     
内科など、一般診療科の治療を受けながら節酒しようとしますが、それができず
    に症状が進みます。


  3.怠業型
     飲酒時には大きな問題はありませんが、学校や会社に遅刻したり、欠席・欠勤を
    繰り返します。 主婦が隠れてお酒を飲む「キッチンドリンク」も含まれます。


  4.離脱症状型
     お酒を飲んだ後、禁酒して7〜8時間を経過すると、発汗、手足の震え、イライラ
    感、不安感、不眠などが出現し、2日後ぐらいからは筋肉の部分けいれん、全身
    けいれんが現れます。
     その後、幻を見る「幻視(げんし)」や、そこにないものの感触を感じる「幻聴(げん
    ちょう)」小さな虫がいっぱい見えてしまう「小動物視」などの症状が現れます。
     これらは、「振戦(しんせん)せん妄」という状態で、約1週間で消えます。衰弱が
    著しい人や高齢者は、生命の危険を伴う場合もあります。



  5.精神障害型
     幻聴と被害妄想が長く続く場合や、配偶者の浮気を疑い、根拠無く確信する
    「アルコール嫉妬妄想」などがあります。

     また、もの忘れがひどく、空白を埋めるために、つじつま合わせの話をする

    
ウェルニッケ・コルサコフ症候群」になる場合があります。

     また、長年の飲酒によって、脳の萎縮が進み、人格が変化する場合もあります。

     さらに、不安障害やうつ病、統合失調症などの精神疾患はアルコールによって
    悪化していくことがあります。



   ///////////用語解説/////////////

ウェルニッケ・コルサコフ症候群
  
 ビタミンB1の不足によって、脳に起こる症状や障害。比較的軽度の場合は、目が激しく揺れ動く眼振が起こる程度だが、放置すると記憶障害が起きたり、昏睡から死に至ることもある。

////////////////////
 

○●
 「
アルコール依存症の対処の仕方

  アルコール依存症の 治療だけに限りませんが、まずは、患者さん自身が自分は「依存症」であると自覚することが重要です。しかし、アルコール依存症の人 が自覚して、自分から病院を訪ねるケースは少ないようです。その場合は、まず家族や職場などの周囲の人が説得して受診させたり、アルコール依存症患者の対応方法を病院などで習い、本人が「依存症」から抜け出せるように対処することが大事です。


  
アルコール依存症の 治療は、まず断酒をし、さらに内科的な治療と精神科的な治療の両方を受ける必要があります。最近ではアルコール依存症専門病院やクリニックも多く存在し、入院治療だけでなく外来治療も増えてきています。まず外来から始めてみて、効果が上がらないようであれば、入院で回復を目指すのがよいでしょう。病院では、社会復帰のためのプログラムを組み、からだの治療と精神療法を行っていきます。その後、病院などから自助グループを紹介してもらい、そこに参加することで、断酒や自分の問題に立ち向かう努力を続けるためのサポート (集団療法)を受けます。もちろんこの間にも、家族や職場などの周囲のサポートが大変重要になります。

 

 パーソナリティー障害 ■9. 依存性パーソナリティー障害

  
人生を破滅に追い込む「依存症」「うつ病」
 




■8. 記憶や思考が低下する「老人性痴呆」
 


●8-1.「もの忘れ」と「痴呆」の違い


  脳は、約1000億個の神経細胞や血管、分泌器官などから成り、記憶や思考などの高度な精神活動や生命活動に必須な体内機能の調節などを担うきわめて重要な臓器です。この脳がなんらかの理由で障害され、記憶や思考などの働きが低下した状態を「
痴呆」といいます。


   人間のからだは加齢に伴って老化します。体力が衰えたり、白髪が増えたり、老眼になる、などのからだの変化は生きとし生けるものの宿命で、年を追うごとに多くなる「もの忘れ」も、脳の老化により誰にでも起こるごく当たり前のことといえます。


  ところが、脳の老化によらない「もの忘れ」もあります。これが「
痴呆」です。痴呆になると、記憶だけでなく、思考力、言語能力、空間認知能力、新しい環境への適応力などが損なわれ、日常生活に多大な支障を来たします。


  単なる「もの忘れ」と「
痴呆」の根本的な違いは、脳の神経細胞の減少という老化現象であるか(=「もの忘れ」)、通常の老化による減少より早く神経細胞が消失してしまう脳の病気であるか(=「痴呆」)、という違いです。また、「もの忘れ」はものごとの一部を忘れるだけであるのに対して、「痴呆」は体験したすべての記憶がないという点です。


  また、
仮性痴呆と同様に、忘れたことの自覚があるのが「もの忘れ」で、忘れたことの自覚がないのが「痴呆」です。


  例えば、数人の知人と食事をしたとします。「もの忘れ」の場合は、「右端に座っていた人の名前が思い出せない」とか、「何を食べたのか忘れた」という体験の一部の記憶が欠落しても、「食事をした」 「4人で何かを食べた」 ということは覚えており、自分が記憶のある部分を《思い出せていない》という自覚があります。


  それに対して「
痴呆」の場合は、「数人で食事をした」という体験自体を忘れてしまい、自分が「何かを忘れてしまっている」という自覚もありません。


 

●8-2.老人性痴呆とは?


  
痴呆の原因やタイプはいろいろありますが、もっとも一般的な疾病は、「血管性痴呆」「アルツハイマー型痴呆」などの老人性痴呆です。これらは脳の器質的変化(病変)によって痴呆をもたらす病気で、高齢者に多く見られますが、必ずしも加齢による老化が原因ではありません。それでは、「血管性痴呆」「アルツハイマー型痴呆」を個別にみていきましょう。



○●「血管性痴呆」----脳血管の障害によって起こる

  脳出血や脳梗塞などの、脳血管障害脳卒中)によって起こる痴呆のことを「血管性痴呆」といいます。


  脳血管障害とは、脳の血管の異状によって起こるすべての疾患をいいます。脳の血管が破れて出血(
脳出血)したり、脳の血管が詰まって、そこから先に血液が行かなくなる(脳梗塞)と、脳内の神経細胞は、必要な酸素や栄養を十分に補給することができなくなります。すると、脳の機能が低下して、体はもちろん記憶や思考などをコントロールすることもできなくなり、痴呆に陥ります。


   ■■■■脳血管障害の分類■■■■

   「脳卒中」とは、脳の血管が障害されることにより、脳が破壊される病気の総称。
   医学的には
脳血管障害といわれ、大きく2つに分類される。

  
1.出血性脳卒中 ……脳の血管が破れ、出血することで起こる。

      ・脳の内部で出血した場合 →→→ 
脳出血

      ・くも膜の下で出血した場合 →→→ くも膜下出血


  2.虚血性脳卒中 ……脳の血管が詰まり、脳細胞へ血液が行かなくなる
                 
ことで起こる。

      ・血管が完全に詰まった場合 →→ 
脳梗塞

      ・血管の詰まりが一時的な場合→→ 一過性脳虚血発作


////////////////////


  症状は、もの忘れ以外には、からだの症状として頭痛、めまい、耳鳴り、しびれなどが現れることがあります。また、
「血管性痴呆」の患者さんは、「アルツハイマー型痴呆」などに比べると、痴呆症状が重篤でない人が多く、俗に「まだら痴呆」という部分的な知能障害が現れることが多いのが特徴です。


  これは、重要な記憶は忘れているのに、計算能力は以前と変わりないといったような、部分的な障害が現れている状態です。


  
「血管性痴呆」は、血圧のコントロールなどの適切な治療やリハビリによって、症状が軽快することもあります。



○●「アルツハイマー型痴呆」----脳の神経細胞が急激に減少する

  「アルツハイマー型痴呆」は、なんらかの理由で脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が萎縮して起こる痴呆です。原因はまだ解明されていません。発症の時期もはっきりしませんが、症状はゆっくりと進行し、徐々に悪化していきます。


  症状は、まず「もの忘れ」が現れます。初期では、古い記憶は比較的覚えているのに、新しく記憶したはずの出来事の方が忘れやすいという特徴があります。病気が進むと、もの忘れのために生活に支障を来たすようにさえなります。


  その後、判断力の低下やものごとを認知する能力が低下し、うろうろと歩き回る《徘徊》を繰り返したり、親しい人の顔を見ても誰だかわからなくなり、話すこともおぼつかなくなってきます。末期には、寝たきりになったり、失禁してしまう状態になります



  
日本では、「血管性痴呆」の方が「アルツハイマー型痴呆」よりも多いといわれてきましたが、最近では、「アルツハイマー型痴呆」の患者さんの方が増加しているようです。


   ■■■■アルツハイマー病のメカニズム発見さる?■■■■

   「
アルツハイマー病」の原因には、遺伝子、有毒たんぱく、代謝の異状、感染因子など、さまざまな説があります。その中の一つに、《ベータ・アミロイドというたんぱく質の働きによって病気が進行する》という説がありますが、そのメカニズムが解明されました。

   「
アルツハイマー病」の患者さんには、脳内に老人斑(はん)というシミのようなものができています。老人斑は、ベータ・アミロイドが脳内に蓄積することによってでき、神経細胞を死滅させることが知られています。ベータ・アミロイドの働きはこれまでほとんどわかっていませんでしたが、神経細胞間の情報伝達を妨げていることが、このほど東京大学大学院薬学系研究科の松木則夫教授らのチームの研究で判明しました。


   「
アルツハイマー病」の発症の仕組みはこれまで、ベータ・アミロイドが神経細胞を死滅させるためと考えられていましたが、最近の研究で、神経細胞が死滅していなくても記憶障害などが出る例が見つかり、原因解明が待たれていました。


  実験はマウスの脳の細胞を培養し、そこに微量の
ベータ・アミロイドを加え、神経細胞同士の情報の伝わり方を調べました。その結果、神経細胞のはたらきを助ける役割の《グリア細胞》と呼ばれる細胞が、神経細胞が情報の伝達に使うグルタミン酸という物質を、過剰に吸収してしまうことがわかったのです。《グリア細胞》は、余ったグルタミン酸を吸収する役割を持ちますが、ベータ・アミロイドがこのはたらきを暴走させてしまうことが判明しました。


  このため、グルタミン酸不足となり、神経細胞が別の細胞に情報を伝える効率が約6割も減少し、これが記憶障害などに結びつくと考えられるそうです。また、こうして働きの悪くなった神経細胞は死滅し、症状をさらに悪化させます。


  この発見は、本格的な治療法が確立していない「
アルツハイマー病」の薬の開発につながると期待されています。

////////////////////

 

●8-3.
「痴呆」に伴う精神症状


  老人性痴呆は、仮性痴呆など、他の精神疾患と間違われることもあります。痴呆と他の疾患とを間違えると、治療法が異なるのに正しい治療が行えないため、症状が悪化したり、時には死に至るなど、大変なことになってしまいます。そうした事態に陥らないためにも、老人性痴呆特有の症状が存在することを知っておく必要があります。


   ■■■■
老人性痴呆」 の症状■■■■


  1. うつ: 
心がふさいで不快な抑うつ状態になったり、意欲が低下するといった、
         うつ病と似た症状が現れることがある。



  2. 不安
自分が痴呆だとは思っていないが、「今までできたことができなくなってい
         る」 「今までより、もの忘れがひどくなってきている」という感覚は、持って
         いる場合もある。そのため、不安や焦燥を感じて精神が不安定になる。
         また、不安を紛らわせる反応として、妄想が現れることもある。



  3. 依存
不安や焦燥のために、依存的になる場合がある。ほんの少しの時間でも
         一人になると落ち着かなくなり、家族のあとに、ついて回るといった行動が
         現れることもある。



  4. 妄想自分がしまい忘れたり、書き忘れたりした財布や通帳を、「誰かが盗んだ」
         というような被害意識を持ってしまう症状で、こういった妄想を「被害妄想」
         という。妄想のなかでも最も多く現れるのがこの「被害妄想」で、妄想上の
         犯人は、身近な家族が対象になることが多い。



  5. 幻覚
「そこに孫が来ている」 「死んだおじいさんがいた」などといった、ありも
         しないことをあったかのように思い込んでしまうことがある。



  6. 
睡眠障害: 体のバランスが崩れてしまい、夜には寝られず、日中にうたた寝を
             することが多くなる。


////////////////////
 

●8-4.
「痴呆」と間違えやすい病気・症状


  「痴呆」は、仮性痴呆せん妄と似た症状が多いので、判別には注意が必要です。また、仮性痴呆せん妄は適切な治療を行えば症状は改善しますが、誤った治療法を行うと悪化しますので、そういう意味でも「痴呆」との区別は大変重要です。


 
 仮性痴呆

  
仮性痴呆「痴呆」の一番の違いは、もの忘れをしているという自覚があるかないかです。仮性痴呆の人は「あれが思い出せない」と自覚しているのに対して、「痴呆」の人は思い出せないこと自体を認識していません。


  また、
仮性痴呆では、悲しさや寂しさ、自責感といった、気分や感情の障害を訴えることがありますが、「痴呆」ではそういった訴えをすることはあまりありません。両者の違いを早期に見極めないと、仮性痴呆の場合は、うつ病の最悪の事態である自殺という結末を迎えてしまうことも考えられます。



 
 せん妄

  
明らかに意識が低下しているにもかかわらず、感情や行動が活発な状態になることをせん妄といいます。急性の脳障害に伴って起こる軽い《意識障害》で、判断力や理解力が低下し、話の内容が理解しにくいものになったり、感情、行動のまとまりもなくなります。しばしば幻覚や妄想が現れて、興奮状態になります。


  せん妄の状態に陥った患者さんは、一日の中で症状の変化が激しく、意識のしっかりしている時期とそうでない時期がありますが、「痴呆」の患者さんは一日中同じような症状を示します。また、「アルツハイマー型痴呆」は、せん妄を伴う場合があります。


 



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