宇宙論Turkey Seminar 第5回



       2000.5.6
Turkey Seminar1-05

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みなさん こんばんは。
Dr. Pの『Turkey Seminar』の時間がやってまいりました。

 明日、明後日と ゆっくりPCの前にいる時間が取れそうにもありませんので、明日の分として、お送りします。

 当セミナーを 頭痛の種 と思われている方もきっといらっしゃると思われます。
御迷惑でしたら、管理人さんにそうお伝え下さい。♪「ジャァア〜ン!」というGod Handがあれば、即時、休講にできますから。なければ、続けます。膨張します。夢中なんです。いえ、宇宙なんです。

 森のふくろうさん、ゆみ姫様とは、たったの10分!だったのですか?
宇宙(そら)ァ、惜しかったねぇ。ゴールデンウィークも休み無しで、バタバタと飛び回っていらっしゃったんですね。縄文の呪縛、畏るべし。
 一息ついたら、是非フクロウて下され。お待ちしています。


  *******((((((((((((Poesie@Kichijoji))))))))))********* 

                         《イントロ 了》


☆★☆ それでは、第5回目の授業 開講します。起立っ 礼ぃ 着服(コラ!?)

  *****Turkey Seminar*****#005*****2000.5.6*****Dr. P*****

NGC869-84星団 M13星団 M5星団
ペルセウス座 二重星団        ヘルクレス座 23500光年    へび座 25000光年
7010〜8080光年

【1-05】 BOOK 1 : 現代宇宙論の最前線
 Sheet 5


 インフレーション宇宙論によって、我々の宇宙がなぜ大域的なスケールで見ると一様等方で、空間的にきわめて平坦な宇宙であるのかが理解できました。そこで本質的に重要だったのは、我々が観測しているこの宇宙が、宇宙全体から見ると非常に小さな領域であり、それが大きく膨れ上がってできたものであることでした。

 従って、我々の宇宙はこのもともとの大きな母宇宙のごく小さい一部分から発生したのだと言うこともできるわけです。では、この母宇宙は一体どのようにして生まれたのでしょうか?

 1982年、ヴィレンキン《プロフィール略》は宇宙全体に対する量子論的考察とインフレーション宇宙論とを組み合わせることによって、宇宙は“無”から創成したという非常に大胆かつ魅力的な仮説を提唱しました。それは概略、次のようなものでした。

 まず、空間的に閉じた正曲率の宇宙を考えます。これまでに見てきたように、通常の物質でできている正曲率のフリードマン宇宙は、ビッグバンの特異点から始まってビッグクランチで終わる時間的にも有限に閉じた宇宙です。

 ところが、通常の物質の代わりに一定のポテンシャルエネルギーのみで支配される宇宙を考えると様相ががらりと変わるのです。既に述べたように、一定のポテンシャルエネルギーというのは宇宙定数と同じ働きをします。そして、宇宙定数は宇宙の大きさに比例した斥力を与えます。

 ロケットの例で言うと、重力とは逆に地球に近づけば近づくほど強い斥力が働く状況と同じです。この場合ロケットは宇宙の限りなく遠いところから速度が指数関数的に減速しながら地球に近づいてきて止まり、跳ね返され、再び指数関数的に加速しながら限りなく遠いところへと去っていく運動をすることになります。

 すなわち、無限に大きい宇宙が指数関数的に収縮してきて、ある半径になると収縮が止まり、その後膨張を開始し再び無限に大きな宇宙へと指数関数的に膨張していくというイメージです。ちなみに、この宇宙モデルはド・ジッター(1872〜1934 ※1)によって一般相対論の完成直後の1917年にすでに見つけられていたもので、【ド・ジッター宇宙】と呼ばれています。     

 ※1 ウィレム・デ・シッテル(英語読みの ド・ジッターの方が一般的)

    オランダの天文学者(1872〜1934)。ライデン天文台の長。ド・ジッター
    宇宙モデル以外に、木星の4大衛星の力学や、地球の潮汐摩擦と月
    や太陽の加速との関係においても顕著な業績を残した。
                               

 【ド・ジッター宇宙】の特徴は、宇宙がある有限の最小半径を持っていてその大きさ以下には決してなれないという点にあります。風船宇宙に例えると、風船の中に何か硬い球が入っていて、風船の半径がその球の半径以下には決してなれないというもの。

 宇宙の半径をaとしたとき、aが大きいところから段々小さくなってきて、ある値Rまで来るとa=Rでポテンシャルの壁にぶつかり跳ね返されて、再びaが増加していく、というのがド・ジッター宇宙モデル。
                    (古典的禁止領域)   (運動領域)
         0←−−−−−→R←−−−−−→a


 この古典的には禁止されている運動も、量子論を考慮すると、常にある確率で実現することが知られています。これを量子的トンネル効果といいます。

 量子論では、古典理論と違って、運動している物体の位置と運動量(質量×速度)を同時に確定することができません。これをいわゆる不確定性原理(※2)と呼びます。   

 ※2 不確定性原理

    1923年フランスのルイ・ド・ブロイにより確立された「物質波」、1925年の
    ドイツのウェルナー・ハイゼンベルクの「行列力学」、1926年ドイツのアー
    ウィン(エルヴィン)・シュレーディンガーにより完成された「波動力学」と
    別々のアプローチから、原子の中のあらゆる粒子は波でもあり物質でも
    ある、粒子と波の間を揺れ動くある実態を数学的に記述できるとした、
    これらの成果を、ハイゼンベルクがまとめて完成させた量子力学の原理。

    《シュレーディンガーが1935年、量子力学の測定問題として述べた
    【猫のパラドックス】は、古典物理学、量子力学のコペンハーゲン解釈、
    ジョン・ウィラーの多重宇宙モデルの違いを示すのに使った、些か残酷
    な猫のアナロジー。これは、ゆみ姫様のお好みらしい。》

 そのため、運動物体の位置は確率的にある空間的広がりをもって分布する。この分布を表す関数を「波動関数」といいます。量子トンネル効果は、この波動関数が古典的には運動が禁止されている領域(上図0←−→R)に滲みだして、ある有限の振幅をもつことにより起こります。ところがこの領域では古典的運動が禁止されているのであるから、通常の運動量は存在しない。この場合、実は運動量が“虚数”になっているといいます。これはまた、時間が虚時間になっていることを意味します。

 すなわち、古典的禁止領域での運動は虚時間で起こっていることになるのです。
《ここは、ご理解できなくても、当然です。いずれ、感じが掴める時もあるでしょう。Take it easy !!》

 理論の結論だけ伝えますと、インフレーション宇宙を生み出すポテンシャルエネルギーの値に対応するド・ジッダー宇宙の最小半径は、ほとんどのインフレーション宇宙モデルで10の27乗分の1センチ程度であり、きわめて小さい。そのため、この最小半径以下の宇宙の状態というのも量子論的には充分可能性がある。特に、『宇宙の半径が零』という状態も存在し得る!−−−

 宇宙の半径が零という状態は、時間も空間も、もちろん存在し得ないのであるから“無”の状態である。ヴィレンキンは、宇宙はもともとこの“無”の量子状態にあったと主張したのです。 《彼は、もちろん仏教徒ではありません》

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 その後、このアイデアに触発されて宇宙の量子的初期条件の研究が多くの人びとによって盛んになされるようになりました。そのうち、特に有名になったのが、ハートルとホーキング(※3)による“無境界”境界条件といわれるものです。

 ※3 スティーヴン・ホーキング(1942〜):

    大ベストセラー『ホーキング・宇宙を語る』の著者であり、イギリスの物理
    学者。二十歳のとき「筋萎縮性側索硬化症」という難病にかかり、余命
    いくばくもないことを宣告される。しかし車椅子の生活を余儀なくされた
    にもかかわらず、次々と画期的な論文を発表。ブラックホールの特異点
    定理、蒸発理論をはじめ、一般相対性理論と量子理論を統合するという、
    前人未到の領域に立ち至る。

      

 ハートルとホーキングは、ユークリッド時空における一般の宇宙を考え、その中で境界を持たないもの、たとえばユークリッド的ド・ジッダー宇宙のような構造を持つ宇宙の集合が宇宙の波動関数を与えているとしました。

 そして、この仮定のもとに波動関数を計算すると、それらの虚時間宇宙の中でユークリッド的ド・ジッダー宇宙が最も波動関数に寄与し、その結果、実時間の時空においてインフレーションを起こし、我々の宇宙のような大域的に一様等方でほとんど平坦な宇宙が、大きな確率でできることを示したのでした。《もうちょい です》

 ヴィレンキンの“無”からの宇宙創成論と、ハートル、ホーキングの“無境界”境界条件は一見よく似ており、そのどちらも現在の宇宙の姿をうまく説明するのですが、宇宙の波動関数の振る舞いには大きな違いがあります。

 ヴィレンキンの理論は、“無”の状態が宇宙の初期状態であり、波動関数は宇宙が膨張する解しか含まない。一方、ハートルとホーキングの理論では、“無”の状態が波動関数の定常的な境界条件を与えるため、膨張する宇宙と収縮する宇宙とを同時に含んでいる。そこでもし、後者が正しいとすると、我々の宇宙が波動関数の収縮する宇宙の部分を選ばずに、膨張する宇宙を選んだ理由は何か、という問題が起こります。

 ホーキングは、これに関して、「熱力学的」時間の矢によって膨張宇宙が選ばれた、と主張しています。熱力学的には、どんな状態も全体的には時間とともにその状態にとどまるか、より乱雑な状態に移行することが知られており、これを【エントロピー増大則】といいます。エントロピーとは、乱雑さの度合いを表す量のことです。

 我々は地球という、宇宙の中ではきわめて稀な秩序だった環境のもとにいますが(尤も、最近はそれも次第に崩され始めているようですが)、そのような秩序はエントロピー増大則により、より大きな乱雑さを宇宙空間に吐き出すことによって初めて可能となったといえるのです。

 このことは、宇宙が誕生直後にその時期のエントロピー最大状態にあったとしても、膨張することによって秩序の形成が可能となったことを意味します。逆に収縮する宇宙では、エントロピーが増加できず、従って地球も知的生命も存在し得ないということになるわけです。

 このホーキングの議論には、【人間原理】(知的生命が存在し得た宇宙のみが観測される、すなわち意味を持つとする原理:詳しくはBOOK 2 : 現代宇宙論の萌芽で。)に基づく考察が重要な役割を果たしており、物理学的論理としては異論もあるが、きわめて面白い問題提起となっています。

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 《みんな 大丈夫かなぁ お〜い! ついてきてるかい?》

−−−
That's All for Today ! So Long Everyone !

   (では、本日は、ここまで。)

By Dr. P
   
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