
このページの出典は、リンパ浮腫治療の専門医であられる広田内科クリニック(東京都世田谷区南烏山)の
廣田彰男先生が作成・管理されているHP【むくみのページ】からです。 そのページ作成に多大なお時間・
ご苦労を割かれたであろう労作の膨大かつきわめて有益な文献・資料・画像データ等の中から、一部を抜粋
の上、現在、リンパ浮腫にお悩みの方たちにとって最も必要と思われる部分をご紹介させていただきました。
リンパ浮腫にお悩みの方は勿論のこと、そのケアに腐心なさっているご家族のみなさんや、その知識を必要と
されるすべての方にとって大変に役立つ内容です。ここに謹んで廣田彰男先生に御礼を申し上げる次第です。
目 次
| 1.リンパ浮腫とは? |
| 2.リンパ浮腫の出来かた |
| 3.リンパ浮腫の治療 |
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1.リンパ浮腫とは?


| ▲はじめに: むくみ(浮腫 :ふしゅ)とは、血液中の体液が血管外に濾出するなどして、血管外皮下組織に水分が過剰にたまった状態を言います。 大きく、全身性のむくみと局所性のむくみに分けます。全身性浮腫には心臓性、腎性、肝臓性など、局所性浮腫には静脈性やリンパ性などがあります。 全身性では原疾患の治療が必要ですが、女性特有の特発性浮腫などは一般的な内科的治療の対象とはなりません。局所性浮腫は見た目は元気ですが、むくんでいる脚や腕に一般的な考え方では対応しにくい症状が認められます。 このHPでは、一般内科的には取り上げられない浮腫や局所性浮腫、とくにリンパ浮腫を中心に取り上げます。 リンパ浮腫は乳癌や子宮癌の術後などに見られる事の多い、主に一側だけの腕や足のむくみです。リンパ浮腫は患者さんの間ではかなり知られてきており、社会問題ともなってきているにもかかわらず、治療がほとんど保険適応の対象外であることもあって、現在の医療現場からは馴染みの薄い存在になっています。 乳癌や子宮癌の術後に起きるリンパ浮腫を術前に注意されることはあまりありませんし、術後むくんでからも的確に診断され治療されるということも少ないようです。そしてやっと診断がついても、対応する医療機関が身近に 無く、特別に治療薬の無いこの疾患に必要な、マッサージや弾力スリーブ・ストッキングには保険が効きません。そのため、むくみを訴える多くの患者さんは戸惑っているのが現状のようです。 このホームページは、リンパ浮腫を広く知ってもらうことと同時に、このような状況を少しでも打破したいとの思いからリンパ浮腫治療の専門医であられる広田内科クリニック(東京都世田谷区南烏山)の廣田彰男先生が開設している【むくみのページ】から一部を抜粋させていただいております。 術後リンパ浮腫を発生しやすい、乳癌・子宮癌などの手術に携わる外科系、婦人科系の医師の方々にも是非ご一読頂きたいと思います。 |
Photo1
Photo2![]() Photo1…下肢リンパ浮腫 軽症例 Photo2…上肢リンパ浮腫 症例 子宮癌術後(左脚) 乳癌術後(左腕) リンパ浮腫は一次性(リンパ管、リンパ節ともに発育が悪いなどの理由で起こる生まれつきのもの)、二次性(乳癌、子宮癌、前立腺癌などの手術後に、リンパ節が切除または破壊されたために起こるもの)など、結構多くみられる病気です。↑ Photo1 Photo2 参照 そして、本症の9割以上が二次性の方です。従ってこのHPでは、内容的にも二次性のリンパ浮腫に重点を置いていますのでご了承下さい。 多くの場合、色の変化や傷みはなく、脚または腕が太くなりますが、放っておいても別に命にかかわることもないため医者自身も軽く見がちです。そのため、相談に行っても詳しい説明が聞けず、ついにはまるで非常に珍しい病気にかかってしまった、と思いこんでしまう場合も多いようです。しかし、リンパ浮腫は必ずしも珍しい病気ではなく、また、日頃から注意さえしていれば決して恐ろしい病気ではありません。 リンパ浮腫の治療のためには、なぜ脚または腕が太くなるかを理解することが大切です。 むしろ、正しく理解して注意しさえすれば決してこれ以上太くならない、それどころか徐々に細くなるとさえ言っても言い過ぎではありません。 〈ご注意〉 リンパ浮腫とすでに診断された方は本HPを参考にしていただいて結構ですが、はっきりしない場合は医師の診断を待って、決して無理をなさらぬようにお願い致します。 1) リンパ浮腫の基本的な特徴は、皮膚の色の変化がない(左右差のない)、無痛性のむくみです。 2) 特に腕や脚が赤くなっていたり、熱をもっている場合(蜂窩織炎 -ほうかしきえん-)は、処置法が異なりますので、十分ご注意下さい。 3) 乳癌、子宮癌などの術後のむくみ予防のためにお読みになる方は、日常生活上腕や脚を挙げたり、マッサージなどを心がけていただくことが大切です。むくみのない場合は、弾力スリーブ、ストッキングは一般的に必要ありません。 4) ここでご紹介する弾力スリーブ・ストッキングはあくまで医療用品ですので、安易に「使えば治る」と思われると危険です。リンパ浮腫の治療の項目で述べているように、複合的な治療の一環として捉え、薬を服用するようなつもりで慎重にご使用下さい。 |
リンパ浮腫、特に二次性リンパ浮腫は、乳癌、子宮癌、前立腺癌などの手術後に、手術によりリンパ節が切除、または破壊されたために起こります。 したがって、二次性リンパ浮腫では、そけい部(脚の付け根)または腋の下のリンパ節を切除してあり、この部分のリンパ液の流れが悪いことが根本的な原因となっています。 図1 ![]() まず、図1を見て下さい。通常、脚または腕の血液の流れは図のようになっています。つまり、 (1)動脈からきれいな血液が流れてきて毛細血管に至り、ここで血液成分の一部の水分と蛋白成分(で代表される物質)は毛細血管の外に出て、組織中の細胞に取り込まれます。 (2)組織で使われた水分はそのまま静脈に戻りますが、蛋白成分は静脈に戻ることができず、リンパ管に入りリンパ流となり、各々の経路を得て静脈へ還流します。 このリンパ管内の液をリンパ液といい、蛋白や脂肪を多く含んでいますが、赤血球は含まず、無色〜淡いクリーム色をしています。 例えてみれば、この動きは、給水管(動脈)から送られてきた水分と蛋白が、使われた後、それぞれが静脈とリンパ管という2系統の排水管によって排除されているわけです。そして、リンパ管という排水管が何らかの原因で詰ってしまったのがリンパ浮腫です。 排水管が詰ってしまったため、リンパ管に入れなかった蛋白は血管外の皮下組織(組織間隙 -そしきかんげき- と言います)によどんでしまうことになり、組織間隙中の蛋白濃度は徐々に高くなってきます。 しかし、組織間隙に蛋白が多くなっただけでは、脚や腕はむくんではきません。 なぜ、むくんでくるかというと、蛋白が水分をひきつける性質をもっているからで、これを膠質浸透圧-こうしつしんとうあつ-(膠浸圧) と言います。 図2
図3
![]() 膠質浸透圧(図2)とは「半透膜(1)(水は通すが物質は通さない膜)を隔てて濃い液(2)と薄い液(3)があった時、濃い液の方に水分が引っ張られて同じ濃さになろうとする力」と考えて頂ければよいでしょう。 これは人間の体の中では図3のようになります。 つまり、毛細血管壁という半透膜を隔てて血中の蛋白濃度は高く、皮下組織間隙の蛋白濃度は低く、そのため通常水分は血管内に引きつけられ、とどまるように働いています。 しかし、リンパ浮腫のようにリンパ管の障害がありますと、組織間隙中の蛋白濃度は増加することになり、血管内に水分を引きつける力はその分だけ弱くなってしまいます。 また組織間隙中の増加した蛋白はある一定量の水分を引きつけるため、その分、組織間隙中の水分も増えることになります。 話を戻します。リンパ浮腫では一次性(生まれつきのもの)と二次性(乳癌や子宮癌などの手術後に起こるもの)とがあります。一次性は図1のリンパ管、リンパ節ともに発育が悪いことが多く、二次性ではリンパ節が切除または破壊されてしまうために起こります。 では、リンパ浮腫のようにリンパ管やリンパ節が障害されてしまった場合、組織間隙に溜まった蛋白と水分はそこから全く排除されないのでしょうか? いえいえ、人間の体は巧くできていまして、そのようなことはありません。一部のリンパ管が障害されても、なんとか蛋白を心臓へ戻そうとして、一生懸命、働くようにできています。 図4
図5 ![]() 図4を見て下さい。今、幹線道路の先の方で交通事故が発生したとします。 すると、後続の車はその事故をさけて、(1)のように細々とでも進んだり、(2)、(3)のようにいつもは通らない脇道へはいったりし、そのうち脇道も太く立派になってきます。リンパ管も同じように考えられます。 図5を見て下さい。たとえリンパ節が切除されてもリンパ液は細々とでも流れ続け、副行路(脇道)がどんどん発達することになります。 このようにリンパ浮腫でリンパ管障害があるとしても決してリンパ液は流れないわけではありせん。 むしろ、人間の体は何とかしてリンパ液を流そうとがんばっているわけです。 この副行路は主に皮膚表面近くに多数存在しますので、軽くさするだけでもリンパ液の流れは良くなります。逆に、下着のゴムなどでくびれができるとリンパ流は簡単に阻害されることにもなります。 ●従って、リンパの流れを邪魔しないためには、基本的に以下の注意が必要です。 ●くびれができるような下着は着用しないこと。 ●皮膚を軽くへこませるような衣類も避けた方がよい。 (理想的には、全て圧迫のないダボダボの衣類がよいことになります) 例:コルセットやガードルなど、ゴムのきつい下着は好ましくありません。 ……軽くくびれができるだけでも、その分だけリンパ流派阻害されることになります。 ●なお、リンパ浮腫を治療しないで放置しておくと、象皮病になることもあります。 つまり、組織間隙内の蛋白が増加し、変性して線維網を形成し皮膚にまで及びます。この状態はある程度までは際限なく続き、脚または腕は極端に太くなり変形します。皮膚の表面も固くなり、象の皮膚に似ているので象皮病といわれます。 ↓ Photo3 参照 |
Photo3
→ Photo4
リンパ浮腫について理解すると、治療はどうすれば良いかおわかりと思います。 つまり、副行路を含めたリンパ管をできるだけ活発に働かせてあげると良いわけです。 そうすることによって、むくみ(組織間隙中の蛋白や水分)は減少しますし、また、副行路もますます発達してくるわけです。 まず何よりもむくみを減らし、それを維持することです。 ********************************************* ●リンパ浮腫の基本的な治療法 1)むくんだ脚または腕を挙上する、動かすまたは刺激する(マッサ−ジ) などでむくみ液を減らし細くする。 2)弾力ストッキングまたはスリーブを着用するなどしてその状態を維持する。 |

●<リンパ管(リンパ流)を活発化する具体的な方法とその他の治療法> ※ 「脚」 は、付け根から足先まで全体、 「足」 は、くるぶしから指先まで、 「腕」 は、腋の下から指先まで全体、 「手」 は、手首から指先まで、 を指します。 ◆1)挙上 リンパ管は非常に薄くて弱い膜でできており、筋肉はわずかについていますがほとんどが外部の力を借りてリンパ液(リンパ管内の液)を流します。リンパ管に働く外部の力の最も基本的なものは 、リンパ管内の静水圧較差、簡単に言いますと、水が高い所から低い所へ流れる力です。 つまり図6 a)、b)のように脚なら足の方を、腕なら手を心臓より高い位置に保つと、リンパ液は中枢部(心臓)に向かって流れます。 図6 図
7![]() 実際にはいつも足または手を挙上しているわけにはいきませんので、 まず、夜寝る時には必ず少しでも手や足を高くするように心がけて下さい。 少しずつ傾斜をつけて心臓に向かって流すようにします。 この際、 肘、膝、臀部などが屈曲して心臓より低い部位にあるとそこにむくみが溜まることになりますので注意して下さい。 ■ 実際の方法 : 脚 1) 就寝時ふとんの下に台を置いて、足の方を心臓より高い位置に保つ(10cm弱で十分) 。 ※上げ過ぎると臀部にむくみの液が溜まってしまうので注意する。 また、片脚だけでは不自然な体勢となり、腰が痛くなるので両足を上げた方が良い。 2) 椅子に座っている時は、足が下にならないように向かいの椅子に足を投げ出す。 3) 和室では足を投げ出す。 4) 立ち仕事は避ける。 5) 手足を遠心力で放り投げるようなスポーツはあまり好ましくない。 ■ 実際の方法 : 腕 1) 就寝時、大きな枕などを使って手や肘を心臓より高い位置に保つ。 ※腋より肘、肘より手の方が高くなるようにする。腕は鈍角的に軽く屈曲させ、 下方に落ち込まないようにする。 2) 腫れた方の手で重い荷物はもたない。 3) テニスなど手を放り出すようなスポーツは好ましくない。 挙上でなくても、外から圧力がかかってリンパ管が圧迫されると、リンパ液は圧の弱い方へと移動します。(図 7) 入浴、水泳などで下肢または腕を水中に入れた場合の水圧、または弾力ストッキング、スリ−ブなどによる圧迫が、これにあたります。 (→ ◆4)水中での軽い運動 ・マッサージ/◆5)弾力ストッキングまたはスリーブの着用 参照) ◆2)運動 (軽くリズミカルに動かす) 図8 ![]() 図8のようにリンパ管は弁を持っています。そのため、周囲から力が加わるとリンパ管内のリンパ液は一定方向に流れます。したがって、脚または腕を動かせば動かす程リンパ管が周囲の組織から圧迫されてリンパ液の流れは盛んになります。 時々、誤って「腫れた脚または腕は出来るだけ使わないように、動かさないように」と思いこんでいる方がおられますが、これはまったく逆です。 ほんの僅かな時間も利用して、できるだけ動かすようにして下さい。 特に長い時間立ち続けていなければならない時、手を長い時間下げておかなければならない時などは、じっとしているとむくみが強くなる一方ですから、少しでもリズミカルに動かすよう努力して下さい。 ただし、疲れる程まで動かし続けるとむくみが強くなりますので、疲れない程度に軽くリズミカルに動かすのが適当です。 ■ 実際の方法 : 脚 1) どうしても立っていなければいけない時は、軽く脚を動かしているようにする。 例:ユリッコ(R)など足の金魚運動は良いでしょう。 ■ 実際の方法 : 腕 1) 手を下垂し続ける場合は、常にリズミカルに腕を動かしているように心がける。 2) 手作業の場を心臓より高めに維持するように心がける。 3) 刺繍、針仕事、編物など同じ動きを繰り返す作業は好ましくない。 例:手を上にしてブラブラさせるなどの運動は良いでしょう。 ◆3)マッサージ ●●A.手で行うマッサージ リンパ管の動きを活発にするには、自分自身で動かす他に、いわゆるマッサージも効果があります。 (前項の動かすことは生活の中でできるマッサージとも言えます。) マッサージは足または手の先端から付け根(心臓に近いほう)に向けて行うのがより効果的ですが、順序としては、まずそけい部(脚のつけ根)、または腋の下のマッサ ージが重要です。 なぜなら2.リンパ浮腫の出来かたで説明した通り、特に二次性リンパ浮腫ではそけい部または腋の下のリンパ節を切除してあり、この部分のリンパ液の流れが悪いことが根本的な原因となっていますから、その部分のリンパ液の流れを良くしてあげると当然全体のリンパ液の流れは良くなります。 逆に、その部分の流れが悪いままでリンパ節までのリンパ管の流ればかり活発にしますと、リンパ液はすべてそけい部または腋の下のリンパ節の手前で溜まってしまい、かえって流れが悪くなってしまうことがあります。 従って、まずそけい部または腋の下の部分を中心部(心臓)へ向けてマッサージし、その上で、全体のマッサージを行うことが大切です。さらにリンパマッサージの基本から考えると、リンパ管が最終的に静脈に合流する左鎖骨上窩から始めるとされていますが、ここでは省略します。 二次性リンパ浮腫では、下肢なら下腹部、臀部、腕なら肩、腋の下、胸にもむくみが広がっていることがあり、その部分のむくみの排除も必要となります。特に手術した部分の付近は硬くなり易いので、入念にマッサ−ジをして軟らかくします。 リンパ浮腫のマッサージでは一般的なマッサージとは異なり、軽く擦るように行います。 皮膚表面をずらすような感覚で、ゆっくり優しく行います。 マッサージは一日3回朝、昼、夕、15分〜20分ずつ位が適当です。特に入浴後など暖まり、血管が拡張している時がより効果的です。 ●リンパ誘導マッサージ (リンパドレナージ) 上肢の場合、浮腫のない健側の腋の下と、患側の脚の付け根(そけい部)にリンパ液を誘導します(症状により、誘導部位が脚の付け根だけの場合もあります)。 下肢の場合、浮腫のある同側の腋の下へ誘導していきます。 1) 最初に全身のリンパ液の流れを良くするために、首の付け根と腹部のマッサージをします。 2) 患肢のリンパ節の代わりになる正常なリンパ節をマッサージして、患肢からリンパ液を流れ易くします。 3) 患肢から正常なリンパ節までの道をつくり、流れの悪くなっているリンパ節に流さないように迂回して、患肢を上から少しずつ押し上げながら、指先までマッサージして行きます。 4) 指先までしてきたら、逆に指先から上へ少しずつ押し上げながら、順に戻って、流れの悪くなっているリンパ節を迂回して、正常なリンパ節まで誘導しながら戻ります。 ●下肢のセルフマッサージ (図9-1) 1:肩の後回し 10回 2:鎖骨の上のくぼみに手を当て回す 10回 3:腹部のマッサージ 1. 全体を時計回りに優しくさする 2〜3回 2. 左・右の脇腹に手を当て、おへそに向かって引く 各10回 3. 腹式呼吸 5回 (浮腫のある下肢側) 4:腋の下に手を当て回す 20回 5:おしりの横側から体側を通り、腋の下まで、軽くさする 10回 6:下腹部のマッサージ (腋の下に向かって軽くさする) 7:おしりのマッサージ (腋の下に向かって軽くさする) 8:脚のマッサージ (軽くさする) 各5〜10回 1. 太ももの外側を膝からおしりの横側まで、上に向かって 2. 太ももの前面を内側から外側に向かって 3. 太ももの後面を後側から外側に向かって 4. 膝(前・内側・外側)を上に向かって 5. 膝裏のくぽみを上に向かって 10回 6. すね(前面)を足首から膝まで、上に向かって 7. ふくらはぎ(後面)を踵から膝裏まで、上に向かって 8. 内・外くるぶしの周囲を上に向かって 9. 足首を動かす(まわす) 10. 足の甲を上に向かって、次に足指を上に向かって 9:足指までのマッサージしてきた順を逆に4:まで、戻りながらマッサージする * 皮膚を大きく動かすように * ゆっくり、軽く、さする 図9-1 ![]() ●上肢のセルフマッサージ (図9-2) 1:〜3:は下肢に同じ。 4:浮腫側の脚のつけ根(リンパ節)に手を当て回す 20回 5:浮腫側の腋の下から体側を通り、脚のつけ根まで軽くさする 10回 6:健側の腋の下に手を当て回す 20回 7:浮腫側の肩から前胸部を通り、健側の腋の下まで軽くさする 10回 8:浮腫のある上肢のマッサージ(軽くさする) 各5〜10回 1. 肩の前・後面を上に向かって 2. 上腕の外側を肘から肩まで上に向かって 3. 上腕の前面を内側から、外側の上方に向かって 4. 上腕の後面を内側から、外側の上方に向かって 5. 肘の内面(くぽみ)を上に向かって 10回、 次に肘を下に向かって 6. 前腕(前・後面)を手首から肘まで、上に向かって 7. 手(手背・手掌)、指を上に向かって 9:手指までマッサージしてきた順を逆に4:まで、戻りながらマッサージをする 図9-2 ![]() ●●B.機器によるマッサージ マッサージの機械として波動マッサージ器(ドクターメドマー/ハイパーメドマーなど)が市販されています。 これは図10のように1→5の順に血圧計のマンシェット(血圧測定のとき腕に巻くもの)と同じように圧をかけていくもので、リンパ液を徐々に中枢部(心臓)へと送っていきます。 図10 ![]() しかしこれらの機器を使う場合にも、手で行うマッサージ同様、リンパ液がそけい部または腋の下のリンパ節の手前で止まってしまうという欠点はあるわけで、そけい部または腋の下のマッサージを忘れてはいけません。 これも朝、昼、夕3回、20分〜30分、はじめは弱く徐々に圧を上げていき、痛くない程度でとどめます(40mmHg以下ぐらい)。 なお、炎症(脚または腕が赤く熱を持っている)がある時は行ってはいけません。 ■ 実際の方法 1) そけい部または腋の下を心臓の方向へマッサージする。 2) 次いで大腿、ふくらはぎ、足、または上腕、前腕、手の順に各部位を心臓の方向へマッサージする。(約15分〜30分) 3) 波動マッサージ器(ドクターメドマー/ハイパーメドマーなど)を持っている場合は、1) そけい部または腋の下の心臓の方向へのマッサージと共に使用する。(約30分) ◆4)水中での軽い運動 ・マッサージ 水中では水圧もかかりますので(◆5:弾力ストッキングで述べている弾力ストッキングも同様の効果が期待できます)、その中で脚または腕を動かしてあげるとより効果的です。 さらにリンパ管に刺激を加えるためにマッサージをし(特にそけい部または腋の下周辺)、可能ならば気泡(できれば強い噴流)をあてるとよいでしょう。 マッサージは一般的に入浴後の循環状態が良くなっているときに行うのが効果的なのはよく知られていますがリンパ浮腫でも同様と思われます。 例 : プールでの水中歩行 ◆5)弾力ストッキングまたはスリーブの着用(細くなった周径の維持) このように治療してきても大事なことが忘れられています。それは、細くなった脚または腕を細いままに維持するということです。 経験がおありと思いますが、1日〜2日仕事を休んで寝ていると、結構軟らかくて楽になったと思っていても、ちょっと外出して一日歩き続けたり働き続けたりすると、簡単に脚または腕はパンパンに固くはってしまいます。これは立ち続けている、または腕を下垂しておくことにより重力がかかり、血管内の内圧が上がって、血管外(皮下組織)の蛋白や水分などの体液が静脈やリンパ管などへ再吸収されにくくなってしまうためです。 これを防ぐためには外側から強い圧を加えると良いわけで、弾力ストッキングまたは弾力スリーブを用います(◆4:水中での軽い運動で述べている水圧も同様の効果が期待できます)。また、これは布地の弾性や編み方の関係でマッサ ージの効果も期待できます。比較的圧迫力が強くかつ弾力も強い製品が効果的のようです。徐々に下肢または腕が細くなってきましたら、その都度少しずつ細い製品に取り替えていかなくては効果がありません。 適当な圧の強さは以下の通りで、出来るだけ強い圧(だいたい30〜50mmHgぐらい)がかかるものを用います。 1: 着用していてシビレや痛みがない 2: 動きに支障がない 3: 足先または手先が白くなったり(動脈閉塞)、うっ血(静脈閉塞)したりしない 弾力スリーブ・ストッキングは、着用が大変で結構時間がかかり、装着するまでに汗をかいてしまう程度の強さです。簡単に着用できるものですと圧が弱すぎて効果がありません。 着脱時に補助器具(バトラー(R)、イージスライド(R)など)を使用するとかなり助けになります。なお、弾性スリーブ・ストッキングは長くても半年しか持ちません。 日常生活上では、朝起床時に着用し就寝時に脱ぐようにします。脚のストッキングにはいろいろな種類がありますが、片脚用で腰に固定できるタイプのものが基本となります。腕用のスリ−ブには手の甲まで覆うもの、覆わないものの2種類がありますが、一般的には日常生活の利便性から手首までのものが好まれます。着用が楽になってきたら交換します。弾力スリーブ・ストッキングは長くても半年し か持ちません。傷んだものを使い続けると、脚や腕は再び太くなってきてしまいます。基本的には一生着用が必要です。 脚では大腿上部、下腹部、腕では前腕、上腕部のむくみは、このような弾力スリーブ・ストッキングでは十分な圧がかからず、治療が不十分になりがちです。このような部位には弾力包帯などで別に圧を加えていく必要があります。外陰部もむくみます。この部位も例外ではなく圧を加える必要があります。着脱時の注意としては腕や脚、特にその付け根に食い込みがないことがとても大切です。 このようにリハビリを繰り返し、起立している時または腕を下垂している時には必ず弾力ストッキングまたはスリ−ブを着用することにより、初めは比較的急速に細くなりますが、ある程度までいくと治療効果があまり感じられなくなってきます。これは、初めは組織間隙の水分が急速に引き、減少していく一方で、一旦組織間隙にできてしまった線維や脂肪の沈着はなかなかとれないためと思われます。この場合にも方針をかえる必要はなく、同じようにリハビリを続けると良いのですが、さらに積極的に揉み解すようなマッサージを加えると効果的のようです。繰り返しになりますが、弾力スリーブ・ストッキングはあくまでも他の方法で細くした周径を維持するためのもので、決してこれだけで細くはできません。 ■ 実際の方法 1) 朝起床時に弾力ストッキングまたはスリ−ブを着用し、夜入浴前または就寝前にはずす。(できれば夜間は一段弱めのものを着用すると、より良い) 2) 日常の起立または腕下垂時には必ず着用する。 ※ 脚または腕が赤く熱を持っているときは着用しない。(◆6:蜂窩織炎参照) ◆6)蜂窩織炎が起きた場合 ●A.蜂窩織炎の治療 既にお話ししましたようにリンパ浮腫では、組織間隙内に蛋白と水分が過剰に貯留し循環が悪くなっています。そのため僅かな細菌が侵入しただけで、一気に脚または腕全体に広がり、増殖してしまいます。強い炎症が起きると毛細血管壁のすきまが大きくなり、蛋白と水分が大量に組織間隙内に出て来てしまい、そこで固まって線維網を作ってしまいます。この状態を蜂窩織炎 -ほうかしきえん- といい、リンパ浮腫治療の上で最も避けなければならない状態です。 強い炎症が起きると毛細血管壁のすきまが大きくなり、蛋白と水分が大量に組織間隙に出てきてしまい、むくみは急激に悪化します。 症状は、患肢に蚊に刺されたような赤い斑点が所々に出現する場合が多いようですが、突然患肢全体が赤くなり高熱を発する場合もあります。(Photo5 参照) Photo5 ![]() この場合には挙上以外のリハビリはすべて刺激となり炎症を悪くするのでできません。できるだけ脚または腕の赤い部分を冷やし、患肢を高めに維持して安静を保って下さい。そして、すぐに医師に相談し、抗生物質をもらい比較的大量に服用しなくてはいけません。その際大切なことは、血液検査をしてもらいながら、完全に治るまで薬を飲み続けることです。 良くなったと思って適当に止めますと、組織間隙内のどこかに潜んでいた細菌が何かの機会に再び増えて再発してしまいます。 蜂窩織炎は再発しやすく、時には一生抗生物質を服用しなくてはいけないとさえいわれます。 ただ、蜂窩織炎は重症でない限り、2〜3日で急性期は終わります。抗生剤も十分量必要なのはこの期間だけで、発赤消失後はすぐ減量して下さい。むくみがあると治りにくいので、急性期を過ぎたら弾力包帯などで強引にむくみを減らすこともします。 一旦家事など仕事は一切中止し治療に専念した方が、結局は治療にかかる時間が少なくてすみます。つまり、炎症があると弾力スリーブ・ストッキングは着用できず、また、マッサージなどの積極的な方法もできません。それでなおかつ浮腫液を排除して炎症を治りやすくするには、四六時中患肢を挙げているしかないわけです。 ■ 実際の方法 1) 患肢の挙上(できれば食事、洗面、トイレのみ動く) 2) 患肢の冷却(湿布も有効) 3) 抗生物質の服用(できるだけ早期から服用し、速やかに減量する。) 4) 十分な安静が取れない場合は、状態を見ながらやむなく利尿剤、弾力スリーブ・ストッキングまたは弾性包帯を併用することもある。 ●B.蜂窩織炎の予防 蜂窩織炎になるとリンパ浮腫をとても悪くしてしまうことも多いので、細菌(病原菌)を体内に入れないよう極力注しなければいけません。そのため、虫刺されや土いじりなどにも注意し、手袋、長袖のシャツ、ズボンなどを着用し傷がつかないようにし、特に爪周囲の清潔に心掛けます。水虫も原因となります。薬用石鹸の使用も良いでしょう。体力が低下しても発症しやすくなりますので、疲れないようにすることも大切です。 ■ 実際の方法 1) 虫刺されなど外傷を避けるため、手袋、長袖のシャツ、ズボンなどを着用する。 2) 土いじりなども極力注意する。 3) 爪周囲の清潔に心がける。 4) 水虫があれば治療する。 5) 薬用石鹸を使用する。 6) 過労は避ける。 ◆7)減量 減量もとても大切です。ここまで述べてきたような治療も、もし太っていれば全く効果がでてこない、といっても言 い過ぎではありません。考え方としては脂肪がリンパ管を圧迫してつぶしていると思えば良いでしょう。 ですから、体はそれほど太っていないのに、おなかにだけ脂肪がついていても、下肢のむくみには相当悪い影響があります。 逆に体重が落ちてきますと、◆1)〜◆6)で紹介しているような治療の効果ははっきり現れてくることが多いようです。 肥満はリンパ浮腫にとって全く好ましくなく、太っている限り、脚や腕を細くできないと考えた方が良いでしょう。 ■ 実際の方法 1) 肥満があれば治療する。 2) 脚の場合、いわゆるおなかのゼイ肉もおとすよう努力する。 ◆8)薬物療法 リンパ浮腫に効く薬はほとんど無いのが実情です。唯一、メリロートエキス(商品名エスベリベン(R))は組織間隙内の蛋白分解を促し、リンパ循環促進に有効であることが確かめられていますが、早期の効果は期待できず、長期にわたって服用します。 利尿剤は原則的に用いません。リンパ浮腫では下肢または腕にだけ蛋白と水分が貯まっており、全身の水分が多いわけではないので、全身の水分を尿として強制的に出してしまう利尿剤では、決して治らないのはおわかりと思います。かえって身体のバランスを崩し(特に電解質のカリウムの消失や脱水)、また習慣性になり利尿剤を飲まないと尿が出にくくなることも多いようです。 しかし一方で、利尿剤で体内の水分を引きますと患肢が細くなるのも事実で、電解質のバランスが崩れないよう、また癖にならないように注意しながら少量を使うことも あります。この目的で漢方薬を用いることもあります。 蜂窩織炎を起こした時は抗生物質を使います。(◆6:蜂窩織炎が起きた場合参照)この場合は適宜利尿剤も効果的です。 皮膚が硬くなった場合は尿素製剤(ケラチナミン軟膏(R))が有効です。 ■ 実際の方法 1) メリロートエキスを長期にわたり服用する。 2) 蜂窩織炎を合併した場合は抗生物質を服用する。 3) 皮膚の角化には尿素製剤(ケラチナミン軟膏(R))が有効である。 4) 利尿剤は原則として用いない。 ◆9)リンパ浮腫の外科治療 不幸にも悪化を防止できず極度に醜い外形となって(象皮病)、日常生活上不都合な運動障害、知覚障害、疼痛、自覚症状等があり、保存的療法が無効の場合に、外科的手術が考慮されます。 大きく分けて 1:余分な組織を切取ってしまう方法(リンパ浮腫組織切除術) 2:リンパ管を外科的に作ってあげる方法(リンパ誘導法) がありますが、いずれも完璧なものではなく、決して安易に行うべきものではありません。 どうしても必要な場合にのみ考慮されるべきで、専門医と十分に相談して下さい。 ◆10)複合的理学療法 Combined physical decongestive therapy 上で述べてきたような内科的な治療法は各国では複合的理学療法 Combined physical decongestive therapyとして 知られています。 このポイントは、 (1)用手的リンパドレナージュ(MLD) (2)MLD後の圧迫(弾性包帯、弾性スリーブ・ストッキングによる患肢周径の維持) (3)圧迫した上での患肢の運動(弾性スリーブ・ストッキングによるリンパ管へのマッサージ効果) (4)患肢の清潔(蜂窩織炎の予防)の4つとされています。 ◆11)具体的な1日の治療スケジュール 一日の具体的なスケジュールは以下の通りです。 ●起床時: 弾力ストッキングまたは弾力スリーブを着用 ●朝: 15分〜30分間、下肢のつけ根と下肢全体、または腋の下と、腕全体を心臓の方へさするようにマッサージ。波動マッサージ器(ドクターメドマー/ハイパーメドマー)を使用してもよい。 ●昼: 日常生活時はじっと立っていたり、手を下垂している状態は極力避ける。常に少しでもリズミカルに軽く動かしているようにする。傷をつけないように注意し、清潔を心がける。 ●夜: 入浴前に弾力ストッキングまたは弾力スリーブをはずす。入浴中、マッサージ、軽い運動などを行う。気泡装置による刺激もよい。 ●就寝時: 弾力ストッキングまたは弾力スリーブをはずして、脚または腕を挙上して寝る。または、一段圧の弱い弾力スリーブ・ストッキングを着用して休む。 |
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(1)関節リュウマチ ………… 女性に多い原因不明の自己免疫疾患の一つで、関節内の滑膜が異常増殖して関節を壊すものです。 (2)変形性関節症……………関節軟骨の変性がもとになって起こり、軟骨が消失すると共に骨が増え、その結果変形が起こるものです。 (3)大腿骨頭無腐性壊死……大腿骨頭の一部が壊死を起こす疾患で、微生物が原因ではないので無腐性と呼ばれます。 |
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